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332 ギギとルルの帰郷
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※お待たせ致しました。漸く本編、再始動です。
たまに脈絡無く閑話もぶっ込むかと思います。
魔人国の騒動から帰ってきておよそひと月。
のんびりと羽を伸ばしたノア達は、そろそろ冒険者稼業に戻るか、と旅立ちの準備を進めていた。
一方その頃、結局ずっと竜王国に留まってヴァンの相手をして迷宮に潜ったり、竜王国の騎士団の鍛錬に混じったりして過ごしていたギギルル兄弟も出立の準備をしていた。
「え、ギギルル、魔人国に帰るの?」
たまたま街での買い出し中にギギ達に会ったノア達は、近くの喫茶店に入ってお茶を飲みながら今後の話をしていた。
「ああ。ほら、前回は依頼で行ってからのあの騒動だったろ?」
「親父に顔を出す暇も無かったからさ、一旦帰って、暫く親孝行でもしてやろうと思って。寒い冬も終わったようだし、移動も楽だろう?」
苦笑交じりでそう言うギギルル兄弟に、騒動の原因だったノアがシュンとした。
「あー、確かに・・・ごめんね、せっかく故郷に帰ったのに」
「あーあー、良いって。俺達が留守にするのなんて今に始まった事じゃ無いから。それにたぶんあの騒ぎは王都中に広まってたから、親父も耳にしたはずだ。親父も元冒険者だしその辺はわきまえてるよ」
気にすんなって笑ってくれたけど・・・。
「じゃあさ、精霊王に頼んで魔人国に送って貰おうか。あっ、アーク、俺達も一緒に行ってギギルルのお父さんに挨拶しない?」
「ああ。ノアのお母さんの事を助けに行った冒険者PTだったんだっけ。そうだな、顔を見せに行くか」
「「えっ、そんな軽々しく精霊王に頼んで良いのか?!」」
《喚んだー?》
「うわっ!! 出た!!」
「早い早い! 何してんの、精霊王!!」
喚んでもいないのに当たり前のように湧いてきた精霊王にギギルル兄弟は驚き、ノアとアークは平静だった。
それだけでコレが日常になっていることが知れた。
《魔人国だろう? しょっちゅう出かけてるからお安い御用だ》
「いやいや、精霊王がお安い御用って・・・何か威厳とか・・・今更だけども」
「それよりもしょっちゅう出かけてるって、何してんのさ?」
気安い精霊王にもはや二人は敬意とか払う気が全く無くなっていて、精霊王の許可もあってノア達と同等の軽口を言い合う仲である。
《ああ、ほれ、あそこの冒険者ギルドのギルマスとサブギルマスのところに遊びに行ったり、魔王達のところに遊びに行ったり》
「全部遊びじゃねえか」
「ツッコミどころ満載でウケる」
少しも考えること無くスラスラと応える精霊王に相変わらずの小気味良いツッコミを入れるギギルル兄弟。
それを側で笑って静観するノアとアーク。
更には驚きのあまりザワつく周囲、と色々カオスだった。
結論としては精霊王が転移で送ってくれることになった。
その際、ノアとアークも一緒に行って、ギギルル兄弟の父親に挨拶をするということに決まった。
そうとなれば、手土産だ・・・と、ノアは張りきって何やら錬成していたようだが・・・。
アークもヴァンも知らされていないので、何が出来上がるのか興味と不安が半々だった。
「何を作ってたんだ?」
「魔人国に着いてからのお楽しみで!」
そう言ってニコッと笑うノアに、まあいっかというアークと、やらかしそうだとニヤリとするヴァンだった。
ギギルル兄弟は当然、何も知らない。
出立当日、大公家に集合してから皆に見送られて精霊王と魔人国へと転移して貰った。
