251 / 538
247 魔人国の裏事情
しおりを挟む「---つまり、行方不明になって3日は経っているという事だな?」
レオニードが額を押さえて、呻いた。
他の5人も同様だ。
ヴァンだけは知らんぷりを決め込んでいる。
---カフカの話を纏めるとこういうことだ。
3日前、カフカは『箱庭の迷宮』の現時点の状況を説明するために王城へあがっていた。
そろそろ指名依頼したSランク冒険者達も魔人国に到着しそうだったので、その報告も兼ねて。
その不在時に、冒険者をしている魔人国の第4王子・・・アークとは違い、お遊びで冒険者になったような放蕩息子が冒険者ギルドにやって来て、現在封鎖中の迷宮への立ち入り許可を元ギルマスに貰って入ったらしい。
そして迷宮から出て来ない、と。
一緒に付き添いで入った他の冒険者と王家の近衛騎士は幻惑されながらも全員無事に脱出したが、待てど暮らせどその第4王子が出て来ない。
コレはマズいと冒険者ギルドに戻って連絡したことで事件が発覚。
元ギルマスは自己責任だと言って取り合わず、王城から戻ったカフカが事と次第を知り慌てて再び王城に出向いて対応した。
そもそも、封鎖中の迷宮への立ち入り許可を出すということ自体おかしいのだ。
封鎖するくらいヤバい事なのだ。
それを分かっておらず軽んじて独断で許可を出したのだろう。
・・・今まで尻拭いをされていて、誰が一番大変か認識していなかったのかもしれない。
さすがにカフカも、次に問題を起こしたらクビだと最後通告をしたわけだが、ちっとも学ばなかったようだ。
「指名依頼の内容は第一に調査で、行方不明者の捜索は第二で、もし出来ればという事でしたが、事情が変わったので王子の捜索を第一にして頂きたいのです。急な変更で大変申し訳ないのですが・・・」
もの凄く辛い表情でそう言うカフカに、アーク達も否やはない。
二つ返事で了承した。
だがそれで『はい、そうですか』といきなり迷宮に潜るわけにはいかない。
情報収集と準備が必要不可欠だ。
原因不明の事が起こっているなら尚更の事。
「こちらも準備があるし、何より情報が不足している。事前に聞き取りはしているのだろうが、出来れば直接、すぐにでも無事に帰還した冒険者達本人の話が聞きたいが・・・」
「ええ、そう言われることを見越して別室で待機して貰ってます」
「さすがだな、助かる!」
打てば響くようにポンポンと事が運んでレオニード達もホッとした。
これで時間を無駄にせずに済む。
そうして別室で話を聞いて集めた情報を纏めて精査する。
おおよそは貰った資料と同じだが、行方不明者の共通点がやはりよく分からない。
冒険者ランクはバラバラで、年齢も皆違う。
剣士だろうが魔導師だろうが関係なく、何なら状態異常無効化の魔導具を持っていた冒険者も消えている。
ランダムなのか何か条件があるのか?
「これだけでは分からないな。行方不明者の友人知人にも人となりを聞いてみるか」
「・・・そうですね。ラミエル、リストアップしたものは・・・」
「こちらです、どうぞ」
「・・・早いな。もしかして事前に用意していたのか?」
「必要と思われるものは準備してありますので」
「---さすが、としか言えないな」
このギルマスにしてこのサブギルマスあり、って感じだな。
阿吽の呼吸ってヤツだ。
追加の資料に目を通して、起ち上がる。
「取りあえず、今日はこの友人知人にあたって話を聞いてみよう。悪いがすぐには潜れない」
「ええ、当然です。こちらも情報収集を続けますが、分かったことや聞きたいことなどあれば遠慮なく職員へ声がけして下さい。今の最優先事項ですので」
「ああ了解した。じゃあまた。邪魔したな」
「ありがとうございました。お気を付けて」
そうして一旦、冒険者ギルドをあとにした。
「---はあ、腹減った。もう昼だぜ」
「お兄、一言目がご飯って・・・」
『我も腹が減った』
「ヴァンもお利口さんにしてたね。ご褒美にたくさん食べて良いよ」
「いやいや、フェンリルにお利口さんって」
「ノアってよく斜め上に行くよね」
「可愛いだろう?」
「出たよ、アークの惚気」
「「番いのいる竜人だからな」」
「屋台の御飯で良いよね? ギギルル、何が美味しいの?」
ノアに聞かれて意気揚々と応えるギギルル兄弟。
ここは地元民に案内して貰うに限る。
「おう! 色々あるぞ!」
「まずはねえ・・・」
そんな他愛もない話をしながら屋台通りに繰り出したのだった。
230
お気に入りに追加
7,354
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
緑宝は優しさに包まれる〜癒しの王太子様が醜い僕を溺愛してきます〜
天宮叶
BL
幼い頃はその美貌で誰からも愛されていた主人公は、顔半分に大きな傷をおってしまう。それから彼の人生は逆転した。愛してくれていた親からは虐げられ、人の目が気になり外に出ることが怖くなった。そんな時、王太子様が婚約者候補を探しているため年齢の合う者は王宮まで来るようにという御触書が全貴族の元へと送られてきた。主人公の双子の妹もその対象だったが行きたくないと駄々をこね……
※本編完結済みです
※ハピエン確定していますので安心してお読みください✨
※途中辛い場面など多々あります
※NL表現が含まれます
※ストーリー重視&シリアス展開が序盤続きます

幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる