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324 閑話 自由人・精霊王様が行く 2
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※大公家に現れた精霊王。
竜王国の王城を賑わせた精霊王は、当初の予定通り2日滞在の後、古の森へと一旦還っていった。
それから日を待たずに、今度はヴァルハラ大公家に出没した。
《ノア達はおるかの?》
「---せ、精霊王様・・・いらっしゃいませ。急にどうなさったんです?」
《うむ、暇でな・・・。遊びに来た》
なんてことないようにそう言ってサロンの椅子に座る精霊王に、執事長のアヴィールがお茶を出しながら様子を窺う。
「ノア様達は、この間こちらに帰ってすぐに発情期に入ってしまわれて、ただいまはお部屋に巣篭もり中でございますので、生憎とお会いにはなれないかと・・・」
《おや、それならば邪魔は出来ないね。じゃあどうしようかな・・・》
思案顔の精霊王。
その時、ちょうど仕事の区切りがついたウラノスがレーゲンと共にやって来た。
どうやら影から連絡が入った模様。
「精霊王様、いらっしゃい。ノアちゃんに会いに来たのですか?」
《うむ。だが会えないのでどうしようかなと思っていたのだ》
「ウチも特段、珍しいモノなどないですからねえ・・・。ああ、そういえば王宮の庭園が大変なことになっていたようですね?」
その原因が精霊王にあることはヴァルハラ大公家でも知っている。
面白いので放置されていることも。
《刺激があって良かろう?》
いや、日常にそんな刺激は要らないでしょ。
レーゲンとアヴィールは密かに心の中で思った。
《ここにも作ってやろうか?》
「いやいや、ここにはそんな大層な庭はありませんので、遠慮しますよ」
ニタリと笑う精霊王に笑えないウラノスはそう言って断った。
《何だ、つまらん。じゃあ、古の森で遊んでいるか・・・。ノア達が巣篭もりを終えたらまた来るかな。邪魔したな》
「いえ、お構いもしませんで。ではまた後ほど」
キラキラを撒き散らして還っていった精霊王に皆がホッとひと息つく。
「彼の方もこちらの常識など通用しない方だからなあ」
「ノア様達がお部屋から出る頃にまた来るみたいですよね。・・・精霊王様のお部屋を御用意しますか?」
頭が痛いとばかりのウラノスにそうレーゲンが言った。
確かに・・・。
「今回の件で、精霊王がちょくちょく訪ねてきそうだから、あった方が良いだろうな。アヴィール、その様に手配してくれるか?」
「畏まりました」
そうして部屋を整えた後、ノア達が発情期明けで部屋から出てきたタイミングで再び精霊王がやって来た。
「精霊王、ウラノス義父様がこの邸に精霊王のお部屋を一つ用意してくれたんだって!」
《そうらしいの。助かる》
「部屋は自由に模様替えして良いが、あまりヘンなことはするなよ?」
アークも王宮の庭園の騒ぎを聞いたのだろう。
ウチではやるなよ、と釘を刺していた。
《やらないよ、そんなには・・・》
「・・・・・・」
《ほどほどに・・・?》
「---・・・・・・はあ・・・。部屋以外に被害は出すなよ?」
《もちろん、結界張るから!》
「頼むよ?」
もはやどちらが大人か分からないやり取りを二人がしているのを見守る大公家の人達。
この後、嬉々として与えられた部屋を魔改造する精霊王の姿が見られた。
その様子をチラリと覗いたノアとアークはこう言った。
「めちゃくちゃ可愛らしい」
「・・・子供部屋だな」
どうやら至るところで集めてきた可愛い玩具や絵本、ぬいぐるみなどを飾っているようだ。
《せっかくあるんだから、飾って使って貰おうと思って》
「・・・え?」
《何時かは其方らにも子が出来よう? その時にでも使っておくれ。部屋の中に状態保存の魔法をかけておくのでな》
何時でも良いぞ、と微笑む精霊王に呆気にとられる二人。
「・・・ありがとう」
「・・・・・・何時か、その時は・・・」
ノア達はそう言って御礼を言った。
ヴァルハラ大公家の皆はその話を聞いて嬉しくて大号泣していたそうだ。
「王宮の庭園みたいになるかと思ってたよ!」
「良かったねえ!」
《失礼な。我とて時と場所をちゃんと考えておるわ》
そう言いながら、またそのうちな、と還っていった。
それからちょくちょく訪ねてきては、自由に邸の内も外もふらふら歩き、厨房で菓子や料理をつまみ食いし、庭園の一部をやはり王宮の庭園のように弄ってしまい、たまにやって来る不法侵入者が知らずに捕獲されていた。
「---平和だねえ」
「・・・ソーデスネ」
いい加減、邸の皆は慣れたようで、そこかしこに精霊王が出没しても動じなくなった。
