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連載
96 北の迷宮踏破 後
しおりを挟む結果としては、お供雑魚の小っさい(いやコレが普通サイズのはず)マンドラゴラをアークが全て大剣で薙ぎ払って、残った大きなボスマンドラゴラをノアが『インフェルノ』で焼き払った。
雑魚のドロップアイテムは希少な薬や錬金術の素材で、ボスからは金貨500枚と雑魚よりもレアな『マンドラゴラの秘石』が出た。
「---うわ・・・・・・めちゃくちゃレアもんだ」
「・・・ヤベえ。ガチでヤベえ代物だ・・・」
アークも鑑定したのだろう。
かなり引いている。
---うん、俺も引いている。
コレは俺でも分かる。
これで薬を錬成したらヤバいなんてもんじゃ無い。
【マンドラゴラの秘石
レア度:EX
効能・効果:マンドラゴラ亜種の秘石。ドロップ確率は限りなく低い。錬金術用のアイテム。これで薬を錬成すると『神の雫』が出来る。寿命が延びる。稀に死者蘇生させる事がある。】
「---ノア、絶対に錬成するな」
「も、もちろん! コレはインベントリに死蔵決定!!」
他の素材が揃えば錬成は出来る。
出来るが、さすがに俺でもコレは無理だ。
錬成したらマズいヤツだ。
---この事は二人で墓場まで持っていくことに決めた。
さて、地上までの転移魔法陣を踏んで戻ると、ギルド職員に声をかけた。
「ただいま」
「あっ、お帰りなさい。早かったですね。今日はどうでした?」
「ああ、踏破してきた」
「へええ、踏破を。それは凄いですね・・・ん?」
「・・・『踏破』? 今、踏破って言いました?!」
「うん、言った」
ノアがサラッと言ったのに驚く職員達。
「「「「はあああぁ---?!」」」」
「ていう訳でギルドに戻るわ。またな」
「じゃあね」
雄叫びを上げる職員達に断って立ち去る二人。
それを顎が外れんばかりに大口を開けて見送った職員達。
「この迷宮・・・は・・・初踏破だよな?」
「・・・ソウダネ」
「---凄えー!! やっぱりアルカンシエル殿とノア殿だよな!」
「・・・詳しく聞きたい。ギルド内で誰か詳しく聞いてくれないかな?」
こういう時の『ノアとアークを見守り隊』とばかりに、後から最新情報を仕入れる気満々の職員達である。
さてやって来ました、冒険者ギルド。
「ギルマスを頼む。迷宮を踏破してきた」
「はい、畏まりました。迷宮を踏破ですね・・・踏破?!」
「そう、踏破」
受付が思わず叫んだ。
瞬間、ギルド内が静まり返った。
「ギルマス、いる?」
ノアがのほほんと尋ねて、時間が動き出した。
「---しょ、少々お待ち下さい!! ギルマス---!!」
「初踏破・・・」
「長年未踏の最下層・・・」
「---凄え---!!」
ギルド内があっと言う間に大騒ぎになり、ノアがビクッとしてアークにしがみついて久しぶりにぷるぷる震えた。
アークは何時もなら威圧を飛ばして黙らせるが今回は静観した。
---初踏破だ。
水を差すこともあるまい。
ノアもそう思っていたようで、しがみつきながらアークに視線で訴えた。
そのままでいいよ、って。
その後すぐにギルマスの執務室に移動したのであの騒ぎがどうなったのかは分からないが。
「---初踏破、おめでとう、でいいんだよな?!」
部屋に入って防音結界を張ってからギルマスが疑問形で祝いの言葉を告げた。
それに苦笑して応える。
「ああ、無事にボス部屋に行って討伐してきた」
アークの言葉にノアも頷く。
それを確認してギルマスがほおーっと息を吐いた。
「・・・・・・そうか。良くやった!! それでボス部屋はどうだった? ボスは強かったのか?」
「うーん、強さで言ったら俺達には雑魚だったな」
「うん、弱いな。一体一体は」
「・・・・・・何だ? どんなやつが出たんだ?」
ギルマスが非常に嫌な予感を覚えながら聞いた。
「マンドラゴラだ」
「---なんだと?!」
「雑魚マンドラゴラが俺達の時は100体はいたかな? そこにデカいボスマンドラゴラが一体。そいつはマンドラゴラ亜種だったな」
「・・・・・・マジで?」
「部屋に入った途端奇声を上げようとしていたから、対峙するなら魔導具で耳を塞ぐか詠唱短縮か無詠唱で『沈黙』の魔法を広範囲でかけないと即死だろうね」
「・・・・・・えげつな・・・」
「とにかく行くなら準備万端に、が鉄則だな」
「・・・・・・分かった。情報、感謝する。・・・ちなみにドロップアイテムはどういうモノだったか聞いても・・・?」
ギルマスのその言葉にアルカイックスマイルをするアーク。
貴族が良くするヤツだ。
感情を面に出さない教育の賜である。
それが出たということは、深く探ってはいけないということだ。
ギルマスはゴクッと唾を呑み込む。
「・・・・・・いや、良い。この話は今後も無しだ」
「賢明な判断、感謝する。・・・ああ、一応雑魚マンドラゴラからは希少なアイテムが出た、とだけ。おそらくノアほどの錬金術師でもないと扱えないだろうが。ドロップ率もかなり低い。命懸けで倒す労力には見合わないだろうな」
暗に、倒すだけ無駄、と告げる。
得られるのは迷宮踏破の名声くらいだろう。
アルカイックスマイルを消したアークにホッとするギルマス。
「なんにせよ、きちんとした準備無しでは死にに行くようなモンだ。ギルドマスターとしてそれを周知徹底して無駄な犠牲者を出さないことだな」
「---助言、感謝する。・・・・・・ひとまず、最下層の階とボスが解明されて良かったよ。長年未踏の領域だったからな」
底が見えればやる気も出るだろう。
冒険者も増えそうだ。
「じゃあ、説明責任は果たしたし、暫く宿に籠もるから邪魔者するなよ?」
「---っああ、分かった。ゆっくりしてくれ」
アークの言葉の意味をしっかり読み取ったギルマスがニヤリと笑った。
キョトンとして分かっていないのはノアだけだった。
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