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146 噂の二人+α(sideノーザンクロス冒険者ギルド)
しおりを挟むその二人がギルドに足を踏み入れた途端、空気が変わった気がした。
・・・いや、実際変わったんだろう。
気付いた者達が波が引くように静まり返っていき、その二人を注視していた。
「---おい、アレ・・・」
「・・・まじ?」
「・・・・・・Sランクのアルカンシエルさんとノアさんだ・・・! 凄え!」
「え? え? 来たばっか?!」
などと、要塞都市での出来事がこちらにもすでに広がっていて冒険者ギルドのみならず街中が二人の事を知っていたのだが、そんなこととは露知らず、二人はいつも通り視線をスルーしていた。
珍しくフードを下ろしてキョロキョロと辺りを興味深そうに眺めているノアを見て皆がほっこりしている。
決して小柄では無いのだが、どう見ても小動物の動きだ。
コレだけ見ると本当にSランク冒険者なのか疑わしい。
そんな感じで周りが注目する中、受付に声をかけるとギルマスの執務室に消えていった。
途端、ギルド内にざわめきが戻った。
「・・・凄え! 俺、初めて見た!」
「この街じゃ初めてだよなあ」
「たぶん今まで来たことが無かったよね?」
「アルカンシエルさんカッコいい!」
「ノアさん、美人で可愛い!」
などなど。
ギルド職員達も密かに興奮していた。
当然、このギルドも例に漏れず『ノアとアークを見守り隊』に全員加入している。
他の街のギルド職員達からも逐一報告を受けていた。
「格好良かったねえ」
「可愛いかったねえ」
「アルカンシエルさんのフードにいたフェンリルのヴァンさん、見た?」
「見た見た! 可愛いねえ!」
「---でも、ノアさん、ちょっと聞いてた感じと違って無かった?」
職員の一人がそう言ったので、ちょっと考えてみた。
「うーん・・・そういえば、情報だと人見知り凄くて良くぴるぴる震えてたって・・・」
「そうなんだけど、今日は心ここにあらず、見たいな、なんて言うか、注意力散漫な?」
上手く言えないけど・・・。
「---あ、アレだ! ほら、君が熱出すときにぽへーっとなる感じに似てる!」
「・・・ああ、頭がぼーっとしてふわふわするヤツ・・・って、え? もしかしてノアさん、体調悪かった?!」
そんな会話をしていたら、早い時間に執務室から二人が出て来た。
ノアさんはアルカンシエルさんに抱き上げられている。
「邪魔したな」
そういって素早くギルドをあとにした。
「---やっぱり、体調不良かな?」
「ノアさん、何となく熱っぽい顔をしてたね」
「寒いもんねえ」
「さっき、雪降ってきてたよ?」
「ええ? あ、ホントだ! 積もりそう・・・」
他の職員達と仕事をしながらそんな会話をしていたらギルマスが来た。
「アルカンシエル殿とノア殿は帰ったか?」
「あ、ギルマス。はい、先ほど帰られましたよ。ノアさん、具合悪かったですか?」
「あー、うん。調子悪そうだって言うから、早く宿に戻るように言ったんだ。祭りも見ていくそうだし、何かあれば協力してくれるそうだ」
「そうですか、早く良くなると良いですね」
今のところ魔物も落ち着いているし、ゆっくり鎮魂祭を見られると思いますよ。
お二人のいちゃいちゃを間近で見られる機会ですからね!
楽しみです!!
「・・・・・・お前ら、ほどほどにな・・・」
ギルマスの呆れた声は職員達には届かなかったようだ・・・。
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