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206 竜王陛下への奏上 1
しおりを挟むアルカンシエルから詳しい話を聞いた日から5日後。
謁見を申し込んでからかなりの速さで謁見の予定が組まれた。
何時もお忙しい陛下にしたら最速の謁見だろう。
「ヨシ、衣装もバッチリだし、今日の謁見は父上も同行するから、心配要らないぞ。ああ、ヴァンは留守番な」
『フン、呼ばれても行かんわ。肩が凝る』
「ははは」
「俺、礼儀作法とか大丈夫かな?」
「ノアはちゃんと出来てるよ。お爺さんに教わったんだろう? 自信を持てよ」
「---うん。まあ、心配ならアークの真似をするね」
「それで良い」
「ほら、行くぞ!」
義父様が玄関ホールで待っている。
急いで向かう。
「「「気を付けて」」」
「行ってくるよ」
「「行ってきます」」
王城までは馬車で10分程度。
大公家だからか、王城に近い土地に邸がある。
馬車に揺られてゴトゴト。
「別に歩いて行ける距離なんだけどね。形式上とか護衛とか、貴族は色々と面倒でねえ」
「ほんっと、面倒くさいよな」
心底面倒臭そうに言う二人にさすがのノアも同情した。
「・・・ご苦労様です」
他人事のようなノアに二人は苦笑する。
「ノアちゃんもゴメンね、面倒くさい貴族の仲間入りで」
「あっいや、別にそういうのは・・・特には。どっちかというと、家族が出来て嬉しいって方が強くて・・・」
「ノア、俺も嬉しい!」
「うんうん。ああ、そうだ。今日は謁見と言うが、アルカンシエルの番いの紹介という体で、その後、陛下の私室で例の話をするから、心配要らないよ」
それを聞いてノアがほっとした。
実は結構緊張していたのだ。
竜王陛下と謁見という事自体、本来なら有り得ない生活を送っていたのだから。
「そうなんだね。良かった」
「・・・・・・たぶん、ノアも気に入られると思う」
「? そう? 『ウチの大切なアークにどこの馬の骨とも知れぬヤツが!』って言われるんじゃないかと思ってたけど?」
「ないない! 竜人の番い至上主義はそんなに甘くない。どんなヤツが相手だろうと、番いを貶すヤツには地獄を見せてやるくらいの気持ちだぜ」
「竜王陛下も番い至上主義者だから、受け入れこそすれ、文句は絶対に言わない。(一部、バカな貴族共はいるけどね)」
「? そうだったら、良いんだけど」
アークとウラノスは目でチラッと合図を送る。
---今日の謁見で、その一部のおバカ貴族共がきっとたくさん湧いて出る。
今までのらりくらりと躱されて煮え湯を飲まされてきたが、今度ばかりは・・・・・・。
ノアには悪いが、引き金になって貰う。
コレはノアの安全のためでもあるのでアークに了承済みだ。
アークもノアの危険排除の為に二つ返事で請け負った。
ノアに話を通そうかと言ってみたが、ノアなら二つ返事で、何ならもっとヤバい感じになるだろうから、こっそりやった方が良いというので。
・・・・・・もっとヤバいって・・・どんな感じにヤバいの?
義父様、怖くてガクブルしちゃったよ。
それはともかく、まあ、別案でノアの憂さ晴らしを計画中らしいので、静観している。
何かあれば遠慮なく協力するとは言ってあるが、何やらルドヴィカが一枚噛んでいる模様。
---大丈夫かな?
ルドヴィカは愉快犯っぽいところがあるからなあ・・・。
謁見前からちょっとお疲れ気味なウラノスだった。
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