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68 迷宮探索 4
しおりを挟む「・・・・・・アレは・・・」
---そう。
あの街の迷宮下層にいたケサランパサラン。
森の木々にみっちり嵌まってはち切れそうになっていた。
鬱蒼とした暗い森の中に真っ白い毛玉・・・。
一瞬レイスの集団かと思ったが、間違いなくケサランパサランだった。
「ココにもいるんだ! 倒したら森水晶落とすかな?!」
ノアがワクワクして興奮している。
「錬金術の材料になるんだっけ」
「うん、それ以外にも鑑賞用に欲しいって貴族とかが多いかな。俺は錬金術の素材として欲しいんだけど」
「---ああ、ドロップ率が低いんだよな」
以前の採取での事を思い出したのか、アークがちょっとゲンナリした顔になった。
「まぁ、せっかくだから気の済むまでやれば良い。急いでないしな」
「ありがとう、ア-ク!」
それに付近には他の冒険者もいないようだし、この前のように水魔法で落として雷魔法で一発やれば良い。
「じゃあ、この前みたいによろしくね」
「オッケー」
そう言って早速魔法を使い出した。
アークは今回、ドロップアイテムを拾いつつ他の魔物達を倒していた。
ノアにはケサランパサランの方に集中して貰いたかったからだ。
もちろんノアも周りを見て普通に魔物を倒せるが、嬉々として森水晶をドロップさせているノアを煩わせたくなかったので。
安定の溺愛過保護である。
ケサランパサランを倒し始めて十数分。
一階層にいた先ほどのPTが漸く二階層に降りてきて最初に見た光景が、嬉々としてケサランパサランを倒すノアと、ドロップアイテムを回収しつつ他の魔物を屠っているアークで。
「・・・・・・は?」
辛うじて声が出たリーダー以外は口をあんぐりと開けたまま固まった。
最初、二階層なのに有り得ない強さの魔物にビビったが、それを上回るアーク達の戦闘技術に呆然となった。
「・・・え? ナニコレ、どういう事?! 凄まじいんだけど!!」
「・・・あの人達、たぶんAランク冒険者だよね」
「魔導師の方は、たぶん美丈夫さんの番いさんだよね。首に咬み痕がくっきり見える」
「---いやいや、二人とも強すぎでしょ!」
我に返ってめいめいに話し出すPTメンバー。
一歩も動けずにいると、それに気付いていたアークが近付いて行った。
「よお。さっきぶり。あんたら、この先に行くのか? 結構ヤベえぞ、ココ」
「---だよな。今日はもっと下に行くつもりで来たんだが、ちょっとこの強さは無理かな」
リーダーが応える。
「ああ、俺は『深緑』のPTリーダーで剣士のグリューンという。彼らは仲間の・・・」
「盾役のシンだ」
「魔導師のスカイ」
「回復術士のエメルです」
「アルカンシエルだ。アークで良い。向こうで魔法使ってるのがノア。俺の番いだ」
よろしくな、とニカッと笑った。
そのノアが一旦魔法を止めてコッチに来た。
・・・が、人見知りのため、途中で立ち止まってぴるぴるしていた。
アークが素早く近づいてノアを抱き締める。
「悪いな、人見知りで」
「いっ、いや、気にしない」
「・・・・・・ノア、です」
「・・・・・・ほああ・・・可愛いねえ」
思わずといった風にエメルが呟いたのに『深緑』メンバーがこくこくと頷いた。
「・・・・・・アーク、そろそろ進もうか?」
「もういいのか?」
「ん、結構ドロップしたし、先も気になる」
確かに、倒した数が数だけに結構手に入った。
ノアはちらっとグリューン達を見てからコテンと首を傾げた。
「あの、貴方たちは、この先に行く?」
「ああ、いや、ちょっとココの魔物は俺達には強すぎるから諦めて戻ろうかと思って。今日は運が悪かった。何時もはもっと弱いのが出るんだけどなあ・・・」
ノアは少し考えてからアークに言った。
「・・・・・・アーク、一緒に行く?」
「うーん、まぁ俺は構わんが、ノアはいいのか?」
「ん、いい人達みたいだし、ココにも詳しそうだし」
「---えーと?」
グリューンが戸惑いがちに聞いてきた。
「ああ、いや、あんたらがいいなら、一緒に進もうかって、ノアが」
「えっ!! いいのか?!」
「俺達は今日は10階層の転移魔法陣を目指しているんだが、あんたらは?」
「俺達も今日はそこまで行こうとしていたんだが」
「じゃあ、一緒に行こう。俺達がサポートするから、な」
グリューン達は顔を見合わせて頷いた。
「---じゃあ、頼む。俺達も出来るだけ頑張るからな」
「了解。ちなみに俺はSランクでノアはAランクだ、よろしくな」
「---Sランク?!」
「・・・・・・俺達は皆、Aになったばかりだ。ノアはAになって長いのか?」
「うん、5年は経ってるかな」
「俺達は昨日街に着いたばかりだから、ココは今日が初見なんだ。経験者がいると助かる」
それを聞いて苦笑するグリューン達。
「Sランクなら経験者なんて関係なく攻略出来るだろうに、こっちの方が助かるよ」
二人の申し出に心から感謝した。
「よろしくお願いします。ああ、ポーションとか入り用の時は言って? たくさんあるから」
ノアが言った言葉にポカンとする『深緑』メンバー。
「---へ?」
「ノアは薬師だから、作れるし在庫もある。まぁ値段はそれなりにするけどな」
「---薬師?!」
「えっと、冒険者なんだよね?」
「本業は薬師」
そう言ってタグを見せると、皆は目を瞠って絶句した。
「・・・・・・薬師マイスター・・・・・・?!」
ノアはコテンと首を傾げて、アークは苦笑いだった。
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