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229 つわものどもが夢の跡
しおりを挟む違う意味で盛り上がった?手合わせだったが、アーク達が去った後も静まり返っていた。
当の本人は、抉ってしまった訓練所を魔法で再生させて綺麗に戻した後、何事も無かったかのようにアーク達と出て行って、観客達は更にポカンとしていた。
観客席の冒険者や街の住人達は腰が抜けたり茫然自失で動けない者がほとんどだった。
ギルマスはその観客席に向かって声をかけた。
「お前達、今日は貸切だから良いが、早いところ出て行けよ! 俺達も暇じゃないんでな!」
それにビクッとしてから、ゆっくり腰を上げだした冒険者達は来たときとは反対にお通夜のように静まり返っていた。
無理もない。
まともなヤツらだって引くぐらいの戦闘だった。
だがアレはほんの一端。
本気じゃない。
その証拠に、ノアは翼はおろか、爪も出さずに瞳だって普通のまま、楽しそうにアークとやり合っていた。
アレがパフォーマンスのお遊びならば本気って一体どれ程か・・・。
恐ろしい。
一方その頃、冒険者ギルドを出たアーク達は、久しぶりに会うギギルル兄弟と一緒に街で人気の喫茶店の個室を借りてお茶を飲もうとメニューを見ていた。
事前に予約してはいたものの、今、噂真っ只中の人物の来店に、たまたま居合わせた客はもとより予約を把握しているはずの店員まで色めきだっていた。
わあわあきゃあきゃあ(ぎゃあぎゃあ?)とした声が、奥の個室に通されるまでの間ずっと響き渡っていた。
部屋に通されると、こちらの声は外に漏れないように器用に魔法を使うノア。
その後は無言でメニューを睨んでいる。
何を注文しようか悩んでいるのだろう。
「どんなのが食べたいんだ?」
アークが声をかけると、メニューから顔を離さずに言い辛そうに呻った。
「・・・・・・うーん、この、パフェのヤツなんだけど・・・・・・」
「けど? なになに? どれが食べたいの?」
ルルがツッコんできたので、ノアは勇気を出して言ってみた。
「全部乗せ・・・って、ヤツ? 美味しそうなんだけど・・・・・・量が・・・・・・」
そういってメニューを広げた。
そこには色とりどりパフェのイラストが説明と共に描かれていて、一番下には全部乗せという大きな器に盛られたパフェのイラストが・・・。
「---ああ。なるほど」
「うわ、確かにノアには多いねえ。一人前でも多いかも?」
「全部乗せ・・・って、トッピングを全部?! そりゃあ、それなりの量になるわなあ・・・」
ギギとルルも唖然とした。
とにかく器がデカい。
ノアの顔を三倍くらいにしたサイズだろう。
「アークはたくさん食べるけど、甘いデザートはそこまで食べないもんね」
「ノアが作ったモンは残さず食べきる自信はある。が、まあ普通はそんなに入らないな。歯が痛くなるような甘さはちょっと・・・」
ノアに聞かれてアークも苦笑してそう言った。
それとは反対にルルは甘党らしく、ぱあっと顔を赤くした。
「ノア、それなら俺と食べよう! お兄も甘いの苦手だから、外でこういうの食べたことあんまりないんだ! 俺、結構食べられる自信あるよ!」
ルルが本当に楽しそうに言うのでアークに確認してみる。
「えっと、良いの?」
『アイスクリームのところなら我が食べてやっても良いぞ。甘い雪みたいなもんだしの』
「え、やった! じゃあじゃあ、アーク、良い?!」
「ノアがそれで良いなら構わない。それに得意じゃないだけで普通の量なら食えるぞ?」
「ああ、俺も少しはイケるぜ。気にすんな!」
それを聞いて珍しく満面の笑みで大はしゃぎのノアを、注文したパフェが届くまで皆で生温かく見守っていたのだった。
※サブタイトルは「盛り上がった後の静けさ」の意味で使いました。
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