74 / 538
70 サクサク進むぞ?!
しおりを挟む三階層は薄暗い洞窟仕様だった。
「このエリアは岩系と虫系が多いと思う」
グリューンが言った。
エメルは苦い顔だ。
多分、虫が苦手なんだろう。
「でもまあ、虫なら火魔法で焼いちゃえば良いし」
「・・・でもいやなモノはいやだ」
スカイが言うがエメルが泣きそうだ。
それを見たノアがエメルに言った。
「俺が全部やっつけてあげるよ。だから目を瞑ってて。エメルは回復役なんだから無理しなくて良いよ」
「え?」
「誰かエメルを連れて歩いてくれる? 俺が先頭で殲滅していくから」
気負いもせずに、散歩にでも行くような口調で言うノア。
「ノアが? 大丈夫なのか?」
「エイダンの隣街の上級迷宮ではソロで何度もボス戦してる。地底竜だったから似たような階層だよね。イケる」
「大丈夫だ。一人でも・・・・・・多分オーバーキルだ」
アークが遠い目をしている・・・。
Sランクにそんな目をさせるノアって一体・・・?!
ていうか、地底竜?! ソロで?! 何度も倒してるのか?!
グリューン達も遠い目をした。
取りあえずその案を採用して歩き出すこと数分。
ブーンという羽音が聞こえてきた。
「ひえっ?!」
エメルが目を瞑って耳を押さえた。
なるほど、これでは戦闘にならない。
「シン、盾は良いからエメルを抱えて歩いて」
「お、おう、分かった」
そういってヒョイッとエメルを抱える。
「うわって、シン?!」
「そのままジッとしてろ」
「う、うん・・・・・・」
顔を真っ赤にしたあと直ぐに真っ青にしたエメル。
虫の大群が迫ってきていた。
『インフェルノ』
頭の中で鍵の詠唱を唱えるノア。
瞬間、辺り一面が炎に包まれた。
熱風が吹き荒れる・・・が、結界も張っているのでこちらに被害は無い。
アークが剣を一閃して煙を払うと、辺り一面は焼け野原・・・と言うか岩が溶け崩れている。
「・・・・・・」
グリューン達は顎が外れるほど口を開けている。
さすがのアークも呆れてモノが言えない。
「・・・・・・ごめん、次はもっと威力を下げる」
これでも相当下げていたようだが。
「インフェルノ使えばこうなるわ」
「・・・・・・ごめんなさい?」
「インフェルノ?!」
「おいおい、マジかよ」
「・・・・・・凄ぉい・・・・・・」
「・・・・・・確かにオーバーキルだわ」
気まずい空気に耐えきれず、ノアが歩き出した。
「じゃあ皆、ドロップアイテム拾って下さい」
そういって自分も拾い出す。
皆は苦笑してあちこちに落ちているアイテムを回収するのだった。
その後も何度も虫や岩系魔物に出くわすたびにノアが殲滅していった。
・・・・・・文字通り、殲滅だった。
「俺、学習した。火よりも凍らせた方が被害が少ない」
そういって虫系には『アブソリュート・ゼロ』を使い、岩系には『レイン』からの『サンダー』で感電死。
他の皆はひたすらアイテム回収・・・・・・。
楽だったのか疲れたのか分からない感じだった。
こうして階層を重ね、今は5階層の安全地帯での休憩中だった。
「そろそろお昼ご飯、食べよう」
「お腹空いた---!!」
「いやでも、ノア達のお陰で半分も来た。凄いよね。俺達、何泊か泊まりながら行くつもりだったのに」
「ホント! 特に三階層・・・・・・死ぬほど助かった! ありがとうねえ!!」
「俺も楽しいし、別に・・・気にしないで」
思ったよりも平気だった。
もっと緊張するかと思ったけど、皆、優しくて気さくだった。
「よかったな、ノア」
「うん」
そういうわけで、ノアお手製の具沢山スープを皆に振る舞った。
ここの安全地帯にはまだ誰もいなかったが、どうやら迷路のような階層ではルートが幾つもあって、最短から最長まで運任せのようで、ノア達は幸運にも最短ルートだったらしい。
先に潜ったはずの冒険者にはまったく遭わなかった。
朝イチで潜ったらしいAランクのギギとルル兄弟はきっと10階層からスタートしたのだろう。
ちょっと会ってみたかったが、日帰りだしなあ。
無理はしない。
「一休みしたら次に進むぞ」
「「「おー!」」」
グリューンのかけ声に張りきって返事をする三人を微笑ましく見つめるアーク達だった。
375
お気に入りに追加
7,354
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる