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65 迷宮探索 1
しおりを挟む時間は9時頃か。
ギルドから外に出て街中を歩いて行く。
先ほどの性教育に半ば心を持っていかれていたノアだったが、迷宮に潜る準備だとアークに言われてハッと我に返った。
「そうだ、迷宮!」
「お、おう。まあ、準備って言ってもほとんどマジックバッグに入ってるし、ノアの御飯があるからなあ・・・このままちょっと様子見で潜ってみようぜ」
「行く行く!」
急にガバッと復活したノアに驚きつつ、アークが提案した事に反射的に頷き、街の北門に向かって歩いて行く。
先ほどの萎れ具合から想像できないほどルンルン気分なノアに見蕩れつつアークが話しかける。
「とりあえず夕方まで潜って、魔物の強さや階層の突破具合を確認して戻ろう。様子見だから無理はしない」
「ん。物理とか魔法とか効きにくい階層があるって言ってたね。ちょっと楽しみ」
「・・・ソレを楽しみって言えるのノアくらいじゃ無いかな」
普通はイヤだろ。
そもそも単独で潜るヤツいないし・・・・・・いやいたな、ココに。
アークはSランクだからソロでも平気は平気だが、やっぱり同じくらいの強さのヤツと組めれば楽だ。
ただ、命を預けるに価するヤツがいなかっただけで。
ソレを考えると、ノアに出逢えたのは奇跡だと思う。
アーク並みに戦える強さを持った魔導師で番い。
お互い不足気味な能力を補える最高の好一対。
「・・・ん? どうかした?」
やや低い位置から上目遣いで自分を見上げるノアに思わずちゅっと口付けをすると頬がサッと薄紅色に染まる。
ゾクッとそそられるが、我慢だ。
これからノアの大好きな迷宮に潜るんだからな。
---クソ、迷宮相手だろうと腹立つわ!
俺だけ好きでいてくれ。
もちろんノアの迷宮に対する『好き』は単に素材収集とストレス発散の意味合いだが。
雑談をしながら北門に着いたのでギルドタグを門衛に見せて外に出る。
朝イチで依頼を受けた冒険者などはもう出かけているらしく、さほど混んではいなかった。
ちょうど良いと、アークが門衛の一人に声をかける。
「ここから迷宮に行くにはどれくらいかかるかな?」
「そうだな。先ほど出てしまったが、定期の乗合馬車なら30分程で、徒歩だと1時間程度かかるかな。時々魔獣などが出るから相手にしていると面倒だが、お宅らなら問題無さそうだな」
「ああ、問題無いな。じゃあ様子を見ながら歩いて行くか、ノア」
「そうだな。ありがとう、門衛さん」
「どう致しまして」
軽く手を振って別れた。
のんびり、と言うほどゆっくりでもないが割とスタスタ歩いているのはノアが迷宮を楽しみにしているせいだろう。
心なしかウキウキしている。
途中、何度か魔獣の気配があったが、アークが威圧するとサッと消えたので、そんなに強いモノではなかったのかもしれないな、とノアは呑気に考えていた。
・・・が、アークの威圧はSランクな上に竜人の力が合わさってとんでもない威力なので、軽く飛ばしても大抵の魔物や人はビビって逃げ出す。
もちろんノアも威圧すれば似たようなモノだが、そもそも人見知りでそんな気も起きないので本人は全く気付いていない。
そうして道中、何事もなく迷宮の入口に到着したのだった。
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