54 / 538
50 オーガスタの街
しおりを挟むあれから数日、のんびりと途中で遭遇した魔物を狩り、薬草採取もしながら目的地であるオーガスタの街の外壁に到着した。
こちらもエイダンと同じように冒険者用の門があるのでそちらに向かう。
時刻は昼過ぎ。依頼を受けた冒険者が戻るには早い時間の為か、列は無く空いていた。
門衛に冒険者ギルドタグを見せて街へと入る。
エイダンと同じように門衛達に驚かれたが、アークは慣れたモノで全く動じず、ノアは相変わらずの人見知りを発揮して、アークの陰でぴるぴるしていた。
門衛達が密かに『可愛い』と騒いでいるのには気付かなかったようだが。
可愛いノアを見せびらかしたい気持ちと見せたくない気持ちでモヤッとしているアークだった。
とりあえずは冒険者ギルドだな、と向かう。
オーガスタの街のギルドはすぐに分かった。
エイダンの街のギルドと大きさはさほど変わらないが、石造りで無骨なのだ。
無駄を削ぎ落とした要塞のような。
「---この建物、格好いいねえ」
「おう、ありがとよ!」
ギルドを見上げながらノアが思わずそう漏らせば、降って湧いた声にビックリして固まり、ぎぎぎ・・・と音が聞こえそうなくらいぎこちなく首を傾げるノア。
「誰だ、あんた」
威圧を飛ばしながらノアを胸元に抱き込むアークに気負うところもなく笑って言う男。
「あー悪い! 俺はこの街の冒険者ギルド長のスサンダという。Sランクのアルカンシエル殿とAランクのノア殿、であってるか?」
「---そうだが、何故・・・?」
アークが疑問を投げかけると耳元で小さく囁いた。
「見守り隊」
「---あー、了解」
「・・・? アーク、何」
「いや、信用出来るヤツだから安心していい」
そうアークに言われて、被っていたフードを外してギルマスに向き合う。
「アークがそう言うなら・・・初めまして、ノアです」
「おお、キチンと挨拶出来て偉いな。よろしくな、ノア」
そういってポンポンと頭を撫でられた。
速攻でアークに叩き落とされていたが。
「悪かったよ。そこまで(嫉妬)するんかい。さすが竜人だな」
ちっとも悪くなさそうな顔でカラカラ笑ったギルマスに促されてギルド内に足を踏み入れる。
人気は少ないがやっぱり目線が一気に集まって、ノアはスンッと無表情モードに入った。
アークはさり気なくフードを被せて受付の窓口に向かう。
「この街の薬草分布やポーション類の確認をしたい」
「---これ、ギルドタグ」
そういってアークと一緒にノアもタグを見せた。
薬師と冒険者の両方である。
それを確認した職員は、慌ててお待ち下さいと断って席を離れた。
ポーション類を持ってくるのだろう。
すでに経験済みな為、慌てずに待つ・・・が。
「・・・・・・何時までいるつもりだ?」
アークの低い声にもビビらず、ずっと背後で様子を窺っているギルマス。
「お前らの用が済むまで待つぜ。気にすんな」
「気にするわ! 気が散るわ!」
珍しくアークが噛み付いている。
なんだか面白くて、思わずクスッと笑ってしまった。
瞬間、二人がガバッとノアを凝視したので、びくうっと肩を揺らして固まった。
「---あ、悪い」
「ノア、大丈夫か? スマン」
「え、あ・・・うん、だ、いじょぶ・・・・・・デス」
ぴるぴるしながら思わずヘンな言葉遣いになるノアだった。
---可愛い。
420
お気に入りに追加
7,354
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる