迷い子の月下美人

エウラ

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390 色々準備があるんです 2(sideアルジェント&レイン)

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サロンで初心者向けの性教育の講義をアーク達が行っている頃、お茶の支度のために呼んだ使用人にアヴィールがコソッと伝言を付け加える。

「アルジェント様の番い様のお部屋をにしつらえておくように」
「ーっ畏まりました」

この一言で全て伝わっただろう。

---正式に番うための準備は万全に整えておきます故、後は若様の頑張り次第ですよ。

アヴィールは密かに微笑んだ。


お茶を交えながら恙無く済んだ講義の後は、誰ともなく空気を読んでサササッと捌けていく。

ただ、ノアとアークはアルジェントにこっそりポーションや潤滑油、食料などを渡していた。
特にアークはミドガルズオルムの酒を渡しつつも「無理はさせるなよ」と相反する事を言っていたが。

---あのお酒は初夜向けでは無いのでは?

酒の効能を身をもって知っているノアは心配しながらもツッコむのは控えた。
人の情事に首をツッコむのは良くないよね・・・と苦笑しながら、サロンを後にして。

「---おそらく、アル兄の薫りフェロモンにあてられてレインも直に発情するだろう」
「・・・・・・ああ、俺が初めてアークに会って発情したみたいに・・・? アレもけっこうキたよね」
「番い同士でのアレはキツいな。あー、懐かしい。俺達、終わったばっかだけど、あの二人にあてられてつられそう。もう一度籠もりてえ」
「・・・・・・や、ちょっと・・・ソレは勘弁かな?」

さすがにアレを連チャンはキツい。
少し休ませて、と切実に思うノアだった。

そんな二人を見送って、照れながら黙って自分達の部屋へ移動するアルジェントとレイン。
部屋の前にはアヴィールが控えていて、中に入る際にそっと囁かれた。

「くれぐれも無体な真似は慎んで下さいませ。番い様のお身体を慮って下さいますよう・・・」
「・・・善処する」

アルジェントの気持ちとしては無理はさせないつもりだが、如何せんレインが小柄過ぎるし、何より初めての発情らしいので暴走しないか確証が無い。

「レイン様、お嫌でしたら殴る蹴るを遠慮なくなさいませ。私共が全力でお助け致します故」
「オイコラ、何言ってる?!」
「? えーと、たぶんアルのする事で嫌な気になることはないと思うから、大丈夫。ありがとう」

アルジェントがムッとして言い返したらレインがそう言ってにこっとしたので、アルジェントは気持ちが爆上がりしてアヴィールは内心で溜息を吐いた。

---ノア様同様、無自覚に煽りますねぇ。
アヴィールはとっても心配です。

そう思いながら部屋に消える二人を見送った。


中はアヴィール達によってすっかり調えられていた。
アルジェントはレインをソファに座らせると跪いてレインの手を額に押し当てた。

「レイン、愛している。俺の番い。レインとちゃんと番いたい。コレから俺と、アーク達が言った行為をしたい。その時にレインのうなじを咬むと番い関係が成立する。そうすればレインは俺とずっと一緒にいられるんだ。・・・・・・良いか?」

何時もの次期公爵としての威厳や矜持もかなぐり捨てて番いに愛を乞うアルジェント。
普段のアルジェントを知っている者からしたら考えられない状態だ。

そんなことは露ほども知らないレインは、優しくて格好良いアルジェントとずっと一緒にいられるんだと、うるうるキラキラの瞳で見つめて・・・。

「もちろん、よろしくお願いします!」
「---っレイン! ありがとう。じゃあ早速一緒に入浴して、それから---」
「ふふっ、慌てなくても僕は何処にも行かないから、一つずつ全部やっていこうね、アル」


---こうして二人はゆっくり、時間をかけて初めて尽くしの初夜を過ごし、発情期に入ったレインのうなじを咬んで無事に番いになったのだった。





※サラッと流しちゃいましたが、需要があれば二人のR18を閑話で書いても良いかな、と思ったり・・・。


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