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315 ヴァンの○○小屋を作ろう
しおりを挟むノアとアークが置き土産の鑑定の後、ベッドでイチャイチャとしていると、ヴァンがぽそりと呟いた。
『我は今夜何処に泊まろう?』
それを聞いたノアがハッとした。
イチャイチャしてる場合じゃ無かった!
「そうだよね、何時もテント出すかギギ達と一緒に泊まってたよね! ごめん、考え無しだった」
「・・・ヴァンなら適当にその辺で野宿でも問題ないだろう。元々野生なんだし」
せっかくノアとイチャイチャタイムだったのに邪魔をされたアークは不機嫌を隠しもせずにそうぼやいた。
「そうだけど、今はアークの従魔で俺達の家族も同じでしょ? うちのテントだけじゃ無くてヴァンにも自分専用のプライベートな場所があった方がいいよね?」
「ええ---必要か?」
胡乱げな目でヴァンを見つめるアークにヴァンが言った。
『我個人の部屋でもあれば、お主らは何時でも好きにイチャイチャ出来るのう』
「---!! 確かに、気にしなくて良いな」
『我はその辺り、何時もちゃんと空気を読んでいるだろ?』
ヴァンがニヤリと笑うと、アークもニヤリとした。
「『利害の一致だな』」
ノアはそれに気付かずに、早速錬金の準備を始めていた。
「ヴァン、大きさはどれくらいが良い?」
『うむ・・・我が本来のサイズに戻って体を伸ばしたりしても全然余裕なくらいは欲しいかな? 尻尾までだらーんとしても平気なくらいの広さは欲しい』
少し考えた後にそう言ったヴァンにうんうんと頷くノア。
「水浴びとか出来たら良いよね?」
『おう、あれば願ったりだな!』
「御飯も当然、そこで自由に取り出して食べられたら良いね」
『うむ。そこは大事だな!』
「さすが筋金入りの食いしん坊だな」
『煩いぞ、アーク』
アークのツッコミにすかさず返すヴァン。
二人を気にせず一人ブツブツと呟いているノア。
「・・・そうすると、俺のインベントリ・・・は無理だから、マジックバッグとヴァンの腕輪を繋げて、料理をマジックバッグにたくさん入れておけばヴァンは好きなモノを取り出せるから・・・」
そんなことを言いながらインベントリから次々と素材を取り出していく。
「あ、ねえ、ヴァンは室内でも運動したい?」
『あ? いや、さすがに室内ではのんびりしたいが。動きたくなったら狩りがてら外へ行くよ』
何でだと疑問に思いつつも律儀に返答するヴァンに残念そうな顔のノア。
何で?
「・・・そっか。キャットタワーならぬドッグランとかちょっと憧れるんだけど、要らないなら仕方ないか」
『・・・・・・オイ、我は狼ぞ? 猫でもないしもちろん犬でも無いんだが?』
ギョッとしたヴァンが訝しげにノアに言うが、もうノアの意識は別な方にあるようで聞こえていないようだった。
「・・・聞いちゃいないようだな。・・・・・・ふっ、犬・・・ヴァンが犬扱い・・・ウケる!」
『・・・・・・我、ちゃんとフェンリルって言ったよな? 知ってるよな? フェンリルって狼なんだぞ?!』
「まあ、平たく言えば同じイヌ科?」
『我、幻獣! 根本的に種族が違うだろう!! イヌ科で纏めるな!!』
「あっははっ!!」
アークとヴァンがやり合っている間にも淡々と材料を取り出していくノア。
イメージが纏まったのか、気付いたアークとヴァンが注視したときには錬成が始まっていた。
そして重要なことに気付く。
「---あのまま錬成したら、出来上がったモノは元のサイズになるんじゃないか?」
『・・・・・・さすがに我が寛げるくらいとは言っても、精々がこの部屋くらいじゃ・・・?』
「良く思い出せ。お前が水浴びとか出来るスペースを作ったらそれだけでもかなりの広さになる。そこにお前が寝転んでも大丈夫な広さに高さ・・・ただの部屋のはず無いだろう?」
『ぅ、うむ・・・。ここに収まらない・・・かも?』
「いや待てよ、ノアのことだ、小さいサイズで作ってから中を拡張するという可能性も・・・」
だがしかし、そんな不穏な事が大当たりした。
ノアがガッツリ魔力を籠めて出来上がったモノは、やはり部屋に入りきらず・・・。
結界のおかげで破壊と騒音は免れたが、ぶつかった振動は思いっきり伝わったようで・・・。
「お前たち、何やったらこうなるんだ?!」
駆けつけてきたウラノスと側近のレーゲンが唖然として、ルドヴィカは大笑い。
アーク達の部屋の中。
視線の先には小振りだが普通に戸建ての家一軒が結界の中で窮屈そうに屋根で天井を押し上げているように見える光景が・・・。
「・・・・・・ヴァンの、イヌ小屋?」
てへっと付きそうな声でそう言ったノアに全員がその場に崩れた。
---フェンリルがイヌ。
---イヌ小屋・・・。
---やっぱ面白えわ、ノアちゃん!
「・・・な?」
『---な?じゃ無いわ! 我は幻獣!!』
その後、速やかにイヌ・・・ゴホン、ヴァンの個室?を回収したノアは、魔法付与でサイズを小さくした。もちろん外見は小さくても中身は特製テントと同じく広いままだ。
「ヴァン、従魔の腕輪をちょっと貸してくれる?」
『・・・おう、好きにしてくれ』
「コレにも紐付けして、と。俺のマジックバッグと共有にしたから、マジックバッグの中の料理は好きに食べて良いよ。念じれば検索して取り出せるから。食器は浄化してしまってくれると助かるよ」
『! それは助かる! もちろんそれくらいはお安いご用だ。ありがとうの』
「どう致しまして。あ、義父様達、お騒がせしました」
崩れたままのウラノス達を振り返る。
声にならないのか、廊下で蹲ったまま手をあげていたので、大丈夫そう。
「ほら、分かったらもう戻ってけっこうだよ。寧ろ早く戻れ」
「・・・・・・はいはい、ごゆっくりどうぞ。ウラノス様、部屋に戻りますよ!」
「---はあ、了解・・・・・・」
ルドヴィカに連れられて去って行ったウラノス達を見送って部屋に戻り、ひと息吐いた。
「・・・・・・なんか気が削がれた」
「うん・・・・・・なんかごめん?」
『どうせじきに昼飯だし、夜に盛ってくれ』
「盛っ・・・・・・ぅ、ごめん」
「そうだな、夜までお預けで、その後は・・・」
舌舐めずりするアークに、ちょっと耐えきれずに夜までどきどきするノアだった。
※実際、オオカミはイヌ科らしいですが、ここではヴァンは幻獣(何度も叫んでましたが)なので、イヌ科扱いはありません。
悪しからず。
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