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359 未踏の浮島 2
しおりを挟む「---ソレで、本当はノアの父親で古竜であるリンデン・・・えーと、リンドヴルム殿に聞くのが早いが現時点では到底無理なので、フェンリルのヴァナルガンド殿・・・ヴァンに聞けと言うことだな?」
グラウクスが頭痛を堪えるように頭に手を添えながらそう言ったので、ノア達は頷いた。
『我に敬称は要らんぞ。長く生きているだけで別に偉くはないからな』
殊勝な態度でそう言うヴァンにギギ達がツッコんだ。
「うん。イッヌだもんね」
「「食いしん坊のイッヌ」」
「意思疎通の出来るイッヌ」
『お前らはもう少し敬え! 色々と手助けしてやってるだろう!』
そう憤るヴァンに、ちょっと考えてから再び声をかける。
「あー、主にノアの精神安定剤?」
「確かに」
「うん。助かってる。ありがとうな、ヴァン」
「ありがとう」
『分かれば良い!』
そう言われて今度はドヤ顔で胸を張るヴァン。
「えー・・・。それで良いのか。長きを生きる幻獣フェンリルの存在意義が、精神安定剤・・・」
何とも言えない渋い顔でそう言うグラウクスに、通信魔導具の向こうのクリカラ達も笑った。
---さて、仕切り直してヴァンから話を聞くと・・・。
ヴァンが物心ついた頃にはやはり噂の浮島は存在していたようだ。
だがフェンリルは天を駆ける事は出来ないので、実際に見たわけではないとのこと。
『我もリンドヴルムからの受け売りだからの。リンドヴルムなら詳しかろうが、我が聞いた内容は大ざっぱでな。問題の浮島は他の浮島と違い、移動しているという話だ』
「へえ、移動しているんだ?」
ヴァンの情報に目が爛々としてきたグラウクス。
竜王国側のクリカラ達も興味津々だ。
『うむ。ただ規則性は無いらしいぞ。後は嘘か誠か、消えたり現れたりするとも言っていたなぁ』
「え?! ソレってもしかして転移魔法的な事?」
『分からん。どういう理屈なのか、そもそも本当の事かも我は知らんのでな。リンドヴルムなら見たことがあるやも知れんが・・・』
さすがのヴァンもそれ以上は知らないらしい。
しかし、かなり有力な情報だった。
「ありがとう、助かったよ」
「それは構わんが、そもそもそんな奇妙な浮島な時点で何かしら訳ありだよな」
『そうさのう。ソコまでして隠したいモノでもあるのかと、逆に勘繰ってしまうわい』
『興味深いですね。こちらでも注視して調べてみましょう、陛下』
『うむ。重大なお宝でも眠っていたりしてな』
『面白そうですね! 魔法騎士団でも訓練と称して探索させよう!』
『・・・・・・ルドヴィカ、ほどほどにね?』
アークの訳あり発言にクリカラが反応し、性格に難アリと言われたルドヴィカがめちゃくちゃ私情を挟んできた。
ウラノスが忠告するが、果たして聞いているのやら・・・。
『では、今回はこんなところで、お開きで良いかの?』
『そろそろ時間ですね』
「あっ! 竜王陛下方、貴重な時間をありがとう存じます」
『よいよい。楽しかったしの。また何かあれば連絡をすると良い。ノアちゃん達も変わりなくて良かった。ではまたな』
そう言って通信は切れた。
暫しの沈黙の後、グラウクスが真面目な声で告げた。
「軽い気持ちで聞いたことが、ノア達のおかげで有意義な時間を過ごせた。感謝する」
そう言って深く頭を下げたグラウクスに、ノア達は笑って言った。
「もう俺達は仲間だろう? コッチに嵌まったいわば同士みたいなモンだ。気にする事は無い」
「そうそう。寧ろ巻き込んじゃってごめんなさい」
『面白いことは好きだぞ!』
「「言えてる!」」
そう言われてグラウクスは唖然としたあと、今までで一番の笑顔を見せた。
「---ありがとう」
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