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62 迷宮どころじゃ無かった(sideサウス)
しおりを挟む昨日、昼過ぎにギルマスが慌ただしくギルドの外に飛び出して行くのを『珍しいなあ』と呑気に見やって食堂の冒険者共を捌いていたら、十数分後に入ってきた二人組に衝撃を受けた。
ギルマスの後に続いて入ってきたのは、噂で聞いたことがあるだけのSランクのアルカンシエル殿だった。
風貌が聞いていたものと一致する。
銀髪に金の瞳で褐色の肌の美丈夫・・・。
---隣は誰だ?
フードを目深に被っているので口元しか見えんが、それだけでも美人だと思われる。
少し背の低い、魔導師のような出で立ちだが。
受付での対応で、美人(仮)さんがノアと言う名のAランク冒険者で薬師らしいことが分かったが・・・。
ポーションの件で、ギルマス達が動揺で青くなるほどの性能だったらしく、ギルド内がザワついた。
なんでそんな凄腕の薬師が冒険者やってんだとか、Aランクって凄っ! とか・・・。
その後、ギルマスと執務室に移動していったのを見て一斉に騒がしくなった。
「---なんだったんだ?!」
「Sランクなんて初めて見た!」
「フードの方、アレはPT組んでるよなあ」
「・・・番いじゃないか?」
俺がぽそっと言ったら、思ったよりも皆に聞こえてたらしい。
一斉に振り向かれた。
「どゆこと、マスター?!」
「え、いやだって、揃いの腕輪をしていたし。雰囲気が甘々だったし、Sランクの方は凄い独占欲だったし?」
「えっ?! 腕輪してたの?!」
「通りすがりに見えたよ、チラッと」
めちゃくちゃ魔法付与されたガチでヤバめな感じのヤツ。
何処で誰が作ったのやら。
今までの経験からぱっと見で凄いってのは分かったが。
「まあ、暫くここにいるらしいし、話す機会もあるだろうから聞いてみたら良い」
低ランクだと気圧されて近寄れないかもだけどな。
その前にSランクの方が嫉妬して話せないだろうが。
暫くして降りてきた二人は受付でおすすめの宿を聞くと出ていった。
いやおい、その宿ってこの街で唯一の高級宿だよな?
いいんかい?
・・・そりゃあSランクなんて高給取りだろうけどさあ。
休憩時間でお茶を飲んでいたギルド職員に目を向ければ、にっこりと微笑まれた。
「アルカンシエル殿はそういう方なのでこれでいいんですよ」
意味深に言われたが、なるほど?
そういう身分って事ね・・・。
確かに何処をどうとっても一般人には見えないわ。
・・・そういや、ノア殿も顔は見えなかったが雰囲気がやんごとない感じだった。
彼もそうなのかな?
「彼らが気になるならギルマスに声をかけてみて下さい。いいものがありますよ」
「? いいもの?」
「まだ内緒です」
そういってはぐらかされたが、まあ気にしないことにした。
翌日、迷宮の情報を得るために自分のところに来るとは思わずに、聞こえてきた受付の声に顔をあげればバッチリと目が合い、思わずにこやかに笑って手を挙げてしまった。
「やあ、いらっしゃい」
話を聞くとやっぱり番いだった。
フードをずらして顔を覗かせたノアはめちゃくちゃ美人だった。そして儚げだった。
そりゃあ過保護にもなるわ。うん。
そうして迷宮の情報を知る限り教えてやっていると、ノアが不意に青ざめて口元を手で押さえた。
この様子はもしかしてアレか?!
「なんだ、どうした? 悪阻か?」
「---いや、大丈夫・・・・・・ちょっとヘンな想像してしまって・・・悪阻?」
キョトンとした顔で聞き返された。
いや、番いでやることやってれば出来てもおかしく無いだろう、子供が。
そう言えば、不思議そうにストレートに聞かれて・・・・・・。
まさか何も知らないいたいけな美人を無理矢理手籠めに?!
思わずジト目でアークを見れば、コレが天然で箱入りだと分かった。
分かったが!!
まさかここでいい大人に性教育をすることになるなんて・・・・・・。
おい、周りのヤツら!!
微妙な空気になるんじゃねえ。
聞き耳を立てるな!
普段通りザワついていろ!
キャパオーバーのノアを抱えてアークが去った後にどっと疲れが出た。
「・・・・・・お疲れさん」
いつの間にかギルマスが来ていて肩を叩かれた。
「---なんなんですか、アレ。大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃ無いからこういうもんがある。ちっと顔貸せ」
そういって執務室に連れて行かれた俺は、二つ返事で『見守り隊』に入隊したのだった。
職員のいいものはコレだったのかと納得して。
職員じゃ無いけど良いのかと聞いたら、併設された食堂で働く元冒険者だから対象だと言うので、遠慮なく。
見守らせて貰うよ。
※ちなみにサウスは元冒険者で、今は活動はしてませんがギルドタグはそのまま身分証として使ってるので備考に記載されます。
低ランクだと一定数依頼を受けないと剥奪されますがC以上は制限がないので犯罪行為等の規定違反がなければそのまま維持されます。
以上、補足でした。
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