迷い子の月下美人

エウラ

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259 リベンジ 1

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ラミエルの『貞操の危機』発言にブチ切れ寸前のアークだったが、ギギ達の取りなしにより元凶となった『箱庭の迷宮』のダンジョンマスターに怨みをぶつけるべく、怒涛の勢いで再準備を完了させた。


そして翌日の朝、アーク達は『箱庭の迷宮』の出入り口に再び降り立っていた。

時間短縮の為に、当然のように竜化して翔んできたのだが、朝の早い時間だったためか今日は静かだった。

「今から迷宮に入る」
「---アレ、本当にやるの?」
「仕方ないだろう? これくらいしか方法が思い付かねえし」
「そうだな。ダメ元だ」
「上手くいくといいんだけどね」
『我も久しぶりに全力で暴れられそうだの』

アークの言葉から始まって、ルル、ギギにレオン達、ヴァンもそう言って足を踏み出した。

「ご武運をお祈りしております」

付き添いのラミエルが昨日と変わらぬ様子でそう言って頭を下げる。

「---戻ったら一発殴らせろ」
「如何様にも、どうぞ」

昨日の件で八つ当たり気味にラミエルに呟くアークをサラッと流して見送るラミエル。

迷宮に消えたのを見届けて、側で待機していたギルド職員と警護の冒険者に見張りを任せて冒険者ギルドへ戻っていった。


---さて、どうなることやら・・・。

サッサと解決してカフカの心労を少しでも取り除いてやりたいと思うラミエルだった。




迷宮へと再び足を踏み入れたアーク達。

実は入った瞬間、前回のように弾き出されることを懸念していたのだが、どうやらセーフだったようだ。

本命を手に入れて興味を無くしたのか、それとも・・・ノアにかかりきりになっているのか。

前者だったら良いが、後者だったら・・・。

---考えたくも無いな。

一面に広がる平野を見渡し、気配を探る。
微かにノアの気配がするが、地図を展開しても迷宮内を差すだけでピンポイントには表示されない。
精度の問題か、それとも迷宮の支配者ダンジョンマスターの影響か・・・。

「---やっぱり、アレしかないな」

アークがそう言ったので、ギギ達やレオン達もやれやれ、という顔になった。

『我は構わんぞ』
「そうだろうね! ヴァンはそういうの好きそうだもんね! でも俺達は限度ってモンがあるからね? それこそノアのポーション頼りだからね?!」
「さすがに竜人と一緒にしないでくれよ? 本番で力尽きたくないからな?」
「俺とヴァン、レオン達でイケるだろう。ギギ達は適当に頼む」

アークが気を遣ったのか本当にイケるのか分からない発言をしたが、まあ様子を見れば良いかと、頷いたギギルル兄弟。

「「とりあえず、任せる」」
「「「『おう!』」」」

そう言って、おもむろに威圧を放ったアークに続いてレオン達も一気に放った。
自分達に向けられたモノではないのだが、内心冷や汗をかいているギギルル兄弟。

ビリビリと肌を刺す空気に、本当に敵で無くて良かったと思うと共に、ノアに何かあったらガチで魔人国消えるな、と遠い目をする二人だった。

『・・・まだ我は何もしていないぞ?』

ギギ達の隣ですまし顔のヴァンがそう言った。
それを聞いてハッとする二人。

「---そうだった。うへえ・・・伝説的な幻獣もココにいたんだった」
「コッチが本職だったんだっけなぁ・・・」

その言葉にヴァンが呆れた。

『お前ら、我を何だと思って・・・』
「え? 食いしん坊狼?」
「それ以外に何かあったっけ?」
「あっ! ノアのもふもふ癒し担当!!」
「それがあったか!!」

思い出したように叫んだギギ達を見やり・・・。

『・・・・・・』

言い返せずだんまりしたヴァンにクスリと笑ってギギ達は前を見据えた。

すでにアーク達による迷宮蹂躙が始まっていた。

「ほんの数分だが、凄まじいな」
「・・・格が違うよね」
『アークなんぞ、キレてるからの』

ギギ達の軽口の間に、周りはいつの間にか更地になっていたのだった。




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