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335 ギルファームのオーナー・ゾア
しおりを挟むギギ達に親父と呼ばれた厳つい美中年。
のっしのっしと農園からこちらに歩いて来る姿は健康そうだ。
「親父、この前は帰れなくて悪かったな」
「時間なくってさあ・・・」
「いや、ギルドの職員や冒険者達に聞いてたから別に良いんだが・・・そちらの方は・・・」
ギギ達と会話してすぐにノア達を見つめる美中年をギギとルルが紹介してくれた。
「「俺達の親父のゾアだよ。親父、彼等がアルカンシエルとノア、それとヴァンな」」
「---二人の父親のゾアです。二人が御世話になったようで・・・」
恐縮そうに言うゾア。
アーク達のことをギギ達から聞いていたんだろう。
おそらくアークの身分も知っている。
「初めまして、アルカンシエルです。こちらは番いのノアです。こちらこそ助けられてます」
「初めまして、ノアです。ギギとルルは俺の大切な親友です」
『うむ。ヴァンだ。ギギ達を良く世話しておるぞ!』
「俺等が世話してんだろ?」
ギギのツッコみが入る。
「・・・・・・あと、親父。気付いてるだろうが、ノアがあの時の救助依頼のアリテシアさんの息子だ」
「---やはり・・・・・・、二人に聞いてはいたが、よくぞ、無事で・・・・・・っ・・・会えて良かった」
ゾアが涙を堪えながらそう言うから、ノアもつられて泣きそうになった。
「こちらこそ、ありがとうございます」
アークは黙ってノアの背中をポンポンと慰めた。
ギギ達は、涙腺が決壊しそうなゾアに軽口を叩く。
「年取ると涙脆くていかんなー!」
「はいはい、お互い挨拶したから家に上がって貰ってー」
「親父、宿が埋まってて無理だったから、アーク達、ウチに泊めるからな」
「---はあ?! マジで?!」
「マジマジ、ってかせっかく堅っ苦しい挨拶したのに、もう野生に戻ってんじゃん」
「無理して敬語とか要らないし!」
しんみり真面目な空気はあっという間に霧散して、普段と変わらないギギ達に笑うアーク達だった。
ギギ達の母屋はゾアと二人の部屋が使われているだけで、数部屋空いていた。
従業員は隣の建物に住んでいたり通いで来ているそう。
母屋と従業員寮は住み込みの家政夫と通いの家政夫で掃除や料理をして貰ってるそうだ。
「敷地内なら何処にテント出しても大丈夫だ」
「あのテントなら気にはならないだろうけど、心配なら裏庭を使う? ヴァンも出すんでしょ? (イッヌ)小屋」
『そうさの。お邪魔虫にはなりたくないからの』
「・・・・・・空き部屋があるのに、何故外にテントを張る前提で話をしているんだ? 家の方がゆっくり出来るだろう?」
怪訝そうなゾアにギギ達が応える。
「ちょっと庭に出てくれ、親父。ウチらのテントは尋常じゃ無いんだよ」
「論より証拠。見たら分かるよ」
「ちっとも分からん」
ギギ達の言葉にキョトンとするノアと苦笑するアーク。
ヴァンも面白そうだと着いていく。
中庭でギギ達のテントを広げて、ゾアも入れるように入口で登録するとルルが薦めた。
「親父、どーぞ」
「? べつに普通のテントだろ・・・・・・おぉ---?!」
何じゃこりゃあ---っ?!
そんな叫び声が入り口から漏れ出た。
ギギ達は悪戯が成功したような黒い笑みで、アークは苦笑。
ヴァンは大笑いでノアはいつも通りキョトンとした顔だった。
色々と感動の再会だったはずなのに、驚きで全部吹っ飛んだゾアだった。
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