迷い子の月下美人

エウラ

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291 晩餐会は混沌(カオス)の極み 2

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漸く中に足を踏み入れると、魔王陛下と王配で宰相のラヴィア、それと初めて見る青年三人・・・おそらく上の王子達だろう面々がすでに席に立ち、待っていたようだ。

「ゆっくり休めましたでしょうか? 我が国の特産品を使った料理で歓迎致します。お口に合えば良いのですが・・・」

そう言って魔王陛下はにっこり笑った。
硬い雰囲気は無く、猫はすでに数匹逃げている模様。

笑いを堪えたクリカラ達に気付かないようで、初顔の王子達の紹介をしてくれた。

「こちら、王太子のドミリオ、第2王子のヴァルタス、第3王子のエクシアです。今回の協議会には出席致しませんが、見知り置き下さい」
「「「よろしくお願い致します」」」

王太子は金髪に赤目でラヴィアに似た体格と顔立ち。
第2王子は金髪に銀目、こちらは体格はラヴィア似だが顔はセラフィムだ。
そして第3王子は黒髪に赤目で、体格、顔立ち共にセラフィムにそっくりである。

当然、第4王子は貴族牢に軟禁中である。

三人の王子達は魔王陛下と共に揃って深くお辞儀をした。

普通は一国の王族なのだから簡単に頭を下げることはしないのだが、竜王国は数ある国の中でも断トツで一番強い国なので、魔人国の王や王子といえども下手に出るしか無い。

・・・第4王子はきっとそういう力関係も分かっていないんだろうな、と全員が心の中で思った。

確かにこの三王子達はキチンと教育をされているのが立ち居振る舞いに現れていた。

それからこちらも改めて自己紹介をする。

「丁寧な挨拶痛み入る。儂は竜王であるクリカラ。こちらは儂の側近の一人でリュウギと申す」
「リュウギと申します。こちらは護衛の任務を受けております近衛騎士のウルズ、ヴェルザンティ、スクルドの三人」

リュウギが紹介をすると一歩前へ出て騎士の敬礼をする。

---そして何やらその竜王陛下の護衛の近衛騎士の一人であるヴェルザンティがやたらと第3王子のエクシアをガン見しているのが気になったが、今は晩餐会だからとひとまず後にした。

次にウラノスとレーゲンが挨拶をし、アーク達も軽く挨拶をすると席に座り、漸く晩餐会が始まった。

護衛の近衛騎士達と魔法騎士達は竜王陛下やウラノス達の後ろに控えて立つ。

申し訳ないが、晩餐会が終わって離宮に戻ってから交代で食べて貰うことになっている。


さて和やかに始まった晩餐会だが、竜王国の人達は全く気にしなかったが、魔人国ではそうでは無かったらしい。

すでに食後のデザートになった頃、戸惑いつつも声をかけてきた魔王陛下。

「---あの、クリカラ殿・・・」
「なんじゃ、セラフィム殿?」
「・・・・・・その、ノア殿・・・というか・・・カフカ殿というか・・・」

セラフィムがチラッとノアとアークを見る。
そして次にカフカとラミエルも見る。

王子達も宰相も同じように見る。

それを受けてクリカラ達も二組の番い達を見るが、平然としている。
カフカとラミエルもアーク達を見てから自分達を見て、首を傾げる。

「何か?」

心底分からないという顔だ。

動揺しているのは魔人国側だけ。


ノアはアークの膝の上に座り、アークは手ずからノアに給餌をしている。
---蕩ける笑みで。

カフカもラミエルの膝の上だが、こちらはカフカがラミエルに給餌をしていた。
---同様にラミエルが蕩ける笑みでカフカを見つめる。

クリカラの横では王弟であるレオニードが、さすがに膝上では無いが、やはり手ずからシェイラに食べさせている。
・・・・・・お互いイチャイチャ・・・・・・。

「・・・それは、あの・・・番い同士では、普通な事なので・・・?」
「うん? ああ、給餌行動の事か? そうさなあ、竜人ではごく当たり前の事だが、カフカ殿達のように他種族でもあるのではないかな?」
「はぁ・・・」

確かにカフカ達は魔人族(と混血)だったが・・・ウチはこんなことしなかったよね?

思わずラヴィアを見ると緩く首を振られた。
・・・うん、ウチはないかな?!

---でも羨まし・・・いやいや、我は魔王だ、そんな甘っちょろい事なんか・・・!
でもちょっとくらい・・・。

思わず懇願するように隣のラヴィアを見れば、無言でデザートのアイスクリームを掬って口元に差し出してきた。

思わずあーんと口を開ければそっと差し入れられ・・・。

ハッと気付けば全員の視線がセラフィムに向けられていて・・・。
王子達は口を押さえて噴き出すのを堪えるように横を向き、ラヴィアは蕩けた笑みでセラフィムを見つめ、クリカラ達には温かい目で見られて・・・・・・。

「---っ!!」

ボッと音が出そうな勢いで真っ赤になったセラフィム。

涙目の魔王陛下の被っていた猫は全て脱走し、結局晩餐会が終わっても旅に出てしまい戻らなかったらしい。

心なしかご機嫌なラヴィアが印象的だった。



・・・ラヴィアはドSに違いない。
セラフィムを揶揄って遊んでいるように見えるんだけど。

何となく察した皆は、触らぬ神に祟りなしとばかりにスルーした。

まあ、愛があれば、二人がそれで良いなら良いのだ。

馬に蹴られたくは無い。


そして護衛騎士のヴェルザンティがずっと第3王子を見つめていたのも印象的だった。

---っていうか、アレだよね?!

「見つけちゃったか」

と、クリカラがニヤリ。
リュウギもにっこり笑う。

「出逢っちゃいましたね」
「この滞在中に堕とせるかな?」
「当然出来るでしょう。竜人の重い愛と執着と独占欲を舐めて貰っちゃ困ります」
「・・・・・・やっぱガチだった」
「うわぁ・・・第3王子、ご愁傷様・・・」

二人の楽しそうな声にやっぱりかぁ、とギギルル兄弟。
他人事だが、竜人の番い至上主義を嫌と言うほど身近の手本で知っている二人がエクシアを憐れんだ。

「というわけで、貴方、堕とすまで護衛任務外れて構いませんよ」
「良い良い。魔王陛下には話を通しておくから、ひとまず明日から励めよ」
「ありがとう存じます!」

---そういうわけで、今回の協議会の裏で護衛騎士ヴェルザンティによる嫁取り作戦が決行されることがここに決まった。

その後、リュウギが陛下とこっそり打ち合わせをしていることに、やはりノアだけが気付かなかった。






※あくまでですので(笑)。

ざまぁ会議は間もなく始まります・・・たぶん。

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