迷い子の月下美人

エウラ

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188 神聖な霊山の冒険者ギルマス 2

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翌日、昨日の後始末を終えて、主に精神的な疲労を抱えて戻って来たギルドの執務室で待ち構えていたのはトンデモな情報ニュースで。


「ギルマス、お疲れ様です」
「・・・・・・ああ、連日すまんな、エライザ」

サブギルマスのエライザは俺の幼馴染みで黒狼の獣人だ。
若いときは良く二人で無茶をしたモンだが、今はお互い、重要なポストについていて丸くなったように思う。

そのエライザが少し言い辛そうな様子で俺を窺っている。

「・・・・・・何だよ? ここは今俺達だけだから普通にして良いぜ。何かあったのか?」
「---じゃあ、うん・・・・・・。お前に立て続けにダメージを与えるような事がな・・・」

はぁ、と溜息を吐いて切り出すエライザ。

「先ほど、迷宮の門の担当職員から入った連絡なんだがな・・・」
「・・・・・・何かいやーな予感しかしないんだが」

めちゃくちゃ眉間にシワを寄せていたんだろう。
エライザが苦笑していた。

「あー、うん。えっと、心して聞いて欲しい」
「・・・ああ」
「迷宮に来たアルカンシエル様達が齎した情報が突拍子もなくて・・・」

曰く、迷宮の門の魔導具を作った大賢者様を『ラグ爺さん』とさも身内のように軽く言ってたり、そこから転移云々の話が出たと思ったら何故か『精霊王』の話題になり、そこでさらに『精霊王』を召喚して世間話を始めて、なおかつアルカンシエル様とノア様は『精霊王』の『義息子』だという事が分かって・・・・・・?!

「---はあああぁ---!!?」
「・・・ってなるよな、って話・・・」

二人して執務室のソファにぐったりと沈んだ直後・・・。

「ギルマス! サブギルマス! った、大変です・・・!!」
「---今度は何だよ?!」

駆け込んで来たギルド職員が転がる勢いのまま扉をバンッと開けて叫んだ。

「き、きき、金竜です!」
「・・・は?」

今、何か聞き間違えか?
って聞こえたんだが・・・?
思わずエライザを見ると首を振られた。
・・・ええと?

「伝説の金竜が現れました!! 迷宮内です! アア、アルカンシエル様の番い様です! ノア様です! ノア様の翼が金色でした---!」
「・・・・・・はぁ?! え? まじで?!」
です! 目撃者多数です!」

---聞き間違いじゃ無かった・・・。
エライザも渋い顔だ。

「---クラウド・・・」
「・・・エライザ・・・コレって、竜王国に報告案件だよなぁ・・・」
「・・・・・・そうですね。少なくともヴァルハラ大公家には報告しないとマズいでしょうね。彼の方々が何処まで御存じなのかはともかくとしても」
「・・・・・・だよなぁ・・・クソ、何て情報が立て続けに来るんだよ!」

マジ止めて欲しい。
クラウドは胃を押さえて呻いた。


聞いた傍からどんどん情報が入ってくる。
仕方なく一つ受付窓口を潰してアークソレ関連に対応する。

ある程度・・・いや、ほとんどの話は真実だったが、纏まった時点でヴァルハラ大公家に通信して情報を送った。

それによると、ノア様が金竜の血を引いていることはすでに御存じだった模様。
大賢者の件も予想通りといったところか・・・。
ただ精霊王の義息子と言うのは初耳だったらしく、嬉しいのか困ったのかよく分からない雄叫びを上げていたのが印象に残った。


結果として分かったことは・・・。

ノア様は金竜と黒兎人の混血ミックスであるということ。
義理の親が大賢者と精霊王らしいこと。

字面を見ると凄えな・・・。
これだけでもヤバいんですけど?!


『あとは追及しないでおいてくれると助かるよ』

そう言われればこちらとしても『是』のみ。

藪蛇はまっぴら御免である。



こうして長い一日はまだまだ続くのであった。










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