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357 錚々たる面子 2
しおりを挟むレオンからの再連絡が来たのはあれから二日後。
というわけで、グラウクスに例の通信魔導具で連絡を取り、彼の家に集合した。
今日はヴァンも一緒である。
この間、帰ってからノアがヴァンに『今日の出来事』を大ざっぱに話して聞かせたら、今イチ伝わらず。
グラウクスの家でギギ達がそんな話をしていた。
「ノアはたまに説明下手だよな」
「色々と間をすっ飛ばして話すことあるよね」
「・・・・・・ソレで意味が伝わらず、結構勘違いされたりするな」
それを聞いていてグラウクスは、そういえば『ノアズアーク隊』に入隊したときにノアが育った街の環境を聞いたなと思い出す。
「・・・他人との関わりを絶っていると、会話をする事に慣れなくて言葉を上手く伝えられないということもある。要するに経験不足なだけだろう。後は、そうだな。周りが察して言葉の先を読むからいつまで経っても上達しない、とか?」
ギギルルとアークの言葉にグラウクスが冷静に分析した結果、色々と悪条件が揃っていたようだ。
なるほど、と皆、納得。
---それにしても・・・。
「モノは言い様だな。引き篭もりって言うより関わりを絶つって言う方がなんかこう、前向きな?」
「ずいぶん違って良い意味に聞こえる」
「さすがグラウクス。博識で言葉選びが上手い!」
「---いや、引き篭もりだったんかい!」
単なる人見知りだったんじゃないのか?!
筋金入りだな!!
---そりゃあ、過保護にもなるわな・・・。
『ノアズアーク隊』納得だわ。
グラウクスが一人でうんうんと納得しているとヴァンが着いてきた理由を告げた。
『とにかく、アークに補足されまくって内容は分かったのでな。面白そうだから着いてきたのよ。ソレに我、ノアの精神安定剤だからの』
「---へえ・・・?」
よく分からないが、面白そうだからということは分かった。
「さて、そろそろ通信が入るぞ。今日は携帯型通信魔導具でやり取りする。ノア、何時ものアレ頼むな」
「うん。防音防御の結界魔法使うね、グラウクス」
「あ、ああ。頼んだ」
ノアが無詠唱でパパッと魔法を展開する。
この間、喫茶店で見た魔法だった。
グラウクスが思わず呟く。
「・・・なあ、アレ、この間も思ったが・・・凄くないか? 誰も何も言わないけどさぁ・・・」
ソレに囁き声でギギとルルが応えた。
「ああ、アレね。もう慣れた」
「言ったろ? ノアは規格外だって。あんなのは序の口」
「あの精霊王に200年育てられたんだ。そういうもんだって諦めた方が良い。実際、親父も早々に諦めた」
「は?」
サラッと告げられた言葉に思わず声が大きくなりそうになった。
「ああ・・・グラウクスには言ってなかったか? ノアは221歳だが、うち200年が赤ん坊のまま眠ってて、精霊王に魔力を注がれて生き長らえた期間」
「だから実際、目覚めてからは21年しか経ってないんだよ。精霊王がこの間、自己紹介でノアの養父母って言ったのはそういうコト」
---後で詳しく教えてやるよ、とギギ達にこっそりと言われて、疑問はひとまず飲み込んだ。
言われてみれば最初にあったとき、ノアの事は無事だったとしか聞いていない。
どういう経緯で生まれてどういう育ちだったのか言われなかったし、俺からも聞かなかった。
だからてっきり、あの200年ほど前の事件の時に無事に生まれて今まで普通の生活をしていたモノだと思い込んでいたんだ。
この間ギギ達にザッと聞かされた話も、育った街でハブられてたっぽいとかギギ達と知り合った経緯とか武勇伝ばっかりだったし。
---まあ、どんな過去だろうと今更だ。
どうせもう、どっぷり沼に嵌まっているんだ。
ノアはノアだ。
とても良い子で可愛らしい・・・孫枠だ。
うん。
もう『孫』で良いわ。
納得したところでレオン達からの通信が入ったようだ。
ちなみに、冒険者なんだからとレオンには敬語も無しと言われて了承したので普通に呼んでいる。
『---おはよう。レオンだ。皆、揃っているのかな?』
「おはよう、レオン。全員揃ってるよ。ソッチはどう?」
『おはようー!! ノアちゃん、大祖父様じゃよ!! 元気かの---?!』
『煩い、クリカラ。朝っぱらから暑苦しいわ! コホン、失礼しました。コレの乳兄弟で側近のリュウギと申します』
映像が映し出されるとレオンが話し始め、直後に竜王陛下が画面いっぱいに映し出されて、ソレをバシッと叩く竜王陛下ほどの年配の竜人。
その方が近衛騎士と思われる竜人と一緒にズリズリと竜王陛下を引き摺って離れていくのが見えた。
---良いのか?!
俺よりも扱いが雑いわ!!
アークやノア、ギギ達が平然とする中、ついて行けないグラウクスはポカンとした。
ソコに優しげな声でまた別の竜人が現れた。
『すまないね、アーク、ノアちゃん。ギギ達も悪いね。ソレと初めまして、考古学者のグラウクス殿。アークとノアちゃんが世話になっているね。私は二人の父でウラノスという。よろしく』
「あ、はい。グラウクスです。よろしくお願い致します」
慌てて頭を下げると、また違う声が聞こえた。
『やっほー。面白そうだから俺も混ぜて!! あ、俺は魔法騎士団団長のルドヴィカです。アークの乳兄弟ね。よろしく!』
「は、あ、よろしくお願い致しします・・・?」
「グラウクス、アイツに敬語はいらない。・・・アイツは愉快犯だからな・・・強いけど性格に難アリだから、気遣いはいらない」
『ヒドいなアーク。その通りだけど~』
「・・・・・・」
怒涛の勢いでクセ強い竜人達、しかも超トップクラスの面々に、開いた口が塞がらないグラウクスだった。
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