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114 魔物討伐依頼
しおりを挟む「迷宮じゃ無いクエスト、久し振りだな」
ギルマス達との顔合わせの後に森狼や灰色熊を狩りに行ってからすでに5日目。
毎朝ギルドに顔を出してクエストボードをチェックしていたが、これといってSランクに依頼するような内容のモノは無く。
日々、防寒具用の素材収集を黙々と熟し、市場で食材を買いあさり、薬草屋や素材屋に通って薬草や素材を買ったり売ったり。
素材もかなり手に入ったし、宿の延長をどうしようかと考えていたところに魔物の討伐依頼が入った。
特に名指しはされていないが、そもそもSランク用の依頼の時点で分かろうもの。
今現在、要塞都市に滞在中のSランクはアークとノアだけなのだから。
「緊急ですまねえな。どうやら古の森の近くから湧いて出たようなんだが・・・。確認した冒険者によるとだなあ・・・」
「---ケルベロスが三体か」
アークが依頼票を読みながら呟いた。
どうやら古の森の方からこちらへ向かっているらしい。
「・・・ああ、一体でもヤバいのに三体確認されてる。もしかすると見えなかっただけでもっといるかもしれん」
「今までにこんなに現れた事は?」
「・・・無いな。そもそもケルベロスなんてヤツは少なくとも俺が現役でいた頃から今までに聞いたことはない」
「・・・・・・何か別の要因があるかもな」
アークがぽそりと呟くが、隣のノアにしか聞き取れなかったようだ。
「アーク、引き受けるんでしょ?」
「そうだな。腕も鈍りそうだし、良い運動になるだろう。受けるぜ」
「---動機が今イチ腑に落ちないが・・・助かる。いつ頃行ける?」
「今からでも行けるっちゃ行けるんだが、ちょっと宿に宿泊延長の手続きして装備を少し変えてくるから、そうしたらまたここに寄る」
「了解」
「住民の方は任せた。誰も壁の外には出すなよ。場合によってはノアの殲滅魔法が出るぞ。巻き込まれるからな」
というか、のっけから使いそうだな。
「・・・・・・マジか・・・・・・いや、ノアなら有り得るな・・・うん。人っ子一人出さないようにするわ。外に出てる冒険者達にはギルドタグを通じて連絡済みだから、戻り次第戦闘になる。それで良いか?」
「大丈夫だ。じゃあ、とりあえず宿に行ってくる」
そういってギルドをあとにした。
「・・・アーク、ギルドタグって緊急連絡とか出来るの?」
「・・・・・・ああ、ノアは初めてか? ギルドから何か連絡がある場合はタグが点滅して光るんだよ。青色が緊急レベル1で黄色が2、今回みたいな大事なときは赤点滅でレベル3。見てみな」
アークに言われて胸元を見れば、ほのかに赤く点滅している。
「大っぴらに光ると、魔物に気付かれたりするから、余程の緊急事態でもないと使われない。それだけ今回はヤバいって事だ」
「---分かった。俺、頑張るよ」
「頑張るのは良いが、無茶はするなよ。ノアに何かあれば俺が暴走するからな」
そうなったらこの街以外も消えるだろうけどな。
「---うん」
真剣な顔で頷くノア。
今回ははっきり告げたからさすがにノアも意味が分かったんだろう。
『黄金の角』につくと状況説明をして、宿の延長の手続きをする。
とりあえず一週間。
「---え、ケルベロスが・・・・・・三体?!」
それを聞いて宿にいた客や従業員達がザワついた。
「Sランクの俺達が討伐依頼を受けた。危ないから壁の外には出るなよ。もうじき冒険者ギルドからも案内がある。冷静に対応してくれ」
「・・・・・・分かりました! ありがとうございます。おい皆、聞いたな! 全員でお客様を守るぞ!」
「「「おお!」」」
「じゃあ行ってくるね」
「気を付けて!!!」
一方、その頃---。
「・・・・・・おいおい、マジかよ・・・・・・」
古の森の近く、異変に気付いた彼らは、それを知らせるべく、急いで要塞都市ライズに向かうのだった。
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