迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
236 / 534

232 一方その頃(sideギギ&ルル兄弟)

しおりを挟む

竜王国に着いた初日。

ギギとルルはアーク達と別れて騎士に送って貰った宿屋でひと息つく。

「はあ---やっぱり大貴族なんだな、アークって」
「ねー、改めて実感したよ。さすがにあんな扱いされたらイヤでも分かるわ」

冒険者としてのアークは言葉遣いも平民と変わらないし驕ったところもない。
だが、端々で貴族っぽい仕草や言葉がスルッと出てくるのを見ると、やっぱりそうなんだなと認識させられて。

俺達の方が長生きしてんのに、なんていうか達観してるというか経験豊富というか・・・。

「アイツはアイツで苦労してんだろうな・・・」
「俺達、御貴族様じゃなくて良かったよね」

しみじみと言うルルに速攻頷いた。

「俺達にはこれくらいの宿がちょうど良い!」
「うんうん。ほどほどが一番」

そうしてのんびり過ごした次の日、この街のギルドに顔を出した。

「頼も---!!」
「煩いよ、バカ兄!!」

相変わらずのギギにすかさずツッコむルル。
ポカンとしたギルド内の何とも言えない空気感。

「・・・・・・あれ、スベった?」
「ウケを狙うんじゃない!」
「いや狙ったわけじゃねえけどよ・・・まあちょっとはウケるかなとは思ったけども・・・おいおい、ゲンコツ作るな! ジミに痛い!」

ルルは最近冗談が通じないなあ・・・歳か?
あ、いや自分も同じだったわ、双子だったよブーメランだった!

「それよりさすがにアークとノアはいないか・・・。帰ってきたばっかりだもんなあ・・・」
「当然でしょ。あの大公家家族だよ、構い倒されてるに決まってんじゃん。アークそっちのけで構われてヤキモチ焼いてるよきっと」
「あーあー、有り得る。目に浮かぶようだぜ」
「そうなんだけど、良いからほらお兄、さっさとギルマスに声かけて観光しようよ! 皆の邪魔になるから」

よく見るとギルド内の皆が二人を凝視していた。

特に受付の灰狼の若い子がガン見していて、隣の黒狼の先輩らしい子に小突かれていた。

ギギとルルは顔を見合わせてからスタスタとその受付に向かって歩いて行った。

受付はちょっとザワついている。
黒狼の方はあちゃあ、というように額を押さえて、灰狼の若い子は目が爛々としていた。

面白えな。
ギギはニヤリと笑い、ルルは黒狼と同じように額を押さえていた。

「よお、俺達はギギとルルっていう魔人族の冒険者だが、ギルマスに会えるか? ああ、俺達はアークとノアの連れだが、たぶん昨日の門のところの騒ぎ知ってるだろ?」
「はい! 存じております。アルカンシエル様とノア様と一緒にいらっしゃったAランク冒険者様ですよね?! ギルマスは今、執務室にいらっしゃいます。確認を・・・・・・大丈夫だそうです。そちらで職員がご案内致します」
「おう、ありがとうな」
「ありがとうね」

そう言われてひらりと手を振って移動する。

背後でザワついているのが分かったが、振り返らなかった。

さっきの受付の子達、なんかウチら兄弟に何となく似てたな、なんてルルが思っていた事にギギも気付いていたが、さすがにツッコまなかった。


盛り上がる子を宥め窘める先輩。
・・・騒ぐギギと苦労性のルル。

立場が似ていると、黒狼の先輩も思って苦笑していた。


ギルマスの執務室に入ると、ギルマスがカロンだと挨拶をしてきたのでこちらも名乗り返す。

「単刀直入に言うと、俺達も『見守り隊』に入っているから何かあれば協力は惜しまないっていうことだ。ノアとは友人関係だしな」
「そうそう。だから遠慮なくどうぞってコトです」
「---そいつは助かる。その時は遠慮なく頼ろう」
「ヨシ、じゃあ用はそれだけなんで、後はぶらぶらと街を歩いてと。クエストボードに良いのがあれば受けても良いな」
「じゃあ、お邪魔しました」
「おう、またな!」


それからしばらくして色んな噂が飛び交った後、ギルドの訓練所でアークとノアのエキシビションマッチを行うと聞いた二人が面白そうだと準備に加わって特等席を用意して貰ったのは内緒である。




※アーク達と別れたあとのギギルル兄弟の足取りでした。






しおりを挟む
感想 1,184

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~

空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。 どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。 そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。 ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。 スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。 ※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...