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156 出立の準備をしよう
しおりを挟む美味しい朝食を食べたあとは、ヴァンも連れて散策だ。
街中、新年で賑やかな様子だった。
どこの街でもやることはあまり変わらないんだな、とノアは思いを馳せた。
そんな事を考えながらぼうっと歩いていたせいか、慣れないせいか、ノアは雪に足を取られてずるっと滑った。
「---っぅわ!」
「っノア・・・!」
アークが繋いだ手をとっさに引っ張って転倒を防いだが、ノアの足元が覚束ないのに気付いてそのまま抱え上げた。
「・・・アーク、あの、ありがとう。・・・・・・歩くよ?」
「昨夜の疲れがまだ残ってんだろう? このまま抱き上げられていろ」
「---!! ぅん・・・」
ニヤリと笑われて顔を赤くしたノアが小さく頷いてアークの首に縋って顔を隠した。
---可愛いなぁ、もう。
ご機嫌なアークに抱っこされて昨日の広場に向かえば、夜通し騒いでいたのか、かなりの人で賑わっていた。
「・・・元気だね」
「ああ、逞しいな。まあ、そうでもなきゃ生き残れないからな」
「もう少し過ごしやすくなると良いね」
そんな事を話していたら、こちらも夜通しいたのか、冒険者ギルドのギルマスであるサルジェが向かって来るのが見えた。
「---あー! お前ら!! 呑気に顔を出しやがって!」
「何がだ?」
アークがしれっと応える。
「分かってるくせにすっとぼけたな?!」
「ギルマス、言葉が乱れてる」
「---誰のせいだと・・・! あ、いや、もう良いわ。昨夜の後始末で疲れたわ・・・」
ガックリと肩を落とすギルマスに、自分のせいだよなと、ノアが謝った。
「ご、ごめんなさい」
「うんうん、もう諦めたから良いよ。祭りは楽しめたかい?」
「はい、とっても。綺麗でした」
空に昇る灯籠も、その後の花火も。
忘れられない一日だった。
「それは良かった。ここには何時まで滞在予定なんだい?」
「明日まで泊まって、明後日の朝、発とうと思ってる。今日はのんびり過ごすさ」
「そうか・・・まあ、祭りが終わればここは大したものがないしな。これからひと月は深い雪に閉ざされる。ここから先はもっと雪が深くなるから、準備はしっかりとな。あと、領主様にも顔を出してやってくれ。さすがに邸に戻っているから」
「ああ、ありがとう、そうするよ」
お互い、和やかに笑って別れ、領主邸に向かう。
街道は魔導具で溶かされて雪が少なくなっているのに、アークが降ろしてくれない。
「俺が抱っこしたいの」
「・・・ぅえ、うん・・・」
降ろしてという前にアークにそう言われては是しか言えない。
ノアもアークに甘々なのだった。
そのまま歩いて領主邸に着くと、門番が速やかに対応してくれて、あれよあれよという間に応接間に通された。
さすがにノアは歩いて行ったが。
「やあ、新年、おめでとう! 鎮魂祭とお祭りは楽しめたかい?」
「昨夜の花火は凄かったね。ノア殿だろう? 私は邸にいたが、皆、外に出て大盛り上がりだったよ、ありがとう!」
応接間に着くなり、ギーヴァ夫夫がそういって出迎えてくれた。
「ご迷惑ではなかったですか? その、大騒ぎになってしまったようで・・・」
ノアが恐縮して言ったが、2人はケロッとしていた。
「まあ、盛り上がって何時もより騒いだだけさ。寧ろ盛り上げてくれてありがとう。皆、今年はやる気満々で過ごせるさ」
そういって喜んでいたので本当なんだろう。
それならば良かった。
「それはそうと何時まで滞在予定なんだい?」
「先ほどギルマスにも聞かれましたが、明後日の朝、出立します」
「じゃあ、準備をしっかりしないと。雪の事はギルマスに聞いた?」
「ええ。なので、今日と明日は準備がてらのんびり過ごす予定です」
「そうか。じゃあせめて、発つ前にヴァルハラ大公家に連絡を入れてあげて」
「そうします」
アークが苦笑して返事をした。
その後は雑談をして、領主邸をあとにした。
何だかんだで必要なモノを購入したり店を覗いたりして夕方になり。
宿で晩御飯の時にギギ達とばったり会ったので、一緒に食べながらお互い今後の話をしようということになった。
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