迷い子の月下美人

エウラ

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241 魔人国に入国しよう

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竜王国を発った俺達は、ルルの魔力をみながらそこそこ余裕を持って翔んで行き、早めに休みを取って回復するということを繰り返しながら魔人国を目指した。

途中、ノアが住んでいたアインの街に近付いたが、全員一致でスルーした。
どうやら領主が変わって色々と再開発中らしいとのこと。

薬師ギルドも一新されたようで、色々と人が入れ替わったとか。
冒険者ギルドはそのままだが、今度のギルマスはギギ達の知り合いの魔人だそうだ。
どうやら新領主とは上手くいっているらしい。

だがノアとしては余り良い思い出が無いところなので、自ら行きたいとは思わなかった。


そのまま更に南下して幾つかの街を経由しながら進むと、季節的には春の陽気なのだが、魔人国に近付くにつれて暑さ対策が必要になった。

「今は温度調整機能を付与してある服だから良いけど、実際は暑いんだね」
「竜人は耐性があるから余り気にならないがこの辺りは一年中夏だな」
「じゃあギギ達は慣れてるんだ?」
「ああ、慣れてる。寧ろ竜王国のような北の寒さにはめっぽう弱くて」
「だけど厚着するわけにはいかないしさぁ・・・困るよね。そこに来てノアの錬金術や魔法付与だもん。大助かりだよねぇ」
「本当にノア様様だよ」

ギギ達が手放しで褒めちぎるものだからほんのり赤くなって照れるノアが可愛い。

レオニード達も感心して言った。

「俺達のテントなんかも凄かったものな! 本当に感謝しているよ」

そう言われてますます赤くなるノアだった。

確かにノアが魔法付与した服や防具を身に着けていれば何時でも快適な適温になるが、脱いだら一気に汗が噴き出すだろう。

そう思えるのは、魔人国に入国するための列に並んでいて周りがよく観察出来るからだ。

ノア達は当然、冒険者用の門に並んでいるのだが、一般人用の列の人達は日除けの傘を差したり、馬車の日陰に移動していたりしながら涼んでいる。
見るとやはり汗をかいていた。

冒険者達は汗をかきながらもさすがに日傘は差さない。
中にはノア達のように涼しい顔で並んでいる者もいるが、概ねは暑いのを我慢していそうだ。

「この暑い中で待つのも辛いね」
「確かにそうだが、さすがに防具を脱ぐのはなあ・・・」
「でも暑くて倒れても困るよね。御守りアミュレットみたいなので体温調節出来ると良いね・・・。作ると売れそう」
「それ、出来たら速攻で買うから教えて!」
「え、あっうん」

ノアの発言を聞いたルルが、いの一番に買う約束を取り付けていた。

暑い中、周りはこの目立つ団体さんに興味津々で注視していた。

冒険者用の門に並んでいるのだが、どう見てもお忍びや訳あり貴族とその護衛騎士達に見えるからだ。

見るからに高位貴族風な4人、うち一人はフードで顔を隠している。
残りの二人は魔人国ここでは有名な双子のAランク冒険者だ。

おそらく護衛任務を受けたのだろうと推測する。

そんな周りが固唾を呑む中、ノア達の番になった。

「はい、お待たせしました。冒険者タグ、を」

門衛が定型文を口にしながらこちらに顔を向けると、思わずと言った感じに固まってしまった。

デジャヴだ。

「---俺達は冒険者だ」

アークが先回りしてそう告げてからタグを見せる。
門衛がハッとしてタグを確認すると、周りもざわっとした。

「---Sランク冒険者・・・アルカンシエル殿」
「俺達も頼みます」

そういってノアとレオニード達、ギギ達もタグを出すと更にざわめきが大きくなった。

「・・・え、Sランク冒険者、ノア殿・・・同じくSランク冒険者のレオニード殿、シェイラ殿・・・」
「俺達は言わずもがなだが、規則だからな」
「いつも通りよろしく」
「・・・ギギ殿にルル殿、これは一体・・・」
「貴族の護衛じゃ無いぜ。旅仲間・・・今回はPTかな?」
「いやいや、何でこんなにSランク冒険者ばっかり・・・・・・、あ、まさかアレか!?」

門衛が気付いたように言った。
そう、アレである。

「詳しい話はギルドで聞くけど、コッチにも聞きに来るかもだからよろしくね」
「了解した。・・・遅れたが、魔人国へようこそ」
「ああ」
「はい、お邪魔します」

最後にノアがフードを下ろして、再びザワつくのだった。



ここまでがお約束である。








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