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しおりを挟む「───というわけで、俺達も精霊王から聞いた話だが、知ったのはついこの間だったんだ」
口下手な俺の代わりにアークが精霊王から聞かされた話をルシアスに話した。ルシアスは黙って聞いていたが、時折顔を歪ませていた。
攫われて逃げて、儚くなった辺りでは目に涙を浮かべていた。想像したんだろう。怒りや哀しみが手に取るように分かった。
「・・・・・・そんな事になっていたとは・・・・・・」
悲痛な表情を浮かべるルシアス。そんなルシアスに俺達は一つ提案をした。
───ルシアスは今、俺達のために黒兎族の里に向かっていた。
あの衝撃の出会いの後、俺達がした提案とは俺の母親と思われるアリテシアとその兄ルシアスの生まれ故郷である黒兎人族の里に赴くという事だった。
だが、兎人族はその繁殖力に目を付けた他種族に強引に手籠めにされたり拐かされたりする事が多々あるため、結界を張った隠里に住んでいるそうで、余所者は入ることが出来ないそうなのだ。
アリテシアの番いは竜人だったため、力技で無理矢理侵入したらしい。常人ならば死ぬような拒絶反応で弾かれるというのに。
そしてその結界を抜けられるのは兎人の血を引く者。それで言えば俺は入れるだろうが、アークは同じように力技になる。
そうならないように長に許可を得なければならないそうだが。
「───アイツが悪いとはいえ、因縁のある竜人だからなあ・・・・・・。アークは別人だけど、トラウマもんだしな。だが、なんとしてでも許可をとらないと、父さんに会わせてやれない・・・」
ルシアスの話だと今の長はアイツの弟で、話の分かる良いやつだが、アイツはまだ根に持ってるらしい。
だがアリテシアとルシアスの母はすでに亡くなり、父ももう長くないそうだ。里から連れ出すのは無理だからおそらくこれが最後になるだろう。
俺の祖父だという人に会いたい。
アリテシアの忘れ形見だと顔を見せてあげたい。
───結果、長からは快く許可がおりた。
アイツはめちゃくちゃ渋ったそうだが、アリテシアにした事を思えば強くは出られなかったらしい。それに、ルシアスとアリテシアの父親がもう限界だったこともある。
俺が預けた魔導具をルシアスが使ったので、それを目印にあっという間に到着した。
急に現れた俺達に里の者は皆驚いたが、何故か事前に知らされていたルシアスでさえ驚いていた。アレか、翼か? それとも早く来すぎた?
俺が即席で作った魔導具は発動すると居場所を知らせてくれるもので、俺達二人の腕輪の地図に位置情報が表示されるようになっている。そうしたら翔んで行くと伝えていた。
もちろん騒ぎになるので、隠蔽魔法で姿を隠してだが。
「───ようこそ、黒兎人族の里へ。歓迎します。・・・・・・アリテシアの忘れ形見、ノアとその番いのアルカンシエル殿」
里長のアダムが挨拶をした。
それに俺達も返す。
「ノアと言います。こちらは俺の番いのアルカンシエル。よろしくお願いします」
「アルカンシエルと言う。よろしく頼む」
「───あの、貴方様はもしや、竜王国の大公家の・・・・・・?」
「ああ、そうだな。三男だ。今は冒険者をしているが」
「「・・・・・・え?」」
居合わせた皆が固まってしまった。・・・・・・大丈夫? 取って喰いやしないよ?
「気にせず普通に接してくれ」
アークが苦笑していた。俺も苦笑した。
「そう言えば、ノア、人見知り大丈夫そうだな?」
「───あー、うん、兎人だからかな、ここは大丈夫って気持ちが湧いてきて、落ち着く」
そういって目深に被っていたフードを取ると途端にざわめきが起こった。
───気持ちは分かるよ。
アリテシアと瓜二つだって言ってたもんな。
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