精霊王単体では平気で王城に転移していたが、さすがにノア達は門で入街手続きが必要なので手前に転移して貰う。
門前では、急に現れたキンキラキンの一行にどよめきが起こり、慌てた門衛が冒険者用の門の詰め所にアーク達を連れて行った。
その時も大人しく一緒について行った精霊王だったが、詰め所でノア達の確認が取れると《じゃあ還るから、また何時でも喚んでおくれ》と還って行った。
「ありがとう、精霊王」
さて、前回の迷宮の騒ぎで顔の知れてるノア達は、無事に詰め所から街に入って、とりあえず冒険者ギルドに顔を出そうという事になった。
「カフカ達も久しぶり」
「相変わらずなんだろうなあ」
ノアが微笑んでアークも懐かしそうに応えた。
「『箱庭の迷宮』も落ち着いてるようだしね」
「ギルドからの情報だとアレから異常なしって言ってたか?」
『そう言えば下界のギルドでそう言ってたの』
「---ああ、ヴァンはギギ達とあそこに良く行ってたな」
「---もう行きたくないな・・・」
「同感」
ルルとギギも、そう言えば・・・と続けたが、ヴァンとの迷宮周回コースを思い出して渋い顔になった。
『そう言えば記録更新したのだ!』
「・・・・・・記録更新?」
『ノアが作った周回コースの一日の記録だ。我がそれを上回ったのだ!!』
「---へえ、アレをねえ・・・・・・」
「アーク?」
ヴァンが自慢げに言った言葉に食いついたのはアークで。
「うわあ・・・・・・迷宮繋がりで行ったか・・・」
「・・・藪蛇・・・」
「アーク、俺別に記録なんて気にしてないから!!」
ヴァンに対抗して今すぐにでもあのキショいボスのいる迷宮に行きそうな勢いのアークをノアが宥めて事なきを得た。
そんなやり取りをこっそり影から見ていたラミエルからの報告に苦笑するカフカだった。
「こちらに顔を見せたら執務室でもてなしましょうか」
「・・・・・・塩でも撒いておこう」
「こらこら」
彼等がギルドに来るまであともう少し・・・。
たまに脈絡無く閑話もぶっ込むかと思います。
魔人国の騒動から帰ってきておよそひと月。
のんびりと羽を伸ばしたノア達は、そろそろ冒険者稼業に戻るか、と旅立ちの準備を進めていた。
一方その頃、結局ずっと竜王国に留まってヴァンの相手をして迷宮に潜ったり、竜王国の騎士団の鍛錬に混じったりして過ごしていたギギルル兄弟も出立の準備をしていた。
「え、ギギルル、魔人国に帰るの?」
たまたま街での買い出し中にギギ達に会ったノア達は、近くの喫茶店に入ってお茶を飲みながら今後の話をしていた。
「ああ。ほら、前回は依頼で行ってからのあの騒動だったろ?」
「親父に顔を出す暇も無かったからさ、一旦帰って、暫く親孝行でもしてやろうと思って。寒い冬も終わったようだし、移動も楽だろう?」
苦笑交じりでそう言うギギルル兄弟に、騒動の原因だったノアがシュンとした。
「あー、確かに・・・ごめんね、せっかく故郷に帰ったのに」
「あーあー、良いって。俺達が留守にするのなんて今に始まった事じゃ無いから。それにたぶんあの騒ぎは王都中に広まってたから、親父も耳にしたはずだ。親父も元冒険者だしその辺はわきまえてるよ」
気にすんなって笑ってくれたけど・・・。
「じゃあさ、精霊王に頼んで魔人国に送って貰おうか。あっ、アーク、俺達も一緒に行ってギギルルのお父さんに挨拶しない?」
「ああ。ノアのお母さんの事を助けに行った冒険者PTだったんだっけ。そうだな、顔を見せに行くか」
「「えっ、そんな軽々しく精霊王に頼んで良いのか?!」」
《喚んだー?》
「うわっ!! 出た!!」
「早い早い! 何してんの、精霊王!!」
喚んでもいないのに当たり前のように湧いてきた精霊王にギギルル兄弟は驚き、ノアとアークは平静だった。
