401 / 534
395 仕方ないので報告に行きます 1
しおりを挟むアルジェントとレインが正式な番いになった後、皆でお茶を飲みながらウラノスが言った。
「いい加減、陛下に謁見しないとねえ・・・」
「そういえば、あの陛下が良く突撃して来なかったな?」
「そうだよね。何時もなら『アルジェントの番い』の情報を得た時点で大騒ぎだよね」
「珍しい事もあるモンだな」
アークやノア、シルヴァラが竜王陛下に対して散々な言い様だったが、事実その通りなのでウラノスは溜息を吐くだけに留めた。
「---あー、ソレね。ちょうどその時、魔人国から使者が来ててねえ・・・ちょっとバタバタしててそれどころじゃ無かったみたいで・・・」
「魔人国? 何故?」
「・・・・・・うん、えっとね・・・・・・魔王陛下がね」
「---魔王陛下?! どうかしたのか?!」
ウラノスが言い辛そうに口籠もって言うので、ノア達は不穏な空気になった。
しかしウラノスの口から出た言葉は・・・・・・。
「魔王陛下・・・セラフィム陛下が御懐妊あそばされたそうだよ」
「・・・・・・は?」
「---え? まさか5人目?!」
「マジ?!」
「マジです」
不穏とは真逆のおめでたいニュースだった。
だったんだが・・・・・・。
「え? いつの間に仕込んでたんだ?」
「前に魔人国にいたときはそんな素振り無かったよね?」
「---ああ、アレか!! 第三王子のエクシア殿が竜王国に嫁に来ちゃって寂しくなっちゃったんだな!!」
「魔王陛下、ボロ泣きしてたもんなぁ・・・」
「ソレで宰相殿が張り切って仕込んじゃったのかー」
「きっと連日連夜、抱き潰したんだろうな。あそこは王配の宰相がやり手だから、魔王陛下が潰れてても政策は滞りなく回るだろうし」
「おい、お前ら。レインの前でちょっと下品が過ぎる!」
仕込むだの抱き潰すだの・・・とアルジェントがツッコみ、ハッとして口を噤んだ。
「へへへ、ごめんなさい?」
「悪かったよ、レイン、ごめんな」
ノアとアークが罰が悪そうに謝る。
レインは首を振って笑った。
「えっと、今なら言いたいこと分かるから、大丈夫だよ。ようは、子供を作るのにいっぱい・・・シた・・・って事でしょ? 僕は面識無いから分からないけど、そのお二人が幸せなら良いんじゃない?」
「---っレイン!! なんて素直で可愛い子なんだっ!!」
アルジェントがギュッと抱き締めるとレインは照れくさそうにはにかんだ。
ソレをシルヴァラが呆れた目で見つめる。
「・・・・・・アル兄、大丈夫? どっかネジがトんでる?」
「アル義兄様って、こんな人だったんだねぇ」
「うーん・・・・・・信じらんねえくらいオカシクなってるよな」
「・・・番いの前ではこんなモノだよ。シルヴァラも見つかれば分かるから・・・」
「---想像もつかないな・・・」
ノアもアルジェントの変わり様に若干引いている気がする。
ウラノスの言うことも、アークのことがあるから分かるけども。
「---とまあ、こんな感じでそれどころじゃ無かった上に、ノア達の発情期に加えてレイン達も発情期に入ったから、あちらもさすがに自重したようだよ。でもいい加減、痺れを切らしてるだろうからねえ。突撃される前に行かないと・・・色々と面倒くさいから」
「「「「確かに」」」」
そこら辺を知らないレイン以外の皆が一斉に言う。
陛下でなく、周りが大騒ぎになることは明白である。
「そういうわけで、レインとアルは衣装部屋に移動してこの間作った服から謁見用の正装の試着をしておいで。アンジェリクが手ぐすね引いて待ってるから」
「えっ、いないと思ったらそんなとこに・・・うわあ、レイン、覚悟しておけ。母上に着せ替え人形にされるぞ」
「えっと・・・うん、分かった」
一度、経験したらしいレインは若干引いた顔になった。
・・・ご愁傷様です。
ノアも経験済みなのでうへえっという顔になっていた。
移動した二人を見送ってから、ウラノスはアーク達に声をかけた。
「アーク達も自分達で選んで用意しておいて。私とアルジェント達とアーク達も一緒に行く予定だから。・・・虫除け、排除頼むよ?」
「了解」
「任せて!!」
絶対にレインにイヤな思いはさせぬぞ、と三人はふっふっふっと悪い笑みを溢すのだった。
「---我が身内ながら、怖え・・・」
それを見てシルヴァラは苦笑したのだった。
※お待たせ致しました。ドタバタ始まりますよ。
186
お気に入りに追加
7,355
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる