迷い子の月下美人

エウラ

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87 急転直下 1

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※予約忘れてました! スミマセン。
※この話からちまちま加筆や修正が入ります。ご了承下さい。(R6.3.17)


俺がSランクに昇級してから五日後。

迷宮探索も順調に進み、五〇階層まで攻略したので今日は休みと羽根を伸ばしに街へ繰り出した俺達だったが。

───そいつは急に現れた。




遡ること一時間ほど前。

連日、迷宮に潜っていて昨日五〇階層に到達したので、区切りも良いし、今日はのんびり過ごそうと決めた俺達。
なんだかんだと迷宮探索ばかりだったせいで観光もしていないからと完全に私服で、だが俺は相変わらずフードを目深に被って外出した。

「ノアは何処に行きたいんだ?」
「薬師ギルドに寄ってみたいかな? ポーションとか在庫いっぱいで売りたいし。後は薬草屋さんに素材屋さんでしょ、市場で食材も見たい!」
「エイダンみたいに色々あると良いな?」
「そうだね」

ウキウキする俺を楽しげに見ているアークと一緒に薬師ギルドに向かう。


薬師ギルドの建物は真っ白で清潔感溢れていた。受付に向かうと、気付いた職員から先に声をかけられた。

「いらっしゃいませ。薬師ギルドにようこそ。ご用件は何でしょうか?」

初対面で声をかけられて一瞬ビクッとするものの、アークが手を握ってくれたので人見知りを発動しながらも俺は応えた。

「は、初めまして。あの、ポーション売りたいんですけど」
「はい、ありがとうございます。薬師ギルドのタグはございますか? お持ちでしたら確認を取らせて頂きたいのですが」

つっかえつっかえの挙動不審な俺にもきちんと対応してくれる受付職員に安心して、フードを外すと薬師ギルドのタグを見せた。

「コレです」
「───っありがとうございます。確認致しますので少々・・・・・・」

フードをとった俺の顔に一瞬固まった受付職員だったが、タグを受け取り魔導具で確認しようとしてまた固まった。はて?
アークが何故か訳知り顔でいる隣でキョトンとする俺。

「───! 失礼しました!! しょ、少々お待ち下さい!!」
「───え?」

受付職員が慌てて奥へ入っていき、何やら叫んでいる。

「ギッ、ギルド長に急いで取り次ぎを! 薬師マイスター様が、き、来てますって!!」

次いでドタバタガシャンと騒音が・・・・・・

「・・・・・・アーク、大丈夫かな?」
「・・・・・・薬師ギルドだ。怪我しても薬の類いはあるだろう?」

そりゃあ実際、売り物だが。


───暫くして薬師ギルドをあとにした俺達だったが・・・・・・
ドタバタ騒ぎのあの後、ギルドの二トップが揃って対応に出て来たが、感涙にむせび泣く二人に涙目でぴるぴるドン引きな俺。そんな光景を遠い目で虚空を見つめるアーク。
混沌カオスだった。
俺とギルド長達はアークに宥められ落ち着いたところでポーション類をさっさと売って、引き留められる前にと、疲れた顔で建物から出て来たところだった。
先ほどの騒ぎで疲れたせいでフードを被るのを忘れていた俺にアークがフードを頭に乗せてくれたその時。

「───アリテシア!?」

そう声が聞こえたと思ったらぐいっと肩を鷲掴みされ、ぐるっと声の主の方へ向かされた。

「───!? 何・・・・・・」

驚いて目を瞠った俺を食い入るように見つめるその男に見覚えは無かった。

「アリテシア!! 生きていたのか!?」

男はそういって俺を抱き締めた。
人見知りなノ俺は硬直し、頭が真っ白になって動けなくなった。

「貴様、何してる!!」

憤怒のアークが俺から男を引っ剥がして地面に叩きつける。
アークにしては俺を傷付けないように一応優しく剥がしたが、男にとってはかなりの衝撃だったため、一瞬息が詰まり、次いでゲホゲホと咳き込んだ。
咳き込みながらも立ち上がり、再び俺とアークの前に立ち塞がった。

「───アリテシア、生きていたなら何故、連絡の一つくらい・・・・・・! この男は誰だ。お前の番いはこんなヤツじゃ無かったろう!?」

男はそう叫んでいた。








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