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365 Let’s 探索! 2
しおりを挟む昼食の準備が終わる頃、ワッフワッフと足取り軽くヴァンが戻ってきた。
『おう、一通り駆けてきたがコレといった脅威になるモノは見当たらんな!』
褒めて褒めてと言わんばかりの尻尾の振りようにノアは笑った。
「そっか。楽しかった?」
『おう! それで良い匂いがしてきたから急いで戻ってきた! 早う食べるぞ!!』
「・・・相変わらず食いしん坊イッヌだな」
『なんとでも言え! 食えれば構ワン!!』
「ふふっ、ヴァン、可愛いなあ」
食いしん坊のヴァンに呆れ顔のアークに、楽しそうなノア。
のんびりとしたピクニックのように和やかな空気の中、ノアの料理に舌鼓を打ちながら昼食を終えると、ノアは辺りを鑑定しだした。
実は足を踏み入れたときから気になっていたのだ。
目に見える範囲の草原のあちこちに、薬草が群生しているのに気付いていたノアは、薬草の少なそうな場所を選んでテーブルを広げていたのだ。
「---うわ、見事だな・・・」
近くの草むらの鑑定で見えたモノは、ありきたりな薬草の群生が主だったが、手つかずのおかげか通常の倍以上の大きさで量もたくさんあった。
おもむろに一つ摘んで詳しく鑑定すると、薬草の品質が『A』ランク。他のもおおよそ同じで、低くても『C』だった。
地上では薬草畑で手間暇をかけて育てても精々が『B』だった事を考えると、ココは薬師にとっては天国だ。
「アーク、他も見てきて良い?」
「良いよ、ていうか俺も行くから、何でも言ってくれ」
「うん、ありがとう! じゃあじゃあ、あっち行きたい!」
そう言ってワクワクしながら木々が集まった林の方を指しながら歩き出した。
「---ふはっ! ノア、言うより先に足が動いてる。そんなにか!」
「え、だってだってめちゃくちゃ生えてるんだよ?! 珍しい薬草があるかもしれないしそれがワサワサあったらめちゃくちゃ嬉しいじゃん!!」
息継ぎもせずに言い切るノアの、常に無い興奮状態が知れた。
アークは笑いながら、鑑定でさりげなく薬草を避けて歩いてノアの後を着いて行く。
ノアも同じように避けて行ったので、それが正解だろう。
着いた林の辺りにも薬草が群生していた。
やはり『A』ランクが多い。
アークはそこまで薬草に詳しく無いので『へえ、凄いな』くらいの感想しか出てこないが、ノアはずっと興奮していた。
曰く、ココの薬草を使えば確実に高品質で高性能のポーションが作れるらしい。
イヤ貴方、今でも普通に品質『S』のポーション作れるでしょうよ、とツッコみたくなったアーク。
---お前が錬金術や普通の調剤で作ったら確実にもっと高品質になるよ。
---うん?
試しに調剤する?
うんうん、確認は必要だよな。もちろん良いぜ。
ノアはそれを聞いてぱあっと顔を綻ばせて、いそいそと薬草を摘み始めた。
「俺も手伝うぜ。駆け出しの頃にも薬草採取は散々やったからな」
・・・駆け出しって言ってもいきなりCランクからだったけど。
でも何事も経験だとFランクの依頼も受けまくったなあ・・・。
「ありがとう! 助かる」
ノアの役に立ってるから、結果オーライだ。
それから一通り見て回って必要数+予備で少し採取し、最初に昼食を摂った場所に戻ったのは夕方だった。
結果、この平原に生えていた薬草は初級クラスのポーション用に使うモノばかりだったが、平均して品質『A』だったので期待は出来そうだ。
「今日はココにテントを出して一泊しよう。試作は明日だ。良いな?」
「・・・・・・うう・・・早く試したいけど、我慢する」
「ヨシ。じゃあテント出して・・・、夕飯も外で食べるか?」
「せっかくだし、そうしよう。夕日が綺麗だ」
『賛成!!』
「・・・ヴァン、どこにいたの?」
『・・・・・・気持ち良くて、さっきまでココでずっと寝てた』
確かに、身体のあちこちに葉っぱが付いて、銀の毛並みが寝癖?っぽい感じに乱れている。
「・・・・・・動いてないのに食べられるの?」
『我は何時でも食べられるぞ!』
「やっぱり食いしん坊イッヌだな」
『幻獣!!』
「うん。食べ過ぎても太らないところは良いかもね」
『そこは我も感謝している。食べ放題!』
「「前言撤回。やっぱり食いしん坊イッヌ」」
ハハハッと楽しそうな笑い声が響き、テキパキと夕御飯の支度は進んでいくのだった。
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