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403 招かれざる客人 1
しおりを挟む「---さて、では話をしようか」
竜王陛下のその声で、皆は居住まいを正すと話を聞く体勢になった。
「・・・・・・ただ・・・あー、先ほどレインにも関係あるやもと言ったが、どちらかというと、メインはノアなんじゃ・・・」
「---は?」
「あ”?」
「へ?」
漸く話し出したと思えば、のっけから聞き捨てならない言葉が・・・。
思わずといったウラノスとガラ悪く低いアークの声、ポカンとしたノアの声が私室に漏れた。
「・・・・・・俺が関係あるの? え・・・何も心当たりないんだけど・・・?」
皆から一斉に向けられた視線にビクッとしながらも、身内ばかりだったためさほど驚きも少なく、そう返答するノア。
ソレにアークも頷く。
「ノアに心当たりが無くても、俺がずっと一緒にいるんだから俺が何か気付くはずだが、全くと言って良いほど心当たりは無いな。父上やアル兄は何か知ってるか?」
「・・・・・・あー、まさか・・・アレかな?」
「・・・・・・え、アレ関係ですか? 今更?」
ウラノスとアルジェントが視線を合わせて、何やら思い至った様子でやや困惑している。
レーゲンも二人を見て心当たりがあったようで、渋い顔になった。
しかし当然、ノアとアーク、レインは全く分からない。
こちらは怪訝そうな顔でウラノス達を窺った。
クリカラはそんな皆を見回すと一つ頷き、説明を始めた。
「実はな、少し前から獣人国からとある猫獣人の貴族が滞在していてな。一応、獣人国からの使者という体で来ているので無碍にも出来ずに王宮の貴賓室に留め置いているのよ」
「・・・・・・ソレって、謁見前に絡んできたアレですか?」
ウラノスがもしやと思い聞いてみると、案の定な応えが返ってきた。
「---そうだ。正確にはアレの親が使者なんだがな。どうやら子供に甘いようで、今回には全く関係ないのに、強請られて連れて来たようだ」
「でもって、さっきみたいに王宮内で好き勝手に彷徨いて問題を起こしまくっているって訳かぁ」
「・・・・・・ルドヴィカ。合ってるが、口を挟むな。脱線する」
「---はい、スミマセン!」
思わず口を出したルドヴィカをリュカリオンが窘める。
さすがに茶化す雰囲気ではないので、ルドヴィカは大人しく口を噤んだ。
「獣人国の貴族が使者として滞在しているのは聞いてましたが、そんなことになっていたんですね・・・」
「こちらもワザと情報を遮断しておったのでな。・・・ちょうどアルジェントが番いを得る少し前にやって来て、その時にな、どうやらその子供がたまたま王宮に来ていたアルジェントを見かけたらしい」
「---それで、まさか惚れたとか?」
ウラノスが珍しく情報を得ていなかった事にアーク達は驚いたが、クリカラが情報を渡さないように手を回していたようだ。
そして聞かされた話に全員がピンと来た。
あの獣人の子息がアルジェントに抱かれていたレインを目の敵にしたのはそういうわけだったのだ。
「・・・・・・申し訳ないですが、アレとは全く面識が無いです」
アルジェントがスンッと真顔で応えるとクリカラは然もありなんという顔で頷いた。
「そうであろうな。おそらく偶然、所用で通りすがったお主を彷徨いていたアレが遠目から目にしただけのようだ。その後はお主はサッサと王宮を後にしたようだからの。ただその後、アレが周りの者にお主の素性を尋ねておったそうだから・・・」
「自分なら身分も釣り合うとか思い込んだんですかね? 見た感じ、成人前のお子様のようですし」
「そうでしょうね。親はもちろん、私達も有り得ないと諭しましたが、聞く耳を持たず・・・。そもそも竜人は番い至上主義ですからね。獣人よりもその辺りは徹底して拒否しますよ。政略結婚も無くはないですが、竜人同士ならともかく番いへの認識の違う他国となんて有り得ませんね」
リュウギが渋面でそう言った。
竜人は何時か運命の番いが現れるかもしれないことを分かっていて政略結婚に望む事がある。
しかしソレはどちらか、もしくは両方に番いが現れたときは離縁する事になることを承知での婚姻なので、番いが現れたときは円満に離縁する事が出来る。
だが番いの認識のない、もしくは薄い、価値観の違う種族相手だと揉める原因になるため、基本的にしないのだ。
「それを理解しない、しようともしない愚かな子供の相手を毎日のように・・・!」
ここまで黙っていた第一王子のシスカリオンが嫌悪感を隠しもせずに口を開いた。
それに追従するようにリュカリオンもムスッとした顔で言った。
「アイツ、俺達を王子だって分かってないのか、見かける度に馴れ馴れしく声をかけてきてさぁ!! 猫撫で声で身体に触れようとしてくるんだよ! 鳥肌立つったら無いね!!」
「・・・・・・ふっ・・・猫撫で声・・・・・・猫獣人だけに・・・ブフッ!!」
「・・・・・・ルドヴィカ?」
「---っすみませ・・・ふひっ・・・! ひいっ! も、申し・・・訳・・・っ・・・!!」
ウラノス達の後ろで立って黙って聞いていたルドヴィカだったが、どうやらリュカリオンの言い様がツボに入ったようで、堪えきれずに噴き出した。
それをリュカリオンにツッコまれるがどうにもならなかったようで、お腹を抱えて肩を震わせながら謝っていた。
それを呆れたように見つめるクリカラ達であった・・・。
※ノアが関係するって言ったのに、ソコまで辿り着かなかった・・・。
次話をお待ち下さい。
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