迷い子の月下美人

エウラ

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117 竜王国 魔法騎士団

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竜王国の魔法騎士団の団長らしいルドヴィカがアークに蹴り倒されて、周りの部下らしき騎士達に抱えられていた。

「団長、何やってんすか・・・」
「しゃきっと立って!」
「・・・お前ら、相変わらず俺への扱いがぞんざい過ぎる・・・・・・」

嘘泣きをしながら立ち上がった団長さんは、ホコリを叩いて落とすと、ノア達に向き直った。

「では、改めて。我らは竜王国魔法騎士団、団長のルドヴィカ・アルバトロスだ」

面倒だが立場上仕方がないので、格式張った挨拶を交わす。

「魔法騎士団員のエルリック・スタンです」
「同じくサディアナ・ルーリーと申します」
「アルカンシエル・D・ヴァルハラだ。Sランク冒険者もやってる。彼は俺の番いの・・・」
「・・・ノア・D・ヴァルハラ、です。Sランク冒険者で薬師マイスターです。あ、錬金術師も、です・・・よろしくお願いします」

ノアがアークに抱き締められながら挨拶をする。

ちなみにこんな状況でもノアは無詠唱で魔物を屠っている。
地上はアブソリュート・ゼロで一旦落ち着いたが、空中は相変わらずガンガン来ているので、ノアが凍らせたり雷撃いれたりと騒がしい。

それを気にも止めずに呑気に自己紹介をしている5人にポカンとしている冒険者達。

カオスである。

「---アークの番い殿、肩書きがハンパねえんだけど。魔導師ウィザードなの? 何なのそのデタラメな魔法の使い方・・・」

ルドヴィカが、うへえって顔で呟く。

---無詠唱で探索魔法を使いつつ、的確に大量の魔法を放っているのに普通に会話も出来るって、どんな思考回路してるんだよ。

アークがその独り言を無視してルドヴィカを促す。

「・・・で、用件は何だ? 奥の異様な魔力の塊の事か?」
「あ、気付いてたんだ? そうそう、それだよ。今朝、古の森に魔物を間引きに来たら、古の森から数キロ離れた場所に新しく迷宮ダンジョンが生まれててさ、慌てて知らせに来たわけ」

『新しい迷宮』と聞いて、周りはザワついた。

迷宮は魔力が凝り固まって自然発生するモノだが、ここ数百年近くは新たに生まれた迷宮の話は聞かない。

「あー、そのせいで魔物が溢れてるのか。迷宮の許容範囲を越えた分の魔物が森に出て来たんだな。じゃあ、元を叩かないと何時までも続くな」

アークが面倒臭そうに眉間にシワを寄せる。

「迷宮の中の魔物を減らさないとって事?」

ノアが疑問に思って聞いてきた。

「ああ、その後は何時もの迷宮のように出入り口を門で封印して管理するか、危険な迷宮だった場合は早々に潰す事になるな」

中を見ないと分からないが、利益の出る迷宮なら残した方が良いからな。

潰すのは、最下層に隠されている迷宮の核ダンジョンコアを破壊すれば良いんだが、壊すと元には戻らないから普通はやらない。

「どちらにせよ、そこは俺達が判断する事じゃ無い。ここの領主とギルマスに要相談だな。というわけで、ルドヴィカ」
「うえっ! 俺かよ」
「当たり前だろう。そもそも迷宮の第一発見者だろう。それに俺達は未だ討伐依頼を遂行中だ。まだまだ魔物が来るんだぞ。離れられないだろうが」
「---ちぇ、そうだよな。仕方ない、お前ら、行くぞ!」
「仕方なく無いでしょ、団長」
「とっとと仕事して下さいよ!」
「お前ら、ほんっとーに・・・もうやだ・・・」

ブツブツ言いながら冒険者ギルドに向かって翔んでいった。

「---ルドヴィカさん、面白い竜人ひとだね」

思わず呟いたノアにアークが笑った。

「アイツはお調子者で軽いが馬鹿じゃ無い。ちゃんと仕事はするから大丈夫だ。俺達はとりあえずこっちをやっつけようぜ」
「そうだね。第二陣が来そうだし。あ、冒険者の皆さん、怪我人が出てるかもだから、ポーションとか傷薬を持って行ってくれます?」

そういって巾着袋を一つ預けた。

「ギルマスに、好きに使ってくれって言っといて」

受け取った冒険者達は御礼を言って街の方へ降りていった。

「薬、役に立つと良いな。いっぱい作って置いて良かった」
「ふっ、ノアらしいよ」

お金とか利益とか何も考えない。
誰かの役に立つか、誰か助けられるか・・・ただそれだけ。

「俺がノアを護るからな」
「ふふ、何時も護って貰ってるよ」

いちゃいちゃしながら、再び討伐に向かうのだった。




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