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35 おっ買いっ物!(sideアルカンシエル)
しおりを挟む薬師ギルドをあとにして、市場へ買い物に向かう。
ノアが一番楽しみにしていたモノだ。
見るからに浮かれているのが分かる。
本人曰く無愛想な顔は他のヤツらから見れば儚げ美人で、どんなに俺が牽制しても番の証を示しても、ノアに向けられる視線は消えない。減らない。
さすがに今のところ声をかける勇者はいないが、鬱陶しい。
そんな俺の気も知らずに興味のあるモノに惹かれてアッチヘふらふらソッチへふらふら・・・。
頼むから手を繋いでくれ!
何度か声をかけて抱きしめたところでようやく気付いたらしいノアが恥ずかしがっている。
可愛い。
だが俺のためにも手を繋いで歩いてくれ。
暴走する気しかない。
---俺が。
周りのヤツらはキチンと裏を読み取ったが、ノアは自分が何かやらかす方の意味で受け取ったようだ。
ノアらしい。
周りのヤツらを疑いもせずによく今まで生きてこられたものだ。
自分へ向けられる感情にもの凄く疎いのは育った環境故か、それとも生まれ持った性質か・・・。
まあ、実力はまだまだ未知数だが、今の時点でノアに勝てるようなヤツはほとんどいないだろうから、そのお陰かもな。
お爺さんの無茶ぶりが功を奏したってとこか。
偶然か?
---いや、きっとわざとだろうな。
自分の寿命を感じて鍛えたのだろう。
最後の置き土産ってか?
・・・本当に血の繋がらない、ノアを拾っただけの関係なんだろうか。
本当に謎だらけだな。
ともかくノアが余所見をしないように見張ってないとな。
そうしてやって来た薬草屋で、ノアはあっという間に店主に気に入られて。
稀少な薬草を手に入れられてほくほく顔だった。
可愛いが過ぎる!
ノアと出逢ってから、俺、可愛いしか言ってない気がするが、気にしない。
可愛いモンは可愛いんだよ!!
「お前さん達、次はどこの店に行くつもりなんだい? 場合によっちゃ紹介状を書けるから言ってみな」
不意に店主が言った。
ノアは少し考えてから。
「錬金術に使うモノを置いてるところってご存知ありませんか?」
「---お前さん、まさか錬金術を・・・?」
「はい。薬師ですが錬金術師でもあります。自称ですけど。あ、冒険者もですけどタグ見ます?」
そういって冒険者ギルドのタグも見せた。
「---こりゃ、また・・・しかもAランクとは・・・」
店主はタグを見て驚いていた。
「錬金術の素材も調薬の薬草も自分で手に入れるしかなくって・・・」
そもそも錬金術師のギルドすら王都に一つあるだけだからな。
その希少性は推して知るべし。
錬金術師も数人居れば良いものだし、地方には情報も回らないから、ノアも錬金術師ギルドの存在は知らないのだろう。
そもそも登録は強制でもないし許可制でもないからな。
登録してタグを持ってるヤツだけが錬金術を使える訳じゃ無い。
単に公式に認められたというだけ。
名が知られて仕事がしやすいとか名誉の為だったり。
錬金術師でもあったお爺さんは知ってて登録をしなかったんだろうか。
育ての親であるお爺さんがあえて知らせなかった可能性は高い。
登録をしていたらノアの事だ。
良いように騙されて死ぬまで搾取されただろう。
「・・・・・・お前さん、苦労してるんだなあ。ああ、でも今は番いの旦那が居るから安心だな」
店主がアークを見てニカッと笑った。
「ああ、自慢じゃないが俺は強いぜ。なんせSランクだからな」
「Sランク?! おおおい、お前さんのもタグを見せんか!」
店主がグイグイきてちょっとビビった。
タグを見せるとブルブルしながらガッツリ見ていた。
「うおお、コレがSランクの・・・・・・オリハルコンではないか! マイスターといいSランクといい、今日はなんて幸せな日じゃ!」
・・・・・・店主。
ノアよりも興奮凄えな。
ぶっ倒れるなよ?
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