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303 閑話 ヴェルザンティの嫁取り作戦 3(sideエクシア)
しおりを挟む『箱庭の迷宮』問題で我が国に竜王陛下達が訪問する事が決定してから一週間後。
本日、予定通りに魔人国に到着するということで魔王陛下である母と宰相である父が出迎えに向かった。
私たち王子は晩餐会で紹介される予定なので出迎えはしない。
上の兄王子達と、王太子である兄の執務室の窓から竜王国の方角をジッと見つめていると、もの凄い勢いで翔んで来る竜が見えた。
---そう、竜化した竜人ではなく、竜体の竜人だった。
今回、総勢12名。
その12名が全員竜の姿で翔んできたのだ。
それはもう、竜王国からの宣戦布告かと焦ろうもの。
威圧が半端なかった。
「あ、兄上・・・・・・アレ・・・」
「うん、壮観だな」
「カッコいいね! 初めて見るよ!」
「・・・壮観・・・カッコいい・・・」
窓にしがみついて若干震えている自分が恥ずかしくなるほど、兄達は普段通りだった。
「怖いか?」
「・・・正直、少し」
「だがまあ、魔人国を害そうと思うならとっくに滅んでるからな。単に怒っているアピールをしているだけだろう。心配するな」
「はい。・・・あと、何か・・・恐怖じゃなくて、なんて言うか、その、どきどきします」
「どきどき?」
「はい。こう・・・良いことがありそうな予感というか・・・良い意味でのどきどきです」
「・・・・・・へえ。・・・・・・うーん・・・そっか」
「ドミリオ兄上?」
「いや、怖くてのどきどきじゃないなら良い」
そう言って執務机に戻って仕事を片付け出したので、邪魔にならないように自分の部屋に戻った。
先ほどの竜の中にいた、綺麗な青い竜が目を惹いて、ずっと頭に残っていた。
「---綺麗だったなあ・・・」
その竜が竜王陛下の護衛騎士の一人のヴェルザンティ・M・グウィン殿だと知ったのはその日の晩餐会でのこと。
何故か晩餐会中、ずっと視線を感じていた。
でもそれがイヤな視線だとは思わなかった。
最後まで見つめられていたように思う。
晩餐会のあと、父上と母上に呼ばれて私室に向かえば、兄達も集まっていて・・・。
そこで衝撃の話を聞かされた。
「エクシア、お前を番いだと認知した竜人が竜王国の護衛騎士の中にいたそうだ」
父であるラヴィアがそう切り出した。
「竜王陛下の護衛騎士の一人、グウィン殿だそうだよ」
「・・・・・・あの、青い髪の、晩餐会で私をずっと見つめていた方・・・ですよね?」
エクシアが震える声で確認する。
「・・・・・・ああ、さすがにアレだけ見ていたら気付くよね。先ほど竜王陛下から話を窺ってやっぱりか、と納得したよ」
「滞在中に夫問をするだろうから、よろしく頼む、と。もちろん無理強いはしないそうだが、竜人の番い至上主義を鑑みるに、お前の旦那様は決定したようなものだな・・・」
「え、あ・・・そうですよね」
旦那様・・・旦那様と想像して思わず頬が熱くなる。
「イヤならイヤと言って良いんだぞ! いくら番いと言われようと、お前の意志で決めていいのだ。例えこの身が裂かれようとも我はお前の母なのだから、それくらいは・・・ッ」
「いえあの、大丈夫ですよ。でも、そっか。竜王国の方達が来たあの時、どきどきしたのはこういう巡り合わせだったからなんですね。・・・正直、嬉しいんです」
そう言ったら、皆がホッとしたようだった。
ウチの家族は、他国は分からないけど王族には珍しく仲の良い家庭だから、私が嫌がれば本気で竜王国とコトを構えようとするだろう。
でも今の状況はマズい。
万に一つも勝ち目は無いだろう。
そうでなくても弟で第4王子のサリヴァンの事があるのだ。
末っ子だからと甘やかされて、結果、とんでもないことになったのだが、ソレが無ければこうして出逢うことも無かったかもしれない番い。
王族だし、政略結婚も視野に入れていたから竜人ほど番いに拘ってはいなかったけど、いざ自分が番いだと分かると一気に高揚感が増した。
私は本当に嬉しかったんだ。
---その話を聞いて三日。
未だに何の接触もなく、もしかして本当は番いじゃなかったのでは、なんて後ろ向きな思いで落ち込んでいたところに、グウィン殿からお茶のお誘いが来て、一も二もなくオッケーした。
お茶のお誘いを持ってきたのは、グウィン殿の幼馴染みだという、晩餐会で紹介された三人の内の一人、スクルド・M・ガウェイン殿。
「スミマセンね。ヴェルザンティも初めてのことでどうしたら良いか分からなくて、こういうの初心者で初心なんです」
そう言ってニコッと笑っていた。
こっちこそ、そういう意味では初めてのお茶会でどきどきしてしまう。
嬉しそうにいそいそと支度をするエクシアに内緒でドミリオ達が出歯亀をするのはこのもう少し後の事である。
※名前の『M』は侯爵家の英語の頭文字から取ってます。ヴェルザンティは侯爵ですがスクルド自身は爵位はありません。(後で出ますがウルズもまだ爵位はありません)
でも侯爵家の直系の人なのでMが付いてます。
・・・という仕様で私は使ってます。
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