迷い子の月下美人

エウラ

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404 招かれざる客人 2

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「---えー、ゴホンッ。彼は放って置いて結構ですので。続けますよ」

気を取り直してリュウギが話を再開する。
ルドヴィカは未だに肩を震わせているが、幾分かは大人しくなったので放置した。

「それでですね、あの後すぐにアルジェント殿に番いが見つかったと連絡を頂きましたね」
「ええ。番いとなるレインの引っ越しにあたり荷物を取りに行くので、その旨を伝えて竜王国を翔んで出国する許可を取りましたね」

ウラノスがそう言った。
確かに浮島に行くときに『許可を得ている』と言っていた。

「ソレから後、あー・・・その、ノア殿の後に続いてレイン殿もどうやら発情期に入ったと連絡を頂いて・・・アルジェント殿が登城しない間にですね、あの御子息が今度は王子殿下方に粉をかけ始めまして・・・」

リュウギが苦笑してそう言うと、シスカリオンが苦虫をかみつぶしたような顔で続けた。

「アレは頭がおかしいのか、私達が王子だと忘れているのか理解できないのか。私達を見かける度に擦り寄ってくるのだ。というか、探して追いかけている気もする。護衛の近衛騎士や側近に阻まれているのに、いやそれどころか近衛騎士達にも馴れ馴れしく声をかけて媚びを売る始末で・・・」
「余計な時間は取られるし、空気が悪くなるのにアレは気付きもしない。ある意味、大物だよな」

リュカリオンも深い溜息を吐いた。

「その頃から『アルジェントと僕は国同士の仲を良くするためにも結婚するべきだ!』等とよく分からない事を声高に言うようになって・・・」
「・・・・・・すでに勝手に高位貴族を名前で、しかも呼び捨てって・・・・・・ソイツ、マジでアホだろ。貴族としてのマナーがまるでなってないな」
「それは言えてる」

リュウギの言葉に漸く復活したルドヴィカがツッコんだが、今回は皆も思っていたので誰も諫めなかった。

「だが、今回アルジェントがという事で、このアホみたいな状況は一応落ち着くと思う。だからそれは本当に色々な意味でおめでたい事だよ」

クリカラ達はほっと一安心した。

「---で? そんな騒ぎを起こしている獣人国の使者がもってきた要件とはなんです? 何時もならそういう状況なら不敬だと追い返すでしょう? 国力も武力もこちらが圧倒的に大きいのですから。・・・それなのに追い返せないような内容なのですか?」

あの子息の件は納得だったが、本題はそちらではない。

クリカラは、今回の騒動はノアがメインだと言った。
しかもウラノス達に情報が伝わらないようにしていたと。
アルジェントとレインの件はあの子息の暴走による流れ弾だったのだろう。

先のに薄々気付いてはいたが、ソレが当たりなのか、ソレがどのようにノアに関係しているのかがはっきりしないことには対処のしようが無い。

クリカラはやや重くなった空気の中、口を開いた。

「・・・・・・獣人国の王妃がどうやら最近病に倒れたそうでな。治癒魔法や薬師のポーション、処方した薬・・・あらゆる手を尽くしたが、どうもコレと言った回復を見せていないという。・・・そこで王都にある薬師ギルドで各地、各国から情報を集め、登録者を総ざらいした結果・・・・・・ノアに白羽の矢が立てられたそうだ」

それを聞いたアークは、以前、エイダンの街の薬師ギルドでノアのポーション類を渡して薬師マイスターのタグを発行して貰ったことを思い出した。

「・・・・・・アレか。エイダンで薬師ギルドに登録したな、薬師マイスターのタグで。・・・あの時、サンプルで送ったポーション類が記録に残ってたんだろう」

隠そうともせずにチッと舌打ちをするアーク。
ノアも思い出したようだ。

「ああ、アレかぁ。まあ、封を切ってしまえば日保ちしないから、あの時のサンプルはたぶん在庫に無いだろうね。・・・ああ、でもたまに薬師ギルドにも卸してるのが獣人国ソッチに流れてる可能性も・・・。・・・・・・ん? アレ? ・・・まさか、卸してあるヤツでも回復出来てないって事?」

ノアが思い出しながら考えて話していると、に気付いた。

ハッとして顔を上げると、クリカラ達は非常に渋い顔で頷いていた。

「そう。既存の回復系は全て試した。その中にはノアが卸した上級ポーションも含まれる。ある程度の病にも効くというポーションだ。一縷の望みをかけて飲ませたが、症状が緩和されただけで完治には至らなかったそうだ」

シスカリオンも詳しい情報を得ていたようで、ノアの疑問に応えてくれた。
リュカリオンもそれに続く。

「しかも暫くするとまた悪化するという事で、定期的にノアのポーションを飲ませて現状維持している状態なのだそうだ」
「ですが卸したポーションにも限りが有ります。幾ら王家といえども、全てを独占するわけにもいかず・・・。そこでノア殿が竜王国のヴァルハラ大公家の三男と番っていることを知った獣人国の国王から直々に使者を立てられたわけです。『獣人国我が国に招喚したい』と」

リュウギがそう言って締めくくる。

ソレを聞いて、ウラノス達は心底呆れ果てた顔で呟いた。

「「「「アイツら、馬鹿か?」」」」

---と。

普通なら他国の王に対して不敬だと咎められそうな発言だが、クリカラ達も同様に頷いた。

「馬鹿なんだろうよ」
「アイツら、今までノアにしていた仕打ちを覚えているのか?」
「ホント! どの面下げて呼び付けてるのやら!!」

クリカラも、王子達もそう言った。

事実、ノアの一件ではヴァルハラ大公家から獣人国の王家に圧力をかけてアインの街の粛清を促したのだ。
もちろん王家の影達が潜入捜査をしていたことも把握していたし、近いうちに手が入るだろう事も予測していたが、ソレでも溺愛するアルカンシエルの可愛い番いを苦しめた街のヤツらを許すことは到底出来なかった。

寧ろ獣人国の顔を立てて、街一つ破壊しなかっただけ幸運と思って貰わねば。

ノアはお爺さんと共に長きに渡り不当に搾取され、迫害されていたのだ。
それだけの事をしておいて、今更、今度は王妃のために獣人国に来い、だって?!

「---えっと・・・?」

ノアは性根が善人だから、例え過去にわだかまりがあったとしても、こんな話を聞けばきっと手を差し伸べるだろう。

ソレを見越しての情報遮断だったのだと、話を聞いた今ならば分かる。

そしてやっぱり、ノアはこう言うのだろう・・・。

「・・・・・・困ってる人がいるなら、薬師として助けたいと思う。・・・・・・例え、あまり好きではない国の人でも・・・」

迷い、躊躇いながらもそう言ったノアに、アーク達は苦笑する。


「---そんなノアが皆、大好きだよ」









※漸く、本題にイケました!
説明調で読み辛かったでしょう? スミマセン、自分も書きづらかった!






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