迷い子の月下美人

エウラ

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225 心折れた魔法騎士達のその後

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---あの日、俺達は地獄を見た。



俺達は竜王国の誇り高き魔法騎士団員。
エリートだ。

近々、我らが敬愛するヴァルハラ大公家のアルカンシエル様が帰国なさるようだと聞いて心浮かれていた矢先に耳を疑うような噂の数々を聞いた。

「あのアルカンシエル様に番いが出来たらしい」
「番いを連れて帰るって事か?」
混血ミックスらしいぞ」
「混血?! 何処と何処の?」
「竜人と兎人って聞いた」
「・・・混血ってだけでも腹立たしいのによりにもよって兎人?! 淫乱兎ってヤツだろう?! もしや色仕掛けで誑かしたな!」

俺達が食堂でわいわいと騒いでいると。

「・・・・・・そんなわけ無いだろうが。そもそもあのアルカンシエル様がそんな手に堕ちるか?」
「有り得ないね。逆にアルカンシエル様がグイグイ押したんじゃないか? あの方、番い認定したら絶対逃がさないだろう」
「うんうん。上手いこと言いくるめて囲っちゃって速攻番うよな」

側で聞いていた他の騎士が胡乱げに言い、他の騎士もアルカンシエルの事を良く分かった風に言うも、聞く耳持たず。

この辺りで若い騎士やまだまだ独身の番いがいない騎士達と、番い至上主義者や実際に番いのいる者とに意見が割れた。

何となくそんなギスギスした雰囲気の中、新たに齎された噂で更に意見が二分化されてしまった。


つい先日、要塞都市ライズの近辺で定期的に行っていた魔物討伐時にスタンピードが起こり、アルカンシエル様とその番い二人で制圧したというもの。

我らが魔法騎士団の団長と第1部隊が加勢して後処理を行っていたが、戻ってきて報告された情報に疑惑を持つ騎士達が多数いたのだ。

実際に本当のことなのだが、番い・・・ノア様と言うそうだが、彼にそんな実力は無いんじゃないか、Sランクと言っているが寄生してランクアップしたんじゃ無いかと。

そもそも最初の段階で思い込みが激しかったのだから、幾らでも自分達の都合の良いように解釈するだろう。


その後セイクリッド・リョーゼンに到着したらしく、リュカリオン殿下との騒動があったり、番いの噂が更にとんでもない話だったり。

「金竜?」
「何が?」
「アルカンシエル様の番いだって」
「はあ?! そんなわけ無いだろうが! 絶滅したって噂だろう?!」
「でも冒険者達が、下界の迷宮で目撃してるって・・・!」
「見間違いだろう! いるわけ無い」


---これは竜王国に帰国したら荒れるぞ。
まともな魔法騎士団員達は胃の痛くなる思いだった。

「・・・実際のところ、どうなんだ?」

番い肯定派の騎士達は食堂にいた第1部隊の騎士達に聞く。

「まあ、本当だな。ノア様の親の竜人はどのような方かは知らないが、間違いなく黄金色の翼だった。俺達は要塞都市で実際に目にしているからな」
「じゃあ、やはり強いんだな?」
「・・・アルカンシエル様よりも強いと思うぞ」
「---マジ?」
「まあ、ウチのアルバトロス団長よりは確実に強い」

そう言ったのは第1部隊の部隊長のカナンだ。

「魔法の使い方がそもそも規格外。無詠唱で多重魔法を展開してついでに殲滅魔法もガンガン使ってた。なのに魔力切れ無し。結界だってアルカンシエル様でも破るの一苦労だろうな」

副部隊長のスレインも追加情報を出す。
それを聞いた騎士達は無言になった。

「・・・魔法以外は?」

他の騎士がぽつりと聞いた。

「言わずもがな。あんなに細くて折れそうな見た目の何処にそんな腕力が?!ってくらい。ケーキでも切ってるのって感じでスルスルと一刀両断してたな」
「見た目を裏切る強さ」
「儚げ美人で可愛らしくて、人見知りだからいっつもアルカンシエル様の背中に隠れてぴるぴる震えてて」

カナンを始め、第1部隊の騎士達が口々に情報を出してくるが・・・。

「・・・おい、ちっとも想像出来ないんだけど?! 何その情報。可愛いのか?!」
「むっちゃ可愛い。ああ、そういや、俺達こっそり『ノア様とアルカンシエル様を見守り隊』結成しててなあ・・・」
「なにそれ、なんでもっと早く言わんのだ!」
「入る入る!」

向こうでノアの悪い噂話を悪意を持って広めている騎士達を尻目に、『見守り隊』で盛り上がる番い肯定派の騎士達。

ここで明暗が分かれたとも知らずに悪口で盛り上がる番い否定派の騎士達だった。



やがて鍛錬場で集団私刑を企てるも、逆に嵌められてノアの憂さ晴らしという実力行使にあい、まさに地獄を見たのだった。


何がエリートだ。
血筋なんて何の役にも立たない。

完敗だった。
相手にもならなかった。

一周回って吹っ切れた俺達は、真面目に鍛錬に取り組むようになった。
上には上がいる。
アルカンシエル様も敬愛しているが、ノア様は別格だ。

あんなにお強いのに可愛らしいなんて!!

もちろん、懸想ではない。
断じてない!

我ら竜人は、やはり強き者に憧れるのだ!
(注・全ての竜人が脳筋そうとは限らない)

だが強き者の次に可愛いモノも好きだ!!
(注・概ねあっている)

今はひたすら、ノア様への懺悔と鍛錬に時間を費やし、いつか許しを得て『ノア様とアルカンシエル様を見守り隊』に入隊させて貰うのだ!

「「「おお---!!!」」」


でもノア様の姿をお見かけする度、ちょびっと震えるのは許して下さい・・・・・。





※サイドストーリーが続いてます。スミマセン。
お付き合い下さいませ。



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