迷い子の月下美人

エウラ

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61 北の迷宮 2

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「---迷宮の続き、聞くんだろう?」

困ったように笑いながらサウスさんが言った。

俺は顔を真っ赤にしながら慌ててアークから距離を取っ・・・・・・れなかったので諦めて顔だけでもサウスさんの方に向けた。

「・・・まあ、良い。で?」

塩対応なアークに苦笑して続けるサウスさん。

「はいはい。北の迷宮は階層によって物理特化と魔法特化の魔物が出るんだ。その階層にあたると、物理しか効かなかったり魔法しか効かなかったりするんで、どちらかに特化したPTだと下手すりゃ全滅って事になるから、そこが重要になってくる」

最後には真剣な顔で話すサウスさん。

「それなら俺達は問題ないな。俺はどっちかというと物理特化型でノアは魔法特化型だが、お互い独りでもそこそこ戦えるし、な?」
「まあ、俺はともかくアークはどっちも強いからねえ」

でもまあ、そもそもアークはSランクで竜人だしね、と全く心配はしていなかったが。

「普通ならそうだろうが、油断すると何処で足下を掬われるか分からないからな? 厄介なのが、それぞれの特化した魔物の出る階層が変動するってところでな」
「へえ、変わるんだ?」
「ああ、どういう条件なのか、全く関係ないのか、潜る度に変わるから『この階層が』って指定出来ないんだよ。いきなり一階層で魔法特化型にあたってほうほうの体で逃げ帰ったPTもいたな」

なんか迷宮自体が意思を持って生きてるようだな。
俺達をおちょくって遊んでる?
さしずめ入り口はまさしく口で、腹の中を通って最後は排泄・・・・・・。

---う”っ・・・。

ヘンな想像して気持ち悪くなっちゃった・・・。

思わず口元を押さえると、アークがすかさず顔を覗き込んできた。

「ノア、大丈夫か?! やっぱり何処か体調が・・・?!」
「なんだ、どうした? 悪阻つわりか?」
「---いや、大丈夫・・・・・・ちょっとヘンな想像してしまって・・・悪阻?」
「いや、番いでやることやってるなら子が出来てても不思議じゃ無いよな?」

サウスさんが心配そうに聞いてきたんだけど、イマイチよく分からなくて聞き直してしまった。

「---出来てないから心配要らない。今はまだ良いからな。番ったばかりだし」
「ん---、性交したら子供が出来て、出来たら悪阻ってのになるって事?」

ノアが真顔(いや、何時もほとんど真顔だが)でアークに聞いたのを見て、サウスがアークにジト目を向けた。

「---お前さん・・・・・・」
「断じて違うぞ。騙してないぞ。ノアは箱入りで人見知りで常識知らずなんだ」

アークが深い溜息を吐いた。

---お爺さん、大賢者だったんならせめて性教育くらいしといてくれよ・・・・・・。


この後、迷宮の話はスミに追いやられ、アークとサウスによる『簡単で分かりやすい妊娠と妊娠中の体調の変化~出産まで』なる講義を受けたノアは、軽いキャパオーバーで暫く意識を彼方へ飛ばしていた。

そしてその時の会話を、朝の忙しい時間帯に良い依頼を受けようと来ていた多くの冒険者や忙しなく仕事を熟す職員達がしっかり聞いていて、ギルド中が微妙な空気になっていたことをノアは知らない。


・・・・・・もちろんアークとサウスは気付いていたが。



---勘弁してくれ・・・・・・。

お互い思ったことはソレだった。





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