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198 閑話 バレンタインの日
しおりを挟む※バレンタインデーにちなんで、ほのぼのとした話をひとつ。
竜王国に着いて数日後、アークと冒険者ギルドに向かう途中、やたらとチョコを使ったお菓子が目に付いた。
「ねね、アーク。なんかチョコ系のお菓子とか多い気がするんだけど・・・何で?」
「ん? ・・・・・・ああ、バレンタインデーが近いからな」
「・・・・・・バレンタインデー・・・・・・って、何?」
「え? 知らないか? 年に一度、好きなヤツにチョコを渡して告白するんだよ。チョコじゃなくても良いらしいが、なんかチョコを流行らせようとして出来たイベントとか何とか?」
「---へえ、そういえばあの街でもそんな日があったかも? ・・・・・・それなら、アークは貰ったことありそう」
「・・・・・・あー、まあ・・・・・・?」
・・・・・・それって受け取ったのかな?
なんかモヤモヤする。
むーっと口を噤んでしまったノアを見て、ヤキモチかな?とちょっと嬉しそうなアーク。
「ちなみに、一月後に、貰ったチョコのお返しをする日がホワイトデーって言う。まあ、基本、好きな相手じゃなきゃお返しはしないかな。義理チョコって言うのがあって、仲の良い人や職場の人に配ったりするから」
「ふーん」
上の空の返事のノアに、ちょっと心配になったアークは言い募った。
「俺んちにもいっぱい送られて来たけど、返事返してないからな! 今まで誰にもあげてないし俺自身は受け取ってないからな!」
「・・・・・・うん」
ノアー?!
その日は結局、ノアは上の空でアークの事にもあまり反応がなく、皆に心配されていた。
アークが説明すると皆は訳知り顔になり、心配ないと太鼓判を押した。
「え? え? 何で?!」
「お前もまだまだ若いねえ」
「何の事?!」
「恋愛初心者」
「はあ?!」
訳も分からずキョトンとするアークに皆が生温かい目で接してくるので、アークはイラッとした。
それから更に数日後のバレンタインデー当日、心なしか朝からソワソワしているノアを見てちょっとドキドキしているアーク。
ウラノス達が見守る中、朝食後のデザートの時にノアがアークに綺麗な包装紙に包まれた箱を手渡す。
「ア、アーク・・・!! あの、初めて逢ったときから、大好きです。チョコ、受け取って下さいっ!!」
「・・・・・・え? 良いのか?! 嬉しい・・・ありがとう、愛してる!」
「それで、その・・・ちょ、チョコと、俺・・・どっち食べる・・・?」
「---は?」
どっちって、どっち?!
ノアは顔を真っ赤にしている。
アークはポカンとしている。
ウラノス達はしてやったり、という顔をしていた。
---あんた達か、ノアにヘンな入れ知恵したのは!!
いや、嬉しいけどさ!!
良いのかこんな朝イチで?!
俺もう暴走しちゃうよ?!
「どっちもに決まってるだろ?!」
ノアを抱えて速攻部屋に戻ると、チョコを食べながらお互い生まれたままの姿になって、貪るように愛し合った。
ノアのお手製チョコにはお酒が入っていた。
例のミドガルズオルムの酒である。
滋養強壮効果のあるアレである。
当然ビンビン(笑)でがっついたアークに抱き潰された。
翌日まで離して貰えなかった。
アークは艶っつやの肌で絶好調だった。
ポーション飲んでも動けないノアは、来年はお酒は止めようと誓ったのだった。
ウラノス達は、数日前、ノアから相談を受けて色々な案を出していたのだった。
しかし、さすがに抱き潰されて申し訳ないと思い、来年は裸にエプロン姿を薦めるのは止めようと思ったのだった。
そういうウラノス夫夫も、若いときには裸エプロンで燃え盛ってアンジェリクを抱き潰したのをまるっと忘れていたのだったが・・・。
なんにしても番い同士は燃え上がりやすいと言うことで・・・。
何をしても結果は変わらないと思うのだった。
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