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148 鎮魂祭と雪祭り 2
しおりを挟む街はお祭りムード一色だった。
死者の魂を鎮める祭りと聞いていたが、どうも沈痛な面持ちでやるのではなく、亡くなった方も残された方も、悔いなく寂しくないように陽気に盛り上げるのだそうだ。
・・・と、屋台のおっちゃんが言っていた。
「あー、でも分かる気がする。残された方が何時までもぐずぐず嘆いていたら、亡くなった方は心配で来世に行けないと思うよ」
ノアが寂しそうに言った。
・・・お爺さんの事を考えているんだろう。
たった1人の家族を失って、嘆く暇もなかったのだろうが・・・。
強がって、独りでも大丈夫って自分に言い聞かせて踏ん張っていたんだろう。
「・・・きっと、お爺さんは安心して来世に向かっていったよ」
「---そうだな。ありがとう、アーク」
さあ、気分を切り替えて色々見てまわろうか。
途中で地元住民らしき人に声をかけて市場の場所を聞きながら辿り着いた。
道の両側にアーケードがあり、雪が積もっても通れる造りになっている。
そこでは冬に採れる野菜や果物が所狭しと並べられていて、真っ白い景色とは対称的に鮮やかな緑や黄色、オレンジ色などが異彩を放っていた。
「これ、野菜だよね? 凄い色してる。どんな味なんだろう?」
「ああ、果物も濃い色をしてるな。竜王国のよりも濃い色だ。味も違うのかな?」
「アーク、食べたことあるの?」
「うちの方も冬は寒いから似たような食物があるぞ。これなんかは色は濃いが俺も食べる果物だな」
そういってアークが手に取ったのはめちゃくちゃオレンジ色の柑橘。
「お兄さん、これ一つ」
「はいよ、50Gね」
アークは鉄貨5枚を渡してから、その場でナイフを出すとスルスルと皮を剥いた。
器用に房からカットしてノアの口元に持って行く。
「ほら、あーん」
「ん、あーん」
素直に口を開けるノアに笑って実を入れてやる。
もっくもっくと咀嚼して飲み込んでからひと言。
「甘い」
「・・・みたいだな」
顔を見てりゃ分かる。
キラキラした瞳で頬がほんのりと赤い。
気に入ったようだな。
アークは自分の指先に付いた果汁をペロリと舐め取った。
---うん、甘い。
濃厚だ。
やはり色の濃いモノが味が濃いのかな?
ノアに催促されるまま、綺麗に食べさせてアークは追加で籠ごと買っていた。
ノアは何やら、剥いた皮をとっていた。
どうやら使えるらしい。
「・・・うーん、香りを付けたり、油汚れを落とす洗剤にしたり・・・出来るかな? 後で錬金術で錬成してみよう」
ぶつぶつと呟いていたが、キリが良かったのか、ぱっとアークに抱きついて歩き出した。
「どうした?」
「ふふっ、せっかくアークとデートなのに錬金術とか考えちゃってもったいないなって・・・それにくっついていると、暖かい」
とても嬉しそうにはにかんだ。
「俺は別に気にしないぜ? ノアはノアらしく好きなことをして言って良いんだ。俺は何があってもノアから離れないし、裏切らないよ」
「うん、知ってる・・・でも俺がそうしたいんだ。アークと一緒に楽しくなくちゃね?」
楽しいことも辛いことも2人で分かち合いたい。
だって愛してるから・・・。
共に生きていこうと思っているから・・・。
アークはノアをぎゅっと抱き締めてから腕を絡めて、寄り添いながらのんびりと銀世界の街並みに消えていった。
※今回はたぶんまったりと話が進みます・・・たぶん。(2回言ったが・・・未定)
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