245 / 534
241 魔人国に入国しよう
しおりを挟む竜王国を発った俺達は、ルルの魔力をみながらそこそこ余裕を持って翔んで行き、早めに休みを取って回復するということを繰り返しながら魔人国を目指した。
途中、ノアが住んでいたアインの街に近付いたが、全員一致でスルーした。
どうやら領主が変わって色々と再開発中らしいとのこと。
薬師ギルドも一新されたようで、色々と人が入れ替わったとか。
冒険者ギルドはそのままだが、今度のギルマスはギギ達の知り合いの魔人だそうだ。
どうやら新領主とは上手くいっているらしい。
だがノアとしては余り良い思い出が無いところなので、自ら行きたいとは思わなかった。
そのまま更に南下して幾つかの街を経由しながら進むと、季節的には春の陽気なのだが、魔人国に近付くにつれて暑さ対策が必要になった。
「今は温度調整機能を付与してある服だから良いけど、実際は暑いんだね」
「竜人は耐性があるから余り気にならないがこの辺りは一年中夏だな」
「じゃあギギ達は慣れてるんだ?」
「ああ、慣れてる。寧ろ竜王国のような北の寒さにはめっぽう弱くて」
「だけど厚着するわけにはいかないしさぁ・・・困るよね。そこに来てノアの錬金術や魔法付与だもん。大助かりだよねぇ」
「本当にノア様様だよ」
ギギ達が手放しで褒めちぎるものだからほんのり赤くなって照れるノアが可愛い。
レオニード達も感心して言った。
「俺達のテントなんかも凄かったものな! 本当に感謝しているよ」
そう言われてますます赤くなるノアだった。
確かにノアが魔法付与した服や防具を身に着けていれば何時でも快適な適温になるが、脱いだら一気に汗が噴き出すだろう。
そう思えるのは、魔人国に入国するための列に並んでいて周りがよく観察出来るからだ。
ノア達は当然、冒険者用の門に並んでいるのだが、一般人用の列の人達は日除けの傘を差したり、馬車の日陰に移動していたりしながら涼んでいる。
見るとやはり汗をかいていた。
冒険者達は汗をかきながらもさすがに日傘は差さない。
中にはノア達のように涼しい顔で並んでいる者もいるが、概ねは暑いのを我慢していそうだ。
「この暑い中で待つのも辛いね」
「確かにそうだが、さすがに防具を脱ぐのはなあ・・・」
「でも暑くて倒れても困るよね。御守りみたいなので体温調節出来ると良いね・・・。作ると売れそう」
「それ、出来たら速攻で買うから教えて!」
「え、あっうん」
ノアの発言を聞いたルルが、いの一番に買う約束を取り付けていた。
暑い中、周りはこの目立つ団体さんに興味津々で注視していた。
冒険者用の門に並んでいるのだが、どう見てもお忍びや訳あり貴族とその護衛騎士達に見えるからだ。
見るからに高位貴族風な4人、うち一人はフードで顔を隠している。
残りの二人は魔人国では有名な双子のAランク冒険者だ。
おそらく護衛任務を受けたのだろうと推測する。
そんな周りが固唾を呑む中、ノア達の番になった。
「はい、お待たせしました。冒険者タグ、を」
門衛が定型文を口にしながらこちらに顔を向けると、思わずと言った感じに固まってしまった。
デジャヴだ。
「---俺達は冒険者だ」
アークが先回りしてそう告げてからタグを見せる。
門衛がハッとしてタグを確認すると、周りもざわっとした。
「---Sランク冒険者・・・アルカンシエル殿」
「俺達も頼みます」
そういってノアとレオニード達、ギギ達もタグを出すと更にざわめきが大きくなった。
「・・・え、Sランク冒険者、ノア殿・・・同じくSランク冒険者のレオニード殿、シェイラ殿・・・」
「俺達は言わずもがなだが、規則だからな」
「いつも通りよろしく」
「・・・ギギ殿にルル殿、これは一体・・・」
「貴族の護衛じゃ無いぜ。旅仲間・・・今回はPTかな?」
「いやいや、何でこんなにSランク冒険者ばっかり・・・・・・、あ、まさかアレか!?」
門衛が気付いたように言った。
そう、アレである。
「詳しい話はギルドで聞くけど、コッチにも聞きに来るかもだからよろしくね」
「了解した。・・・遅れたが、魔人国へようこそ」
「ああ」
「はい、お邪魔します」
最後にノアがフードを下ろして、再びザワつくのだった。
ここまでがお約束である。
245
お気に入りに追加
7,355
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる