迷い子の月下美人

エウラ

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237 初めての指名依頼 1

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ギギ達の話を聞いた後。

諸々の打ち合わせなどで会うのに王城では不便だという事になって、レオニードとシェイラは竜王陛下にいとまを告げてからヴァルハラ大公家に来ることになった。

「念の為、陛下兄上にも『箱庭の迷宮』の話を通しておくよ。冒険者ギルドに聞いたりしたら調査依頼が来るかもしれないし」
「俺達、こんなんでもSランクだからね」

レオニードとシェイラがカラカラと笑って言うが、ちょっと聞き流せない言葉が・・・。

「・・・それで言ったら俺達もなんだけど?」
「一応俺もSランクになったし?」
「・・・・・・その流れでいくと、俺達も魔人国民当事者だからヨロシクって来そうなんだが? それに俺達もAランクだしなぁ・・・」
「・・・お兄、人はソレをと言う」
「やべえ、自分で立てちゃった?」
「立てちゃったねぇ」

二人してはあ、と溜息を吐く。
冒険者ギルドに聞きになんか行ったら絶対ギルマス案件だろう。

---全員が想像した。

『待ってました! 飛んで火に入る夏の虫、いやカモネギ! いや竜だから例えが違うか!』

---そう言ってカロンが喜ぶ顔しか浮かばなかった。

「・・・・・・まあ、明日はそのつもりで・・・」

苦笑しながらレオン達と別れる。


先に王城をあとにしたアーク達はヴァルハラ大公家に戻り、ギギ達は現在滞在中の宿に引き続き泊まるというので、門前で馬車を降りた。

「・・・ココに泊まれば良いのに・・・」

ノアがちょっと残念そうに呟く。
それに眉をへにょっと下げてギギとルルが言った。

「・・・・・・悪いな。今の宿も居心地が良くてさ。それにどうもこう、御貴族様ってだけで気を使っちまう・・・」
「いや別にアーク達の家族だし、手紙でどんな人達か分かってるけどね、やっぱり家族水入らずのところには居づらいというか・・・」

アークは苦笑した。
まあ気持ちは分かるよ。

「分かってる。無理強いはしないから。明日は冒険者ギルドに朝、10時頃で良いか?」
「ああ、それで良い。じゃあ冒険者ギルドでな、ノア、また明日!」
「ん、ありがとう、また明日ね」

ちょっと寂しいけど仕方ない。
明日はまた会えるし、暫く一緒に行動できそうだし。

本当に調査依頼が来るなら当面はレオン達ともギギ達とも一緒のはずだ。

「・・・あれだけ一人で過ごした時間が長かったのに、今はもう、一人なんて考えられなくなってしまった」
「そうか、俺としては嬉しいけどな。俺と離れたくないんだろう? ・・・他のヤツらと仲良くしているのを見ると嫉妬するけどな」
「・・・・・・普通の付き合いでしょ? 愛してるのはアークだけだよ」
「それは分かってるけどさ。俺だってノアだけだ」

珍しく拗ねたようなアークの態度が体格に似合わずカワイイと思ってしまった。

思わずふっと笑ってしまい、気付いたアークが更に拗ねてしまって・・・。

この平穏が何時までも続くと良いなと思った。そう、この時はこれが当たり前のように続くと思っていた。



ヴァルハラ大公家に帰ってからレオン達とギギ達の話をすると、ウラノス達もやはり同じ見解のようだった。

暫くして滞在場所を大公家に変更したレオン達も合流して、賑やかな晩餐会となり、レオン達の冒険談義に花を咲かせた。

そして翌日、冒険者ギルドに顔を出すとギルマスのカロンが待ち構えていた。

---胡散臭いいい笑顔で。




※何とか仕上がったので投稿します。
誤字とかあったら見直しながら直しますね。
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