迷い子の月下美人

エウラ

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401 謁見&竜王様の言い訳 1

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「本当にすまなかった! この通り謝るから、頼む! 今日会えるの、楽しみにしてたんじゃよぉ・・・!」

そう言って開かれた扉の前で項垂れる竜王陛下にちょっと溜飲を下げた大公家の面々は、渋々謁見の間に足を踏み入れた。

竜王陛下クリカラのすぐ後ろに、慌てて付いてきたらしい側近のリュウギがいて、こちらも深く頭を下げていた。

「大変申し訳ありませんでした」

更にその後ろに、本日の警護担当の近衛騎士が二名、やはり頭を下げていた。

「「抑えきれず、大変申し訳ありませんでした」」

彼等も相当頑張ったのだろうが、どうやら振り切られたようだ。
両サイドには今回の謁見のために集まったと思われる貴族達が『あちゃあ』というような顔で立ち尽くしていた。

「・・・陛下、国のトップが公の場で頭を下げてはいけません。戻って下さい。そして謁見を終わらせましょうか」
「・・・・・・おう、分かった」

ウラノスの笑顔の圧に押し負ける形でクリカラがすごすごと玉座に戻っていった。

「・・・・・・さすがウラノス様」
「このまま陛下の側にいて欲しい」
「絶対、頼りになるよな」

などと近衛騎士達がぼやきながら後に続く。

「冗談じゃない。ノアちゃん達を愛でる時間が減るじゃないか」
「・・・・・・ですよねぇ」

ウラノスがにっこりしながら誰に言うともなしに呟いた。
ソレを聞いていたルドヴィカが苦笑いする。
パーシヴァル達も苦笑した。

「精霊王殿は如何致します?」
《ふむ。せっかく喚ばれたしの。邪魔でなければこのまま暫く付き合おうかの?》
「御随意に」

こうして静かに後ろに着いてきた精霊王に、謁見の間の貴族達が幾分か動揺したが、最近は魔窟と化した王宮庭園の事もあり、慣れたのかすぐに平常に戻った。


さて、仕切り直し・・・ともいかず、ぐだぐだと始まった謁見だったが、何とか竜王の威厳を復活させたクリカラがウラノスの紹介でレインを見ると、それはもう予想通りの反応を示した。

「---愛いのう。幾つじゃ?」
「18歳です」
「・・・・・・8歳かー。可愛いのう」
「・・・18です」
「「「・・・・・・・・・・・・は?」」」
「ちゃんと成人済みです。そして正式に番ってます。今は蜜月中です邪魔しないで頂きたい」

アルジェントは淡々と応えた。
そして大公家でのやり取りと同じ事を繰り返した。

最後はノンブレスで一気に告げた。

「---・・・・・・おおう・・・。そうか・・・・・・良かった。良かったのだが・・・・・・うむ・・・」

クリカラは唖然としたあと、喜ばしいと笑顔を見せたが、どうも歯切れ悪い感じで、最後は言葉を濁した。

「・・・・・・この後は儂の私室で気兼ねなくお茶を飲もうぞ。ウラノス、皆を連れて移動せよ。精霊王殿もご一緒にな」
「・・・御意」

そそくさと玉座から去って行く後ろ姿を見ながら、ウラノス達は内心で溜息を吐く。

---何か厄介事がありそうだな・・・。
早く帰りたいんだが・・・。

《・・・クリリンは調子悪そうだの?》

精霊王が眉を下げて呟いた。
ウラノスも同じように困り顔だ。

「ええ、ちょっとワケありらしくて・・・。ともかく行きましょうか」
「レイン、お疲れ様。移動したらゆっくりお茶しようね?」
「うん、ありがとう、ノア。アルもお疲れ様」
「これしき、どうって事ない」

結局、アルジェントはレインをずっと抱き上げたままだった。

「ノアも抱っこするか?」
「・・・いや、ここはデキる義弟だとレインに見せたいから、我慢して歩く」

アークの『抱っこ』にちょっとぐらっと来たノアだが、グッと堪えるように言った。
疲れたとかじゃなくて、アークに甘えたかったのだが・・・。

「・・・何かよく分からんが、年上なせいか義弟ってよりオカンだよなぁ」

的を射ているルドヴィカをアークがじろりと睨んだ。

「煩い、ルドヴィカ」
「オカンじゃ無いよ! しょうがないでしょ、年上でオカンっぽくなっても! これでも俺はレインの義弟なの! レインはお義兄ちゃんなの!」
「そうそう。歳は関係ない」
「ハイハイ、スミマセンねー」

ノアがムッとして言い返し、それにウラノスも頷いてルドヴィカはおざなりに謝った。

《ほれ、いい加減移動しようぞ。サッサと終わらせて帰るのだろう?》
「そうでした! ほら、皆、行くよ!」
「「「「「おー!」」」」」
《おー!》


その頃、クリカラはどう説明しようかと頭を悩ませていたのだった。










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