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196 ノアは構い倒される 2
しおりを挟む「疲れたか?」
部屋に戻るなりアークが聞いてきた。
それに首を振って応える。
「大丈夫だよ。皆、とっても優しい感じだし。手紙の映像と同じでびっくりしたけど」
そういって、思い出したのかふふっと笑った。
アークも一安心だ。
「いやあ、邸じゃ何時もあんなテンションなんで、引かれて嫌われるんじゃないかと気になっていたらしい」
「・・・・・・あー、うん。門の時のテンションでずっといられると辛い・・・かな。・・・・・・慣れてないんだ。あんな、良い感情で迎えられること、ほとんど無かったから・・・」
だから、少しづつ・・・かな。
そういってアークにギュッと抱きついた。
「---あー・・・、やっぱり、ここが一番安心する」
そう呟いてアークの肩に頬をすりすり。
アークは思わず『ぐうっ』と呻いて堪えた。
目の端にルフトの面白がった顔が見えたが、知らんぷりをした。
そのまま暫く二人(ヴァンはアレからずっと寝ていた)きりで他愛ない話をしていたが、晩餐だと声がかかって食堂に移動した。
忙しいだろうにヴァルハラ家全員が揃っての晩餐に、大勢の家族団らんに密かに憧れていたノアは感激して、普段はアークにも止められているお酒をいつの間にかグイグイ呑んでしまったようで・・・。
アークがマズいと止めたときには、かなり酔ってしまって、色気ダダ漏れ状態だった。
慌ててウラノス達に詫びを言って中座して、足早に部屋に戻っていってしまった。
残されたウラノス達は・・・。
「「---あー、ヤバかった・・・」」
「うん。番いのいる私達でさえ、くらっときた」
「・・・ウム。兎人の血のせいなのか、アレでは襲ってくれと言わんばかりだなあ。無自覚なのが余計に・・・」
「これから、ノアちゃんにはお酒は控えようね。アークも分かっているらしいし」
「---下世話な話だが、この分では明日は午後の予定を繰り下げて夕方近くにするべきだな」
「「「・・・あー、うん・・・・・・」」」
アレでは今夜は抱き潰されて起きられないだろう。
大丈夫かな、ノア。
いくら竜人が強いとはいえ、ノアの見た目は儚げ美人だ。
実際は見た目詐欺だが。
案の定、起きてきたのはお昼ご飯を過ぎた頃。
空腹を訴えたノアに、テラスでせっせと給餌をするアークの姿に邸中の者が微笑ましそうに視線を送っていた。
ノアは給餌にすっかり慣れて、雛鳥よろしく口を開けてはもっくもっくと食べていた。
それを蕩けた笑みで満足げに見つめるアーク。
執事長を始め、手隙の使用人達がわらわらと集まって遠くから見守っていた。
「---本当に、ようございました」
「こんなに早く番いが見つかって、あのような姿のアルカンシエル様を拝めるなんて・・・!」
「あの他人への無関心さは何処へ行ったのでしょう?」
「何時もの冷たい表情が蕩けてるよ」
「番いって、本当にあんなになるもんなんだねえ。ウチの両親ぐらいかと思ってたよ」
「・・・・・・シルヴァラ様、お仕事はどうされたのです?」
「ええ? ちゃんと終わらせてきたよ! だってせっかくのノアちゃんの衣装合わせに居なくてどうするの!」
「・・・・・・アルジェント様も?」
「当然だ!」
「---そのベクトルをもっと仕事に持っていって下さればさっさと片付くのに・・・」
ハア、と遠慮なく溜息を吐くアヴィール。
・・・ウラノス様の側近のレーゲン様の苦労が偲ばれます。
この分ではウラノス様もアンジェリク様もそろそろやって来そうですね。
では先に衣装合わせの部屋に誘導しておきましょうか。
楽しそうに食事をなさっているお二人の邪魔をせぬよう、さっさと引き連れて行きますよ!
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