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連載
144 窓越しの六華
しおりを挟む急いで宿に戻ると、アークの頭やノアのフードにもうっすらと雪の華が散っていた。
それを宿の軒下で払うと中に入る。
まだ夕方だがすでに宿泊しようとする客で受付がいっぱいだった。
雪が降り出したのと鎮魂祭目当ての宿泊客なのだろう。
ここは貴族向けの高級宿だからか客層も富裕層が多いようだ。
そんな中に一級品だが明らかに冒険者の装備の二人組(+α)が入り込んだモノだから、宿泊希望の一部の客らしき男が声を荒げた。
「おい! そこな冒険者風情が何故ここに泊まるのだ?! 其奴らを追い出して代わりに私を泊めるべきだ! 冒険者など安宿で十分ではないか!!」
それに便乗したのか、数人が賛同して騒ぎ出したのを冷めた目で見るアークと宿の従業員、それと貴族らしき客。
「・・・・・・やれやれ。コレだからモノを知らぬ輩は・・・。このような辺境地では冒険者が騎士や傭兵の方々と協力して魔物を討伐し、我らの安全を護ってくれておるというのに・・・」
わざと声を大にして、騒ぐ男に聞こえるように言う貴族の男性。
それに頷く周りの客と従業員。
それを聞いて顔を真っ赤にさせて怒鳴ろうとした迷惑な男を無視して、その貴族はアークの元へ歩み寄った。
それを一瞥してアークが声をかけた。
「久しいな、ラウエル卿。何時こちらへ?」
「ご無沙汰しております、ヴァルハラ大公子息様。つい二日前でございます。鎮魂祭の時期は毎年こちらに滞在しております故」
サリエリ・ラウエルは竜王国の貴族で侯爵だ。
夜会で何度も会っている顔馴染みである。
「そうか。ああ、私の事はアルカンシエルで良い。ここでは冒険者だからな。こちらは私の番いでノアと言う」
「・・・ノアです」
アークに抱き上げられたまま、人見知りを発動してしまい、名前しか言えなかったノア。
「すまんな、人見知りで。父達にもまだ紹介出来てなくてな・・・」
「まあ、それはそれは・・・! 次に大公閣下にお会いした時に自慢できます。ノア様ですな。大変お可愛らしいことです。・・・そういえば、領主様にはお会いになりましたか?」
「ああ。それでここを紹介されたのでな、先に宿を取っておいたのだ。雪が降り出したので冒険者ギルドから今戻ったところだ」
そう話しているのを側で聞いていた迷惑な男は、顔を真っ赤から青白くさせた。
自分が喧嘩を売ったのがただの冒険者ではなく、この国の王位継承権を持つ大公家の子息だと気付いたからだ。
一緒になってがなっていた輩も真っ青になっている。
「ヴァルハラ様、お部屋の鍵でございます」
「---ああ、ありがとう。ではラウエル卿、またな」
「ええ、いずれまた」
従業員に礼を言い、ラウエル卿にも挨拶をして階段を上がっていったアーク達を見送った後の受付の前は阿鼻叫喚だったが、アーク達は与り知らぬ事だった。
部屋に入るとノアをソファに座らせてフードを下ろし、自分とノアの額をコツンと合わせた。
「・・・やはり体温が高い」
ぽそっと呟くアークに、ぽやんとしていて聞き取れなかったノアがコテンと首を傾げる。
「ノア、楽な格好に着替えようか」
そう言いながらアークはマジックバッグからポーションを出すと、口に含んでからノアに口付けて口腔内に注いで嚥下させた。
何度か注ぎ、ポーションが空になるときにはノアは下穿きだけになっていた。
ぽーっとしながらされるがままのノアにクスリと笑うと、アークはゆったりした服(アークの服)を着せる。
ノアはぽけっとしながらも嬉しそうに笑った。
---彼奴も同じ事をしておったなあ・・・。
甲斐甲斐しく世話を焼くアークを床のふかふかなラグの上に寝そべったヴァンが薄目を開けて見ていた。
ヴァンは竜人の番い至上主義は我らの番い至上主義に通ずるモノがあるな、と心の中で思っていた。
実はフェンリルも似たようなモノで、番いには貢物をこれでもかと贈り、甲斐甲斐しく世話を焼くのだ。
ヴァンは番った事が無いので今は他人事のように思っているが、番いが出来ればきっとこうなるのだろう。
---ノアが気にしないのだから他人が口を出す事じゃ無いな・・・。
お互い幸せなら、それが正解なのだろう・・・。
感じる幸せなど他人それぞれだ。
窓越しに見る六華は、街灯の薄灯りの中、ひらひらと嬉しそうに踊っているように見えた・・・。
※クリスマスイヴと言うことで、23時にもう一話投稿予定です。
R18です、注意。
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