迷い子の月下美人

エウラ

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138 閑話 アインの街再開発計画(side新領主と新冒険者ギルマス)

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アインの街が粛正されてから10日後。

王都から連れて来た商人や大工などの職人達の手によって、元領主館の趣味の悪い贅沢品は売り払われ、外装は華美な装飾を取り外し落ち着いた物に、内装はシンプルながら品のあるデザインに変更された。

敷地内のゴテゴテした彫刻やよく分からない配置の庭園も見直され、スッキリと風通しの良い領主館が出来上がった。


職人達と共に新しい領主もアインの街に赴任していたのだが、改装の間は館に住むことが出来なかった為、冒険者ギルドのギルドマスターの執務室の隣を借り受け、部屋もギルド内の宿泊施設を使わせて貰っていた。

もちろん警備の騎士達もギルドに泊まり込みである。

---実を言うと、ギルドマスターは今はいない。
サブギルドマスターが代行しているのだ。

何故か。

この街のギルドマスターは他の街のように屈強でもなければ強気な性格でもなかった。
元冒険者ではあるが、穏やかな男だったのだ。

この街のギルドマスターになっておよそ30年。

冒険者ギルドは街の領主とは政治的な意味合いもあって関われない。
国からは独立した機関なのだ。

その為、アインの街が腐っていることを知りつつも手が出せなかったのだ。

特にノアの養父であるラグナロクがこの街に住むようになってからはその腐れ具合が顕著になった。

表立って手を差し伸べることも出来ずに、彼らの薬をぎりぎりの金額で買い取り、冒険者や職員には彼らがいい人であることを教えてやることくらいしか出来なかったのだ。

そして偶然にもSランクの冒険者と番ったノアが街を出て行き、これで彼は救われると安堵した。

領主や街の住人のクズっぷりには本当に呆れたが。

Sランク冒険者を街に引き留めるための枷にしようと画策するとは・・・。
アルカンシエル殿が迅速に街を出た気持ちが良く分かる。

そして他の街の冒険者ギルドから入るを楽しみに聞いていたあの日、王都から騎士団を引き連れて現れたのが、第5王子殿下だった。

領主達を捕縛し、この街の新領主となった。

その彼にギルドマスターは言ったのだ。

『私はもはやギルドマスターとしてやっていける気力がございません。然るべき方を次期ギルドマスターにして頂きたいのです』

もちろん領主といえどギルドの人事には口を出せない。
なので王都の冒険者ギルドの本部に連絡をして解任手続きをし、後任が着任するまでサブギルドマスターが執務をしている状況だった。


「前任のギルドマスターは善人過ぎて憐れなほど窶れていたが、後任はどのような人物が来るのであろうな・・・」

ようやく領主館の改装が終わり、館で一息吐く領主。
名を『フィフス』という。
王家は代々獅子の獣人が玉座に座っている。
フィフスも当然、黄金の獅子だ。

実は竜王国の大公家から密かに圧がかかり、このアインの街のヤツらを厳罰に処して欲しいと言われたのだ。

忖度はしたくないが、調べれば調べる程この街の住民のクズッぷりが爆上がりで、なるほど、アルカンシエル殿の番いとなる前のノア殿が本当に憐れでならない。

そんな中でも冒険者ギルドは良くやってくれていたようだ。
感謝したいくらいだ。

そういう訳で今から一年間、罰として住人の税をかなりきつめに上げた。
コレを機に更生するか潰れるか・・・見定めさせて貰おう。

その一年後に、私は侯爵位を賜り、臣籍降下となることが決まっている。
名実共にアインの街の領主となるのだ。
そうなったら、もう遠慮は要らない。

生き残った者達と冒険者ギルドとでこの街を再構築して盛り立てて行くのだ。

この街には上級迷宮ダンジョンがある。
だから冒険者が途切れることはない。

今までは閉鎖的な街だったが、ここは開放すれば十分潤う。

後任のギルドマスターにもよるが、いくらでもやりようはある。

新領主フィフスは一人、ほくそ笑んだ。


しばらくして赴任して来た後任のギルマスは魔人族の美中年だった。

「初めまして領主様。ウロボロスと申します」
「・・・初めまして。フィフスだ。ギルドには口を出せないから、貴方がしっかりと手綱を握ってくれると助かるよ」
「もちろん、精一杯務めさせて頂きます」
「私とは対等で良いよ。敬語は無しで、気さくに頼む。君とは長い付き合いになりそうだからね」
「・・・分かった。では俺の事はウルスと」
「私もフィーで良いよ。コレから忙しくなるから、そのつもりでな」
「分かった」

ウロボロスはニヤリと笑って言った。


こうして後任のギルマスとも気が合い、一年後にバリバリ再開発して、街の名前も『フィフス』に改名されることになる。

それはまた別の機会に・・・。





※ウロボロスはギギルル兄弟の父親のPT仲間だった魔人族の息子という裏設定があります。ここでは出ませんが。
ギギルル兄弟よりも年上です。

※大公家の話でちょっと触れたのでぶっ込みましたが、書き上げたのはかなり前です。
(閑話のノアとローランの時ですね)


※ちょっとこの先の展開、行き詰まって筆が止まっております。更新遅れるか止まるかも知れませんが、頑張りますのでお待ち下さい。
もう一話は予定通り明日投稿予定です。
(閑話とか別のは浮かぶんですけどねえ・・・😅)

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