65 / 534
61 北の迷宮 2
しおりを挟む「---迷宮の続き、聞くんだろう?」
困ったように笑いながらサウスさんが言った。
俺は顔を真っ赤にしながら慌ててアークから距離を取っ・・・・・・れなかったので諦めて顔だけでもサウスさんの方に向けた。
「・・・まあ、良い。で?」
塩対応なアークに苦笑して続けるサウスさん。
「はいはい。北の迷宮は階層によって物理特化と魔法特化の魔物が出るんだ。その階層にあたると、物理しか効かなかったり魔法しか効かなかったりするんで、どちらかに特化したPTだと下手すりゃ全滅って事になるから、そこが重要になってくる」
最後には真剣な顔で話すサウスさん。
「それなら俺達は問題ないな。俺はどっちかというと物理特化型でノアは魔法特化型だが、お互い独りでもそこそこ戦えるし、な?」
「まあ、俺はともかくアークはどっちも強いからねえ」
でもまあ、そもそもアークはSランクで竜人だしね、と全く心配はしていなかったが。
「普通ならそうだろうが、油断すると何処で足下を掬われるか分からないからな? 厄介なのが、それぞれの特化した魔物の出る階層が変動するってところでな」
「へえ、変わるんだ?」
「ああ、どういう条件なのか、全く関係ないのか、潜る度に変わるから『この階層が』って指定出来ないんだよ。いきなり一階層で魔法特化型にあたってほうほうの体で逃げ帰ったPTもいたな」
なんか迷宮自体が意思を持って生きてるようだな。
俺達をおちょくって遊んでる?
さしずめ入り口はまさしく口で、腹の中を通って最後は排泄・・・・・・。
---う”っ・・・。
ヘンな想像して気持ち悪くなっちゃった・・・。
思わず口元を押さえると、アークがすかさず顔を覗き込んできた。
「ノア、大丈夫か?! やっぱり何処か体調が・・・?!」
「なんだ、どうした? 悪阻か?」
「---いや、大丈夫・・・・・・ちょっとヘンな想像してしまって・・・悪阻?」
「いや、番いでやることやってるなら子が出来てても不思議じゃ無いよな?」
サウスさんが心配そうに聞いてきたんだけど、イマイチよく分からなくて聞き直してしまった。
「---出来てないから心配要らない。今はまだ良いからな。番ったばかりだし」
「ん---、性交したら子供が出来て、出来たら悪阻ってのになるって事?」
ノアが真顔(いや、何時もほとんど真顔だが)でアークに聞いたのを見て、サウスがアークにジト目を向けた。
「---お前さん・・・・・・」
「断じて違うぞ。騙してないぞ。ノアは箱入りで人見知りで常識知らずなんだ」
アークが深い溜息を吐いた。
---お爺さん、大賢者だったんならせめて性教育くらいしといてくれよ・・・・・・。
この後、迷宮の話はスミに追いやられ、アークとサウスによる『簡単で分かりやすい妊娠と妊娠中の体調の変化~出産まで』なる講義を受けたノアは、軽いキャパオーバーで暫く意識を彼方へ飛ばしていた。
そしてその時の会話を、朝の忙しい時間帯に良い依頼を受けようと来ていた多くの冒険者や忙しなく仕事を熟す職員達がしっかり聞いていて、ギルド中が微妙な空気になっていたことをノアは知らない。
・・・・・・もちろんアークとサウスは気付いていたが。
---勘弁してくれ・・・・・・。
お互い思ったことはソレだった。
325
お気に入りに追加
7,352
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる