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288 おいでませ竜王陛下!
しおりを挟む※遅くなりました。
魔王城の城門前。
先ほど遠目から見えた竜体の竜王陛下と大公閣下、その護衛達と側近の方々がちょうど降り立って竜人の姿に戻ったところだった。
門衛もビビって声にならないようだ。
顔が引き攣っている。
竜体は竜人の時よりもやや大きな体になると聞いたが、さっきはもっと大きいように見えた。
もしかしたら自在に大きさを変えられるのかもしれない。
---イヤ、ツッコまないけどね!
セラフィムは内心ガクブルしながら宰相のラヴィアと共に出迎える。
「ようこそ魔人国へいらっしゃいました。ご無沙汰しております、竜王陛下。この度はわざわざ御足労をおかけ致しまして・・・」
「---うむ。出迎えご苦労である。まあ、ここでは目立つのでな、案内を頼む」
「畏まりました。離宮へご案内致します。こちらへどうぞ」
竜王陛下の言葉にラヴィアが返答をして指示を出すと、途端にわらわらと動き出す。
今回は少数といえども竜王国のトップと側近、護衛も含めて12名ということで、王城の南にある離宮へ滞在して貰うことになっている。
この離宮は過去の魔王陛下が愛する王妃のために作らせたそうだが、今は誰も利用しておらず国賓貴賓の滞在が主な建物である。
今回、竜王陛下御一行の他に王弟でSランク冒険者のレオニード様夫夫とアルカンシエル様夫夫、フェンリル、Aランク冒険者のギギとルル兄弟も宿泊予定だった。
協議のたびに王城を行き来するのは手間だからと宿を引き払って貰い、昨日からこちらへ泊まって貰っている。
ソレを言うとじゃあギルマス達は?となるだろうが、さすがにあの二人は冒険者ギルドの仕事があるため、無理だった。
そもそも別の建物とはいえ王城の敷地内に寝泊まりすることは精神的に無理、だそうだ。
そういうわけで昨日、セラフィムは離宮へとやって来たノア達と初顔あわせをしたのだが、会って早々、ノアの人見知りぴるぴるに崩れ落ちて被っていた猫が全部逃げ出した。
『ごめんねごめんね、こんな可愛い子に辛い思いさせて、ウチの馬鹿王子が迷惑かけてごめんねぇ---!!』
大号泣である。
夫であるラヴィアも深く頭を下げた。
『非公式とはいえ、まずは謝罪を。本当に愚息が申し訳ない事を致しました。すみません』
さすがにノア達も呆気にとられてポカンとした。
『・・・魔王陛下って、こんな人だったんだ?』
アークがぽそりと呟くと、レオニードとシェイラは首を傾げて記憶を探る。
『・・・俺達も、魔王陛下が即位した頃に遠目から見たことがあったが、もっと硬い感じだったよな。きっと威厳を保とうと頑張ってたんだな』
『どっちかというと宰相殿の方がらしいもんなぁ。自国のこんな裏事情なんて知りたくなかったわ・・・』
『ホントだよ』
そんなことを言いながら、とりあえずその件は竜王陛下方が来てから、ということで昨日は一旦別れたのだが・・・。
その離宮へ案内すると、入り口で待ち構えていたノア達に気付いた竜王陛下はもの凄い勢いでノアに近付き、抱き締めた。
「ノアちゃん!! 会いたかったよ! 無事で良かったの!!」
「大祖父様も、お元気そうで良かった。今回は心配をかけてごめんなさい」
「ノア、もう良いだろう!! 離れろ!」
「相変わらずだの。まあ儂らも人のことは言えんが」
そんな様子を、ポカンとして見ている魔王陛下達。
レオニード達は通常通り、気にした風もなく笑っていた。
「---ええと、ゴホン。こちらの離宮は御自由にお使い下さい。何かあれば何時でも使用人に言伝をどうぞ。夜は歓迎の晩餐会を開く予定ですので、それまではゆるりとお寛ぎ下さいませ」
「おお、すまんな。こちらは竜王国と違って暑いから、食材も珍しいものがあるのだろうな。楽しみじゃ」
「大祖父様、美味しくて変わったモノもたくさんありましたよ。果物なんか美味しくて・・・」
「そうか、それは良かったの。では暫し寛ぐとしよう」
そう言いながら離宮へと消えたのを見送り、知らず詰めていた息を吐いて王城内へと戻って行く魔王陛下達だった。
「・・・さすがノア殿、肝が据わっているのか天然なのか・・・」
「あの圧に動じないのは半分といえど竜人の血が流れているからなのか・・・・・・イヤ、天然なのだろうな」
先ほどのやり取りはごく普通の爺様と孫のようだった。
触りだけだがノア殿の境遇は聞き及んでいる。
そんな彼をこちらの不手際でツラい状況に陥らせたのだ。
「・・・・・・誠心誠意、償わねばな・・・」
「そうですね」
とりあえずは今夜の晩餐会かな!!
なんかハードル上がっちゃったよね?!
「・・・・・・料理長、大丈夫かな・・・」
「踏ん張って貰いましょうか」
乾いた笑いを上げながら執務室に戻って行く魔王陛下達だった。
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