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375 レインの恩返し 2
しおりを挟む思わずノアが確認する。
「その島って、もしかして移動してたりする?」
「え? うん、気付くと違う場所にいるよ」
「えっと、レインにはその島は何処からでも見えるの?」
「うん、見えるし、何処に移動してもすぐに分かるよ。遠かったら島の方が勝手に近付いてくるし。何時も不思議だなって思ってた」
「---で、他の人や魔物なんかは島には入れない?」
「うん、入ってこない。そもそも島があるとは思ってもいない感じ? 近くに来てもスーッと通り過ぎていくよ?」
そのレインの応えにノア達はほぼ九割方の確信を持つ。
「ねえ、コレってやっぱり・・・」
「俺もそう思う」
「だったらすんごい奇跡なんだけど」
「な!」
ウラノス達も聞いていてハッと気付いたのか、ざわざわしだした。
「えええ・・・・・・まさかまさか?」
「・・・・・・アレ? ここに来てまさかの、魔人国のグラウクス殿が言ってた都市伝説?!」
「・・・・・・いやいや行ってみるまでは分からんぞ?」
「そもそもレイン以外に辿り着けるのか・・・?」
謎が謎を呼ぶが、レインがくぁと欠伸をしたことで一旦お開きとなった。
「お休み、レイン」
「とりあえずまた明日」
「ゆっくりお休みしてね」
「アル、くれぐれも・・・」
「分かってます。大体、折れそうで・・・怖い」
アルジェントが若干顔を青ざめて言い、レインはキョトンとして言った。
「・・・・・・お休みなさい・・・」
いやいやアルジェント、そう言う問題では無くて・・・なんて苦笑しながら、それぞれ部屋に戻っていった。
「・・・ふふ、僕、お休みなさいなんて、初めて言われた」
「・・・これからは、俺が毎日、おはようもお休みも言ってあげるよ。あ、いってらっしゃいは・・・言われたくないなあ。それってレインと離れることになるし・・・」
「---ふふ、僕はね、いってらっしゃいもお帰りなさいも、言いたいなあ」
「そ、そうか。離れるのはイヤだけど、じゃあその時は言って貰おうかな」
「うん」
部屋への帰り道、二人の会話を耳を澄ませた邸中の者が聞いていて、少し哀しい気持ちにもなったが、レインの愛らしさにほっこり癒されたのだった。
翌日、レインはやはり疲れていたようで、起きたのは10時頃だった。
ウラノス達はすでに予定を調整していて、午後からレインの言う浮島に向かうことになった。
今はその準備の最中である。
ノアはレインに聞こえないようにこっそりアークに聞いてみる。
「・・・大祖父様には例の浮島の事、話したの?」
「いいや。もしポロッとでも聞いたら絶対に突撃してくるだろうから内緒だ。急に来て下手にレインを怖がらせてもアレだし」
「・・・ああうん。大祖父様、初見じゃ怖いよね。顔も身体も。威厳たっぷりだし、声も大きいし」
「・・・ノアもそう思ってたんだ?」
「え? ---あ、ははは・・・・・・」
アークにそうツッコまれて、初見の謁見でぴるぴるしたのを思い出したノア。
ソレを笑って誤魔化すのだった。
「僕は何か準備したほうが良い?」
レインは、皆が動き回っているのを見て、自分も何かしたほうが良いかと悩んでいたらしい。
「大丈夫。自分の支度だけして待ってような」
「うん」
「---あ、アル義兄様、レイン、二人に渡すモノが・・・」
アルジェントとレインのところにノアがやって来た。
そしてインベントリから腕輪を二つ取り出すと、小さめの方をレインに、大きい方をアルジェントに渡した。
「・・・コレは?」
「俺とアークがしてるような腕輪で、お互いの居場所が分かるように、あと、通信も出来るようにしてあるんだ。それと魔法攻撃無効化とか物理攻撃無効化でしょ。状態異常の薬も魔法も無効化して、それから結界も自動で発動して」
「---はいはい、ノア、ストップ。とにかくありとあらゆる攻撃から身を守ってくれて、なおかつアル兄とレインがどこにいるかすぐに分かるってことだ」
「そうなんだよ。だから使ってくれると嬉しいな。俺達とも通信できるから、何時でも連絡してね!」
ポカンとした二人にアークが苦笑した。
ノアの怒涛の説明についていけなかったらしい。
「---あ、ありがとう?」
「た、助かる。ありがとう、ノア」
「どういたしまして! じゃあ次はこのマジックバッグで・・・」
「「・・・え、まだあるの?!」」
そうして暫く、ノアの実演販売のような説明が続くのだった。
ノアとしては、可愛い義兄に贈り物をしたくて仕方が無かったが、何をあげれば喜ぶのか分からないので、自分が貰ったら嬉しいだろうと思う魔法付与の魔導具をたくさん錬成したのだった・・・。
結果、何をあげても喜ぶレインに、次は何をプレゼントしようかなーなんてくふくふと笑っていたのだった。
「・・・・・・癒しが二人・・・・・・」
邸中の者がほっこりしていた。
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