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175 神聖な霊山で暫し心の洗濯 1
しおりを挟む控え室に案内されたアーク御一行様。
「今、お茶を煎れますのでお待ち下さい」
案内してくれた門衛がそっと部屋を出て行ったので、ノアは何となく手持ち無沙汰で、お手製の焼き菓子を出してテーブルに置いた。
「・・・お茶、どうする?」
「んーまあ、持ってくるみたいだから良いんじゃないか。それにウチの家から誰か来たら飲んでる余裕は無いと思うぞ」
「・・・どういう意味?」
「そのうち分かる」
少しして門衛がお茶を持ってきてくれたので、ノアが飲んでホッとひと息吐いていたら。
「久しぶりだな、アルカンシエル!」
「ぴえっ?!」
急に扉をノックと同時に開けて入ってきた人にビクッとして、ノアが持ってたカップを落としそうになった。
いや実際、驚きすぎて手から放り投げた。
アークが慌てて受け止めてソーサーに置くと、ノアを抱きしめながら入ってきた男をぎっと睨む。
「ノックの意味が分かっているのか、リュカリオン! 何故お前が来る!!」
「そんなに睨むなよ。久しぶりにはとこ殿が戻ってきたと連絡を貰ったので私が来たまでさ」
「---そんなに暇なのか、リュカリオン殿下」
「「---へ?」」
「・・・・・・」
アークの言葉にポカンとしたギギルル兄弟とぴるぴる震えるノア。
ノアは久しぶりに人見知りを発動していた。
ここ暫く、ギギルル兄弟以外に会う人がいなかったのだ、雪のせいで。
なので人見知りがぶり返した。
アークと旅をしてだいぶ感情豊かになった分ぴるぴるが表に出るようになって、不意打ちだとぴるぴるにガタガタがつくようになってしまったのだ。
今のノアはぴるぴるしつつガタガタ震えてアークにしがみついている状態だ。
おまけに半べそをかいている。
アークがガチギレしそうだった。
「・・・命が惜しくないようだな。俺の番いを怯えさせて、どうなるか分かってるんだろうな?」
「---まままま待て! 話せば分かる!」
「---覚悟は良いな?」
「はいはい、覚悟は要らないよ。ノア殿はヴァンをもふもふしてね。アークはちょっと腕を緩めてやりな。ノア殿が苦しそうだぜ」
「は」
「え?」
「ほあ?」
「「・・・・・・へ?」」
『・・・ノア、ほれ、存分にモフれ』
開いたままの扉から不意に現れたルドヴィカがひょいひょいとノアに仔狼サイズのヴァンを渡してからアークの頭をべしっと叩き、リュカリオン殿下と呼ばれた竜人を首根っこを掴んで下がらせた。
無意識にヴァンをもふりはじめて落ち着いてきたノアにホッとして、アークもようやく冷静になったようだ。
「・・・・・・悪い。血ぃのぼった。助かった、ルドヴィカ」
「なんの、お前の扱いは慣れてるし。・・・それより殿下! 何してくれちゃってんですか? 下手したら神聖な霊山消滅してましたよ! 勝手が過ぎます!」
ルドヴィカがガチで説教している。
・・・相手はたぶん竜王国の王子なんだよな?
良いのか?
大丈夫なのか?
ルドヴィカを知らないギギルル兄弟はハラハラしながら見つめていた。
「---いや、悪い。番いでまさかこんなにも様子が変わるとは・・・すまん、アーク。調子に乗った」
「私こそ申し訳ございません、殿下」
「ここではただのはとこで接してくれ。ノア殿も申し訳無かった」
「・・・・・・驚いただけで・・・大丈夫、デス・・・」
ぎこちない言葉のノア。
まだちょっと動揺しているようだが、さっきよりはマシだ。
「とりあえず、座りましょうか」
ルドヴィカが仕切ってくれるようだ。
「まず、殿下が何故来たのか、お話ししましょうか」
そういってルドヴィカがニヤリと笑った。
反対にリュカリオンは顔色を悪くした。
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