迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
372 / 538

366 無人島で感じるお互いの温もり 1

しおりを挟む

夕御飯の片付けをし、すっかり暗くなった空を見上げる。

今夜は月が細い。
星が空中に瞬いていた。

「・・・・・・遮るモノが少ないからかな? 星空の中にいるみたいだ」
「・・・・・・そうだな」

空の上で、周りには自分達しかいない。
静寂の中、暫く夜空に見入っていた。

「---そろそろテントに入るか」
「ん・・・あっそうだ! 中でちょっと試したいこと思い付いた!」
「・・・・・・? 試す?」

アークが中に促すと、何か閃いたのかノアがぱあっと笑ってそう言った。

「うん。早く寝室に行こう! あっ、ヴァン、お休みなさい!」
『おう、お休み。・・・頑張れよ』
「? うん。うん?」
「・・・・・・ふっ」

ヴァンに挨拶をしたらそう言われて、ノアは分かってないながらも返事をした。
それをアークが笑いを堪えて聞いている。

「・・・アーク? 何?」

訝しげなノアに何でもないと笑った。

「それよりほら、何かするんだろ?」
「あっ! そうだった。あのねあのね・・・」

アークに誘導されて早く行こうと引っ張るノアに『チョロすぎ』と苦笑するアークだった。

『本当にこういうことには鈍いの。それがノアのいいところだが』

ヴァンも呆れて、自分のイッヌ小屋を出して欠伸をしながら入っていくのだった。


テントに入ると、ノアはアークに断って寝室に一人で入った。
アークが不思議に思っていると錬成陣が光って消え、その後ノアが扉を開けて手招きをしたので向かうと・・・。

「---え、なんだこれ・・・」

寝室の壁や天井、床まで、一面の星空が広がっていた。

「さっき、夜空を見てて思い付いたんだ。実際の外の景色を投影させてるの。だからこれも今、外の星空だよ」
「---凄いな。でもそれじゃあ、朝になったら眩しくないか?」
「そこは俺も考えて、投影の時間設定をしてこの風景を固定したり時間通りに進めたり出来るようにした。後はね、景色を記憶させておいて好きなときに好きな景色を選べるようにしてあるよ」

そう言って専用の魔導具を見せてくれた。
---ただの水晶玉に見えるが。

「これに触れると頭に色々浮かぶから、頭の中でも口に出しても良いけど、こうしたいって選べばパッと反応するよ」
「・・・・・・うおっ・・・目が・・・」

アークが思わず水晶玉を鑑定すれば、眉間に皺が寄るほどびっしりの魔法陣が組み込まれていた。

「---さすがノア。誰にも真似できねえよ」

細かすぎて目が潰れそうだ。

「ふふっ、ありがとう。これで何時でも想い出の景色が見られるよ。あ、もちろん景色だけで魔物やヒトなんかは投影されるときに自動で削除するようにしてあるから安心して。向こうは気付かないけど、コッチは見られてる気がして落ち着かないでしょ?」
「当然! ベッドで可愛いがってるノアを人目に晒せるわけないだろう! 例え直接見られるわけじゃなくても!」
「ふえっ?!」

急にスイッチが入ったように力説するアークに驚くノア。

---ベッドで?可愛がる・・・?

「---ッ!!」

ソレって、もしかしなくてもアレだよね?!

そこまで考えてなかったノアはボッと赤くなった。
アークがソレに気付き、ノアを優しくベッドに押し倒す。

「ああああ、アーク?!」
「---ああ、コレなら青姦っぽいのに人目を気にしなくて良いな」
「どどどどどういう、意味?!」
「---何時もと違うシチュエーションに、滾るってヤツだ」

---やっぱり---!!

「えええとっ、別にイヤなわけじゃないんだけど、そういうつもりで作ったわけじゃ・・・!!」
「だろうな。でもな、ノア。悪いが今の俺はだ」
「・・・・・・っ」

・・・・・・どうしよう。
これ決定事項だよね?!
ヤるのは良いんだ、アークが好きだし、気持ちいいし・・・。
でもでも心情的にあっあ・・・青姦って・・・!!

「・・・・・・良いよな? ノア」

耳元で孕んじゃいそうな声で囁かれて・・・。

「・・・うん」

それ以外の言葉なんてどうすれば言えるんだ?





こうしては開始された。





※次話、R18です。



しおりを挟む
感想 1,191

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...