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270 お互いが足りない 1
しおりを挟む冒険者ギルドを後にしたアーク達は、宿泊している『火の鳥』に戻ってきた。
時刻としては、夕方。
晩御飯には早い時間か。
「---!! お帰りなさいませ!! 無事に帰ってきたんですね! ・・・良かったぁ・・・!」
宿の入り口でソワソワと待っていたのだろう宿主がアーク達を見つけるなり安堵の笑みで出迎えた。
「おう、宿主殿。心配かけたな」
「いやあ、少し前に、この間みたく竜人方が翔んできたって聞いて、お客様達じゃないかと思って・・・ああ、全員揃って・・・んん? ノア、殿? 髪って金髪でしたっけ? ---あれ? 一人増えてらっしゃる・・・?」
レオンが声をかけるとそう言って駆け寄ってきて皆の顔を確認して、気付いた。
---人外・・・いや俺達もある意味人外だけどよ、何、何なのこの美貌のキンキラキン?!
「精霊王だ」
「---へえ、精霊王・・・・・・せっ?!?!」
アークの言葉に思わず凝視するとニコッと微笑まれた。
・・・・・・あれ、なんか髪色と相まって、ノア殿に雰囲気が似てる?
宿主が首を捻っていると、アークが思い出したように告げた。
「ああ、ノアの養父?養母?だから、似てるかもだが気にするな」
---ほあっ?!
いやいや、養父母?なら逆に似てないんじゃないの?!
余計に気になるわ!!
宿主がわたわたしていると両肩にギギとルルが手を置いて首を振った。
「諦めろ」
「受け入れた方が楽だよ」
「・・・・・・えええ・・・」
そんなやり取りの後に結局諦めて受け入れた宿主が部屋の鍵をそれぞれ差し出すと、この後の皆の要望を聞いてきた。
「えーと、精霊王様はお泊まりにはならないんですよね? なら追加料金はありません。夕食などはどうしますか?」
「俺達は数日は籠もるから要らない。何かあれば声をかけるから放って置いてくれて良い」
と、アークとノア。
察した全員がコクコクと頷いた。
「じゃあヴァン、その間俺達の部屋においで。俺達と一緒に食べよう。精霊王様も俺達と一緒で良いよね?」
「そうそう、邪魔しないように暫く俺達の部屋にいると良いよ」
『そうだな。邪魔しよう』
《ひとまず夕食まで頼むかの。我は人のような食事は摂らんからの、その頃には古の森に戻るよ》
ヴァンと精霊王が了承する。
「ギギルル兄弟とヴァンはここで食べたり好きにするといい。俺達も少し部屋に籠もるから呼ぶまで良いぞ。シェイ、久々に・・・」
「・・・もう、レオンったら」
「・・・・・・羨ま・・・っコホン。分かりました。ではギギルル兄弟とヴァン殿は出来たら呼びますので! ごゆっくりどうぞ---!!」
そう叫んで宿主は奥に引っ込んだ。
クスクス笑いながらギギルル兄弟はヴァンと精霊王を連れて部屋に入った。
アーク達はすでにいない。
おそらく何時ものえげつない魔法で囲って、コレから暫くは・・・。
「---お清めセックスってヤツだな。ヤればノアの髪って元の色に戻るのかな?」
「うーん・・・アレの魔力が完全に体から抜ければ戻るんじゃない? アークがめちゃくちゃ注ぎまくりそう・・・。ノア、死なないと良いな・・・」
《そうだな。アークの魔力に押し出されれば抜けて戻ると思うが》
『・・・・・・監禁されないといいのう』
笑えないな、と思う三人と一頭だった。
さっさと自室に入るとノアは言われずとも防音結界を張る。
「---アーク・・・アーク!」
「ノア、本当に良かった。ずっと死ぬ思いだった・・・!!」
「・・・・・・ごめんね、ありがとう・・・。嬉しかった・・・もう、アーク不足で、めちゃくちゃにして・・・!」
「---俺もだ。ノアが足りない・・・煽った覚悟は良いか?」
「もちろん・・・好きにして。アークを感じさせて」
切なげだったアークはその言葉に獰猛に笑った。
※今回ちょっと短いですが、次話はやっとR18です。
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