迷い子の月下美人

エウラ

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47 義息子だもの

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次の朝、すっきり目覚めた二人は朝食をとってからテントを出た。

二人に気付いた精霊達がワラワラと集まってくる。
それを穏やかに眺めている精霊王。
もはや子供を見守る親のようである。
実際親のようではあったが。

《おはよう。よく眠れたようだな》
「おはよう御座います。お陰様で?」
「おはよう御座います。ノアがふらふらしなかったのでよく眠れたな」
「あ、ちょっと、アーク!」
《・・・ああ、精霊達がここに連れて来たくて毎晩押し寄せていたようだな。あの時はすまなかった》

そういって精霊王は苦笑した。

あれは精霊王の意を汲んだ他の精霊達が自発的に行っていたようだ。
精霊王としては、そのうち来てくれたら良いな、くらいだったそうだ。

今更急がなくても、10年も20年もさほど変わらないと・・・。

・・・うん。
精霊にとっては時間の流れってそういうものだよね。


《さて、他に何か聞きたい事などあるか? 我で答えられるものならば答えよう》

そう言うので、夕べと同じく腰掛けて話をする事にした。

「えっと、育ての親の爺さんがエイダンではなく、その先のあの街だったのは何故か聞いてる? ・・・今だから分かるけど、あそこは良い待遇では無かったんだよね。だけど爺さんはあそこに住み続けた」
「確かにそれは俺も思っていた。エイダンの方が大きいし生活環境はずっと良かった。ノアはあの街で辛い生活だったようだからな」

それがノアもアークも疑問だった。
あんな思いをしながら住むことは無かったのでは、と。

《---彼の考えは分からぬが、おそらくノアを隠したかったのでは無いかと思う。ラグナロクは知る人が見れば大賢者と分かるし、ノアも綺麗な赤子だったからな。大きな街よりは小さな街で引き籠もっている方が目立ちにくい》

「『木を隠すなら森の中』という言葉があるが、逆にお爺さん達では大勢の中の一人にはなれないか。・・・確かに目立つな、爺さんと赤子の組み合わせは」

・・・うん、考えてみたら確かに爺さんが赤ん坊を連れていたら訳ありって思うよな?
自分だったら何にも疑問に思わなかった事がここに来て浮き彫りになった感じだ。

さすがア-ク、頼れる旦那様スパダリ

《小さな街で偏屈で通して引き籠もっていた方が他人も近寄りにくい。偏屈で変わり者だからたまにしか見かけなくても誰も気にしない。そうやって極力他人との接触を減らしたのじゃ無いかな?》

「じゃあ薬師ギルドに登録しなかったのも・・・」

《おそらくラグナロクの腕では規格外過ぎてそこから身元が割れるのを恐れたのだろう。彼は薬師と錬金術師の最高峰の腕前だった。魔法も、大賢者と言われるくらいだ。凄まじかろう。それをノアの為に封印したのだろう》

---俺の為に・・・?

「---俺、物心つく前から爺さんのやることを真似て憶えて・・・植物も爺さんが大切に育てていて、だから大好きだった」
《そうだな。魔力と植物との親和性が高いのは我の影響もあるが、その気持ちはラグナロクの影響が大きいだろう。---彼を大好きだったのだろう?》

精霊王に言われて、改めて自覚した。

そうだ、俺、爺さんが大好きだった。
顰めっ面でシワが寄った顔も、楽しそうに、嬉しそうに笑ったシワも、悪態をつく声も、優しく諭してくれる声も・・・・・・皆・・・・・・。

「---うん。大好きだった。・・・・・・だから死んだとき、凄く哀しくて、辛くて・・・・・・」

でも爺さんが言った言葉を思い出して・・・。

『ノア、いつかお前にもワシより大切なものが出来る。だから辛くても生きるんじゃよ。きっと、お前を愛する者に出逢えるから、その時は迷わずその人の手を取りなさい』


爺さん、俺、迷わず愛する人アークの手を取ったよ。
ありがとう・・・。

「・・・ノア」
「---アーク、俺の最愛。爺さんの最後の言葉・・・俺を愛する人の手を取れって・・・だから今、生きてる。・・・・・・幸せだって」

アークは黙ってノアを抱き寄せた。
いつの間にか涙が溢れていた。

「精霊王・・・・・・俺は、爺さんと貴方の義息子で良かった。助けてくれて、生かしてくれて本当にありがとう」

《その言葉で我らも救われる。幸せにおなり。愛し子ノア


ノアの涙腺は決壊して止まらなくなり、暫くアークの胸を濡らしたのだった・・・。






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