しかし、こんなに来ていて古の森は大丈夫なのかと少々心配なウラノス達だった・・・。
竜王国の王城を賑わせた精霊王は、当初の予定通り2日滞在の後、古の森へと一旦還っていった。
それから日を待たずに、今度はヴァルハラ大公家に出没した。
《ノア達はおるかの?》
「---せ、精霊王様・・・いらっしゃいませ。急にどうなさったんです?」
《うむ、暇でな・・・。遊びに来た》
なんてことないようにそう言ってサロンの椅子に座る精霊王に、執事長のアヴィールがお茶を出しながら様子を窺う。
「ノア様達は、この間こちらに帰ってすぐに発情期に入ってしまわれて、ただいまはお部屋に巣篭もり中でございますので、生憎とお会いにはなれないかと・・・」
《おや、それならば邪魔は出来ないね。じゃあどうしようかな・・・》
思案顔の精霊王。
その時、ちょうど仕事の区切りがついたウラノスがレーゲンと共にやって来た。
どうやら影から連絡が入った模様。
「精霊王様、いらっしゃい。ノアちゃんに会いに来たのですか?」
《うむ。だが会えないのでどうしようかなと思っていたのだ》
「ウチも特段、珍しいモノなどないですからねえ・・・。ああ、そういえば王宮の庭園が大変なことになっていたようですね?」
その原因が精霊王にあることはヴァルハラ大公家でも知っている。
面白いので放置されていることも。
《刺激があって良かろう?》
いや、日常にそんな刺激は要らないでしょ。
レーゲンとアヴィールは密かに心の中で思った。
《ここにも作ってやろうか?》
「いやいや、ここにはそんな大層な庭はありませんので、遠慮しますよ」
ニタリと笑う精霊王に笑えないウラノスはそう言って断った。
《何だ、つまらん。じゃあ、古の森で遊んでいるか・・・。ノア達が巣篭もりを終えたらまた来るかな。邪魔したな》
「いえ、お構いもしませんで。ではまた後ほど」
キラキラを撒き散らして還っていった精霊王に皆がホッとひと息つく。
「彼の方もこちらの常識など通用しない方だからなあ」
「ノア様達がお部屋から出る頃にまた来るみたいですよね。・・・精霊王様のお部屋を御用意しますか?」
頭が痛いとばかりのウラノスにそうレーゲンが言った。
確かに・・・。
「今回の件で、精霊王がちょくちょく訪ねてきそうだから、あった方が良いだろうな。アヴィール、その様に手配してくれるか?」
「畏まりました」
そうして部屋を整えた後、ノア達が発情期明けで部屋から出てきたタイミングで再び精霊王がやって来た。
「精霊王、ウラノス義父様がこの邸に精霊王のお部屋を一つ用意してくれたんだって!」
《そうらしいの。助かる》
「部屋は自由に模様替えして良いが、あまりヘンなことはするなよ?」
アークも王宮の庭園の騒ぎを聞いたのだろう。
ウチではやるなよ、と釘を刺していた。
《やらないよ、そんなには・・・》
「・・・・・・」
《ほどほどに・・・?》
「---・・・・・・はあ・・・。部屋以外に被害は出すなよ?」
《もちろん、結界張るから!》
「頼むよ?」
もはやどちらが大人か分からないやり取りを二人がしているのを見守る大公家の人達。
この後、嬉々として与えられた部屋を魔改造する精霊王の姿が見られた。
その様子をチラリと覗いたノアとアークはこう言った。
「めちゃくちゃ可愛らしい」
「・・・子供部屋だな」
どうやら至るところで集めてきた可愛い玩具や絵本、ぬいぐるみなどを飾っているようだ。
《せっかくあるんだから、飾って使って貰おうと思って》
「・・・え?」
《何時かは其方らにも子が出来よう? その時にでも使っておくれ。部屋の中に状態保存の魔法をかけておくのでな》
何時でも良いぞ、と微笑む精霊王に呆気にとられる二人。
「・・・ありがとう」
「・・・・・・何時か、その時は・・・」
ノア達はそう言って御礼を言った。
ヴァルハラ大公家の皆はその話を聞いて嬉しくて大号泣していたそうだ。
「王宮の庭園みたいになるかと思ってたよ!」
「良かったねえ!」
《失礼な。我とて時と場所をちゃんと考えておるわ》
そう言いながら、またそのうちな、と還っていった。
それからちょくちょく訪ねてきては、自由に邸の内も外もふらふら歩き、厨房で菓子や料理をつまみ食いし、庭園の一部をやはり王宮の庭園のように弄ってしまい、たまにやって来る不法侵入者が知らずに捕獲されていた。
「---平和だねえ」
「・・・ソーデスネ」
いい加減、邸の皆は慣れたようで、そこかしこに精霊王が出没しても動じなくなった。
しかし、こんなに来ていて古の森は大丈夫なのかと少々心配なウラノス達だった・・・。
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