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76 初日終了
しおりを挟む安全地帯に着いて直ぐにお互いの自己紹介をした。
二人共、アークがSランクなのに驚いていた。
「そりゃあ、初見なのに余裕でここまで来られる訳だ!」
その二人は深い赤髪をしていた。
綺麗な緑目で、剣士のお兄さんがギギ、魔導師の弟さんがルルというそうだ。
確かに聞いた情報通り、アークより大きいお兄さんと俺よりもがっちりした弟さん・・・。
本当に魔導師なのかと思っていたら、魔導師寄りの剣士という位置づけだそうだ。
アレ?
それでいったら俺もそうだよね?
俺も普通に剣で戦うよ?
「・・・ノアはそうだな、竜王国の騎士団でいうところの魔法騎士に当たるんじゃないかな。レベル的には魔法騎士団のトップを張れる。というか多分、魔法だけでもアイツを倒せるよな・・・」
「・・・アイツ?」
「従兄弟が魔法騎士団の団長なんだ。俺よりも数ヶ月前の生まれの乳兄弟で魔法は俺よりも上手だ」
「へえ、手合わせしてみたいね」
「国に着いたらな」
なんて会話をしていたら、ギギルル兄弟がやや引き攣った顔をした。
「・・・なんか聞き捨てならねえ単語が聞こえてきたんだけど」
「・・・・・・魔法騎士団って、竜王国だよね? そこのトップと乳兄弟・・・? でもって、どうして軽く手合わせの話になるの?」
「ああ。俺、竜王国の大公家の三男坊だから」
「「---え”、まじ?」」
「まじ。で、ノアは混血だけど竜人の特性が強いんで、俺並みに強い」
でも極度の人見知りなので、何時も物静か(上手いこと言ったな)。
というか、本業薬師なのであまりランクに興味が無い。
だからずっとAランクのまま、ランクアップしてなかったのだが。
「そろそろSランクに昇格してもいいだろう。十分功績もあるし、何より俺とお揃いで」
「お揃い?!」
ノアが食い気味に被せて来た。
珍しい。
「あ、ああ。Sランクになれば強制召集も任意だし、他国にもフリーパスで入れる。指名依頼もこちらから選べるから無理に依頼を受ける必要も無くなる」
「そっか。じゃあ昇格出来るか聞いてみよう」
「・・・・・・そんな軽い感じでいいのか?」
「大丈夫、ノアだから」
そう言うアークに呆れつつ、迷宮の話をする。
「俺達は今日はここから入って、13階層まで潜ったが、そこが灼熱の砂漠だったんで時間的にも体力的にも無理って引き返して来たわけさ」
「装備はともかく、砂漠の魔物は水をかければ弱体化するヤツと、逆に元気になるヤツがいてね、魔力もキツいから諦めたんだ。まだ死にたくないしね」
「ああいうエリアはルルの魔法頼りになっちまうからなあ。弟を危険に曝してまで進む必要は無いからな」
「弟さん思いの優しいお兄さんだね」
「---馬鹿だけどね」
照れ隠しのように素っ気なかったけど、頬がほんのり赤くなっていた。
「じゃあ、時間も押してるし、上に戻ろうぜ」
ギギの合図で一同は入り口に転移した。
「帰りはどうするんだ?」
「ああ。ノアが人見知りするから定期馬車は使わずに歩いて帰る。行きもそうだったしな」
「そうか、俺達は馬車で帰るから先に着くかな? じゃあまた、街であったら声をかけてくれ」
「ああ、また」
「じゃあねえ」
「・・・バイバイ」
そういって別れた。
入り口からギルド職員のいるエリアに戻ると、もう少しで定期馬車が発車する事を告げられたが、歩くから大丈夫だと断った。
「あの、今日はどうでしたか?」
おずおずと声をかけた職員にアークがザッと話をした。
もちろん『深緑』の恋路の話は抜きで。
「ああ。『深緑』の皆さんなら、何やら幸せいっぱいの顔で帰られましたね。アルカンシエル殿達のお陰だったんですね?」
きっと10階層まで潜れて、アイテムもたくさんでほくほくだったのでしょうね。
と、いい感じに誤解してくれた。
ギギルル兄弟にもあったことを伝えると、職員達もにこやかになった。
「お役に立てて良かったです。先ほどお二人もアルカンシエル殿達の事をちょっと話していました」
「こちらこそ助かった。またちょこちょこ潜るからよろしく頼むよ」
「ありがとうございます。良かったら皆で食べて下さい。ご苦労様です」
そういってノアがマジックバッグから作り置きの焼き菓子をたくさん出して手渡した。
「ええ?! 良いんですか?! ありがとうございます!! 家宝にします!!!」
「ぶっ!」
「? いえ、食べて下さいね?」
職員達の家宝発言にアークが噴き出し、ノアは疑問符を浮かべた。
和やかに手を振って別れると、アークと一緒に街へと足を運んだ。
「アークと迷宮に潜れて、色々と楽しかった。知り合いも出来たし」
「気のいいヤツらだったな」
「うん。またあったら一緒にご飯食べたいな。俺、料理するから」
「多分大食らいだぞ?」
「アークもでしょ? 大丈夫。美味しいってたくさん食べて貰えるの、幸せなんだ」
「じゃあ、その時はギルドの食堂貸切ってやるか?」
「! それ、良いね。サウスさんに聞いてみよう。あっギルマスもかな?」
「そうだな」
「今から楽しみ」
のんびり歩いて、街に着く頃は黄昏時になっていた。
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