それだけでコレが日常になっていることが知れた。
《魔人国だろう? しょっちゅう出かけてるからお安い御用だ》
「いやいや、精霊王がお安い御用って・・・何か威厳とか・・・今更だけども」
「それよりもしょっちゅう出かけてるって、何してんのさ?」
気安い精霊王にもはや二人は敬意とか払う気が全く無くなっていて、精霊王の許可もあってノア達と同等の軽口を言い合う仲である。
《ああ、ほれ、あそこの冒険者ギルドのギルマスとサブギルマスのところに遊びに行ったり、魔王達のところに遊びに行ったり》
「全部遊びじゃねえか」
「ツッコミどころ満載でウケる」
少しも考えること無くスラスラと応える精霊王に相変わらずの小気味良いツッコミを入れるギギルル兄弟。
それを側で笑って静観するノアとアーク。
更には驚きのあまりザワつく周囲、と色々カオスだった。
結論としては精霊王が転移で送ってくれることになった。
その際、ノアとアークも一緒に行って、ギギルル兄弟の父親に挨拶をするということに決まった。
そうとなれば、手土産だ・・・と、ノアは張りきって何やら錬成していたようだが・・・。
アークもヴァンも知らされていないので、何が出来上がるのか興味と不安が半々だった。
「何を作ってたんだ?」
「魔人国に着いてからのお楽しみで!」
そう言ってニコッと笑うノアに、まあいっかというアークと、やらかしそうだとニヤリとするヴァンだった。
ギギルル兄弟は当然、何も知らない。
出立当日、大公家に集合してから皆に見送られて精霊王と魔人国へと転移して貰った。
精霊王単体では平気で王城に転移していたが、さすがにノア達は門で入街手続きが必要なので手前に転移して貰う。
門前では、急に現れたキンキラキンの一行にどよめきが起こり、慌てた門衛が冒険者用の門の詰め所にアーク達を連れて行った。
その時も大人しく一緒について行った精霊王だったが、詰め所でノア達の確認が取れると《じゃあ還るから、また何時でも喚んでおくれ》と還って行った。
「ありがとう、精霊王」
さて、前回の迷宮の騒ぎで顔の知れてるノア達は、無事に詰め所から街に入って、とりあえず冒険者ギルドに顔を出そうという事になった。
「カフカ達も久しぶり」
「相変わらずなんだろうなあ」
ノアが微笑んでアークも懐かしそうに応えた。
「『箱庭の迷宮』も落ち着いてるようだしね」
「ギルドからの情報だとアレから異常なしって言ってたか?」
『そう言えば下界のギルドでそう言ってたの』
「---ああ、ヴァンはギギ達とあそこに良く行ってたな」
「---もう行きたくないな・・・」
「同感」
ルルとギギも、そう言えば・・・と続けたが、ヴァンとの迷宮周回コースを思い出して渋い顔になった。
『そう言えば記録更新したのだ!』
「・・・・・・記録更新?」
『ノアが作った周回コースの一日の記録だ。我がそれを上回ったのだ!!』
「---へえ、アレをねえ・・・・・・」
「アーク?」
ヴァンが自慢げに言った言葉に食いついたのはアークで。
「うわあ・・・・・・迷宮繋がりで行ったか・・・」
「・・・藪蛇・・・」
「アーク、俺別に記録なんて気にしてないから!!」
ヴァンに対抗して今すぐにでもあのキショいボスのいる迷宮に行きそうな勢いのアークをノアが宥めて事なきを得た。
そんなやり取りをこっそり影から見ていたラミエルからの報告に苦笑するカフカだった。
「こちらに顔を見せたら執務室でもてなしましょうか」
「・・・・・・塩でも撒いておこう」
「こらこら」
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