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104 またたび酒
しおりを挟む翌朝、ノアはちょっと寝不足だった。
結局、あれからインベントリの中を漁って、もふもふになりそうな素材を使い、遂に納得のいく等身大のぬいぐるみを完成させたのだ。
「・・・・・・ノア、どうしてそうなった?」
アークが疲れた顔で頭を抱えた。
ノアはアークのそんな様子にも気付かず、徹夜明けのテンションでもって、嬉々としてぬいぐるみを抱き締めた。
---アークと同じ身長で、銀色の毛並みで、琥珀色のくりくりの魔石の瞳の銀竜を・・・・・・。
もふもふ以外はほぼ元のアークの竜体にそっくりなデフォルメのソレを、愛おしそうに抱き締めているのだ。
竜体はもちろんフサフサではなく、滑らかな鱗なのだが・・・。
まだ一度も見せたことの無いアークの竜体をしっかりと再現していることが恐ろしい・・・。
---コレは喜ぶところか?
それとも嫉妬するところか?
でもぬいぐるみとはいえ、俺だし?
いや本人がいるのに目の前であんな恍惚とした顔をされるのは・・・・・・いやいやしかしあの顔をさせているのは俺で---?!
思考がおかしくなったアークだったが、ひとまずノアからアークぐるみ(仮)を引き剥がして自分がノアをギュッとした。
「・・・・・・俺がいるんだから、俺を抱き締めろ」
「---ん」
拗ねたようなアークにクスリと笑って抱きしめ返したノアだった。
朝からひと悶着あったものの、朝食を食べてテントを片付けていると村長のフィンがやって来た。
「おはようございます。ゆっくり出来ましたかな?」
「・・・・・・出来た(一応)」
微妙な間に気付いたが何も言わずにスルーしてくれた。
・・・・・・多分エロい方の意味で取ったんだと思うが、突っ込まないぞ。
「その、昨日の、果実を採取していたところに確認のため赴くのですが、ご一緒されますかな?」
「ああ、行こう。ついでに境目が分かれば目印でも置けるしな。再発防止にはその方が良いだろう」
「---ありがたい話です。ではもう少ししたらお声がけ致しますので、お待ちくだされ」
そういって村長はそそくさと去って行った。
「手持ち無沙汰だな。アレでも作ろうかな?」
「・・・アレ?」
ノアの言葉にアークがコテンと首を傾げる。
何時もはノアがやる仕草をアークがしていることにカワイイと内心悶えていたノアだが、インベントリから素材を出すとアークに説明した。
「またたびの実とお酒で『またたび酒』を作ります」
「酒に漬け込むのか? でも時間がかかるだろう?」
「そこはほら、俺の錬金術の出番」
そういって木机の上に並べた材料に錬成陣を出すとあら不思議!
あっと言う間にまたたび酒の完成だ。
因みに瓶はあらかじめ用意してあって、その瓶の中にまたたびと酒を入れて熟成させたのだが。
「---なるほど。それなら他の酒やワインもそうやって熟成させられるのか?」
「そうだね。まあ、本職の人の仕事をとりたくは無いから普段はやらないけどね」
そんなことを話していたら、またたび酒の香りに誘われたのか、村中の獣人がふらふらと集まってきてしまった。
「・・・良い匂い」
「飲みたあい・・・」
さすが猫獣人。
鼻が効きますにゃ!
・・・・・・なんて思考が飛んでいってるうちに囲まれた。
昨日のデジャブ!
ノアがぴるぴる震えながらまたたび酒をインベントリにしまって、浄化魔法で匂いも消した。
皆はハッとして我に返り、スミマセンと去って行った。
「---ノア・・・・・・」
「・・・・・・気を付けます・・・スミマセン」
無言で圧をかけられてしょんもりしているノアを、今出てきて状況把握出来ていないハリィとフィンがキョトンとしていた。
「何かあったのか?」
「・・・・・・イエ、ダイジョーブデス」
「気にするな」
「・・・・・・お、おう?」
次に作るときはテントの中でやろうと心に決めたノアだった。
徹夜明けテンションでややおかしかったせいでもあるが・・・。
「---はぁ・・・・・・本当に巣に監禁したい・・・」
アークの呟きは幸いなことに誰にも聞かれなかった。
因みに、アークにまたたび酒の薬効を聞かれたノアが馬鹿正直に『強精・疲労回復』と答えたものだから、アークが閨のたびに飲んでノアも飲まされて抱き潰される事になる・・・。
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